瞳に映る空


 立っているだけで、汗が勝手に吹き出てくる。夏の熱さ。ボクは帽子を取って袖で汗を拭いた。背中にも汗、そして、グラブの中も、うっすらと汗をかいていた。
 夏の熱気、そして、甲子園ってグランドの周りを埋め尽くされた黄色いメガホンの花。
 試合開始を待ち焦がれる周りの目を一心に受けて、ぼくは立っていた。
「はい、がんばってね」
 そう言って、手渡された真っ白なボール。キャッチボールで慣れ親しんだその球が、ボクの手に、ずっしりとした重みを与えてくれる。バッターボックスには今日の対戦チームの先頭打者。名前は……え〜……忘れた。
 そして、目の前には………………いつもこのボールを取ってくれた、親父が座っていた。
 空を見上げると。澄み渡るような青い蒼い空。どこまでも雲が流れ、太陽が照らしつづけるような、そんな広い空。目を閉じても、その光景が、離れてくれない。
 高鳴る心臓、そして、自然に力が篭る腕。
 そして、親父を見ると、ミットはど真ん中に構えられていた。黄色いメガホンの花畑、突き抜けるような夏の蒼い空に見守ってくれる。
 ぼくは、土を巻き上げ、蹴り上げて、第1球を投げ込んだ!!


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