その子の名


「可愛いですね」
「そうか?」
 信じられない。と言った感じで、サーシャはエリオスを見つめる。
 そう言ったエリオスの目線はサーシャではなく、サーシャの腕に抱かれたそれに、向けられていた。
「ええ。貴女と僕の子ですから」
 臆面もなく、エリオスが言ってみせる。
(こういう奴だよ。恥ずかしげもなくスッて言えるんだからな。まったく)
 普通なら、恥ずかしくて、一瞬ためらいそうな言葉も、エリオスは言ってみせる。考えたままの言葉が出るのは、エリオスの美点であった。ただ、それが、いいのか悪いのかと聞かれれば、困るのだが。
「まあ、お前そっくりなら、素直な子になるだろうな」
 そう言って、サーシャも我が子を見つめる。
「貴女そっくりなら、どうなのです?」
「決まってるさ、とんでもないはねっかえりだろ」
 そう言って、サーシャは笑った。が。
「貴女そっくりでも、素直ないい子だと思いますよ」
(おいおい)
 と、心の中で反論したい気分だったが止めた。言いくるめられるのが、目に見えていたからだ。それも、納得出来る言葉で。
「まあ、いいさ。それより名前どうしようか」
 そう言って、サーシャはエリオスを見つめた。エリオスのほうは、その言葉を聞いて、考え込んでいる。
「そうですね。じゃあその子の名前は………………」



■□ 100のお題-TOP □■