メビウスゲーム


 一番最初は、何だったのか、分からない。ただ、たわいも無い物だったと思う。
 玩具か何か買ってもらい、俺はサーシャに見せびらかしに行った。そのとき返ってきたのは素っ気無い「別に」という言葉だった。
 そのときは、ただ悔しくて、むかついて。衝動的に、サーシャの耳元で呟いてしまった。「おまえは妾の子だぞ」と。
 妾の意味も分からず、大人たちが言ってた言葉を言っただけに過ぎなかったのに。
 その後飛んできたのは、痛いほどの平手打ちだった。


 それから何年経っただろう。気が付いた時には、自分に腹が立った。
 『サーシャが好き』だなんて。
 たまにしか俺を見てくれない大人たち。魔術の腕でしか、俺を判断しない魔術師達。そんな周りよりも、自分を見てくれる真っ直ぐな目に俺は惹かれていった。
 サーシャに俺を見てもらいたくて、見つめてもらいたくて…………。
 どうすれば、サーシャは俺を見てくれる?ずっと抜け出せないメビウスの輪の中に、俺の心は………………。



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