見えそで見えない |
「……ソール様、本当に選ぶんですか?」
「当然だ。全く」
そう言って、ソールは息をつく。
と言うのも、無理は無かった。彼女は風の宝玉の番人。そのため、かなりしっかりしている部分はある。
が、今回はそれが逆に禍した。
と言うのも、旅の旅銀を浮かせるために、極力無駄遣いしないようにしていた。食料も水も必要最低限。だが、服まで必要最低限にしてしまい、彼女の一張羅とも呼べる服が破れてしまったのだ。
成長期である彼女の事を考えれば、破れたのも仕方ないのだが。
「あぅ……」
服屋の中を彼女が幾つか物色して、試着室に入る。
「どうですか?」
そう言って先ほどから服を見せるたびに、ソールは顔をそむけた。
まあ、首周りがあってなく、胸元が見えそうな服とか、今度は丈が短く太ももがかなり露出している服を見せられたら、そういう反応するもの、無理は無いが。
そうこうしているうちに、彼女が最初に選んだ服は全て試着し終えてしまった。
「……で、どれにするか、決めたか」
「えっと……はい」
そう言って、彼女が差し出したのは、最初から彼女が着ていた服だった。
「あの、これを新しく作り直して欲しいのですが、よろしいですか?」
「変な奴だな。せっかくなんだから、新しい服を買えばよかったのに」
新しく作り直された、前と同じ服を見てソールが呟く。
「ですが、この服は今まで一緒に旅してきましたから」
そう言って、彼女は嬉しそうに微笑む。前みたいに、窮屈な感じは無く、かなり動きやすそうだった。
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