初めての日 |
「いいから、本当に」
布団の中でサーシャが言う。
朝起きて真っ先に感じたのは、体が妙に重いと言う事だった。そして、足元もふらつく。完全に熱をだしていた。
「ですが、栄養を取らないといけませんし、薬飲むのにも、まずは飲まないと」
「〜〜〜〜〜〜……」
言い返す言葉が見当たらず、サーシャが黙り込む。
薬の材料などは、エリオスが、見つけてきた。のだが、問題はその前にするべき食事という作業だった。なにせ、今まで家事はサーシャがやってきたのだから。
不安そうに、サーシャがエリオスを見る。
「大丈夫ですよ。ここに、作り方のメモがあるんですから」
(メモ通りに作れば美味しいって訳じゃないんだよ!)
心の中でエリオスに突っ込む。と言うよりも、突っ込めるほどの力は残っていなかったと言った方が正しかった。
「だから、安心して寝ていてください」
そう言って、エリオスがサーシャに布団をかける。
そして、数歩の足音の後、聞こえてきたのは、ガッシャンと何かが落ちた大きな音だった。
そして、しばらくして、またガッシャンと音が聞こえる。
(……本当に大丈夫か?あいつ……)
そう思ってはいたが、、何時の間にかサーシャは眠ってしまった。
「…………さん。……シャさん」
「ん……」
誰かが呼ぶ声に、サーシャの目も段々覚める。呼んでいたのは、エリオスだった。
「はい、御飯が出来ましたよ」
そう言って、エリオスがスプーンを口元に運ぶ。
半分頭が眠った状態のまま、サーシャが口をあける。そして、料理の温かさが口の中に広がった瞬間に、完全に目が醒めた。
(……って、あれ?)
「…………美味しい」
初めて作った。とは思えないほど、エリオスの料理は美味しかった。
「よかった」
そう言って、エリオスが微笑む。
と、サーシャが台所の方をふと見ると、今朝は何も無かった所に大量のゴミが、置いてあった。
「な、なんだ、あのゴミは!!」
さすがに、驚いて、サーシャは、上体を起こす。
「あ、あれですか」
バツの悪そうに、エリオスは頬を掻く。
「失敗した料理ですよ」
「全く……、もったいないだろ」
そう言いながら、エリオスが持ってきた料理を戴く。
「でも、貴女に美味しい物を食べてもらいたかったですから」
言われなれない様な優しい言葉がサーシャの中を浸透していく。
「大丈夫ですか?顔が赤いですよ」
「うるさい!!」
そう言って、バツが悪そうにエリオスの手料理をサーシャは味わった。
食べ終わる事には、すでに、熱は完全に下がっていたのだが、何故か頬の熱だけは引かなかった。
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