土砂降り雨雨


「きゃあああああ」
 突然の夕立。大きな雨粒に、打ち付けるような雫が体をぬらす。
 と、その雨が少し弱くなった。いや、雨脚が弱くなった訳じゃない。その証拠に、少し先の方の地面には大粒の雨が水溜りに刎ねていた。
 上を見上げる。と、そこには、見慣れた服。そのまま視線を追っていくと。
「ソール様!」
 ソールはそのまま服を彼女の頭にかぶせると、彼女を軽く抱きしめた。
「あ、あの……」
 これがソール(兄)の挨拶だと分かってはいるが、どうしても彼女には慣れられたものではなかった。頬を赤くさせて、困惑している。
 そんな彼女を落ち着かせるように、ソールは肩に手を置くと、指で文字を書き始めた。
『これで、雨をしのいでください』
「で、でも。それじゃあ、ソール様が!」
 そう言った目の前には、ソールの姿は無かった。。

「はふ〜」
 何とか見つけた旅の宿。その部屋の中で彼女は一人息をついた。
 さっきまで雨に濡れていた体は、今は湯上りの暖かい湯気に包まれている。
「すみません、ソール様……」
「気にするな」
 そう、言ったのは、先ほどと同じ青年。だが、先ほどとは違う。先ほどのが兄なら、こちらは弟だからだ。
「ですが……、ソール様を守る番人なのに、ソール様に迷惑をかけてしまって……」
「お前が雨に濡れて、倒れる方が迷惑だ」
 そう言って、彼女の額をソールは軽く突付いた。


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