「ねえ〜」
　お風呂場から声が聞こえる。何の用事なのだろうと思いながら、エリオスはお風呂場に近づいた。
　お風呂場の入り口。なぜか、サーシャはお風呂場の扉から首だけ出して、こちらを見ていた。
「どうしたんです？」
　何の用事か分からずに、エリオスが尋ねる。
「あのさぁ……。悪いけど、バスタオル取ってくれない……？」
　恥ずかしそうに、なのか、お風呂上りなのか、判断つきにくいが、顔を赤らめながら、そう言った。湯気の立った体と、しっとりと、髪の毛が体についているので、湯上りなのだとは分かる。
　どうも、お風呂からはいる時にタオルを忘れたらしかった。が。不思議そうな顔をエリオスは見せた。
「自分で取れませんか？」
　そう言いながらも、エリオスはタオルを手に取り、渡す。ドアから手だけをだして、サーシャは受け取った。
「は、恥ずかしいだろ」
　そう言って、サーシャは音を立てて、風呂場の扉を思いっきり閉じた。
　扉越しに、タオルで頭を拭いている音が聞こえる。
「夜とか、裸になるじゃないですか……」
「ばか！」
　そう言いかけたエリオスの頭目掛け、サーシャは思いっきり風呂桶を投げつけた。　

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