「これからよろしくお願いします」
マルチェロからの数々の贈り物も換金していたらしいククールが
告白を受け入れたのは真夜中にも近い時間帯。
ククールは落ち着かなさそうに視線を彷徨わせている。
彼にとっては初めての恋人なのだ。緊張しているのだろう。
「えっと…デートに行く?」
この世界での深夜のデートは決して珍しい事でも憚れる事でもない。
だが年若いククールは口ではそう言いながらも少し眠そうに目を擦る。
やはりまだ子供なのだろう。マルチェロは思わずくすりと笑う。
「無理はしなくていい」
軽く頭を撫でてやると目を細めてはい、と答える。
それから
「…明日デートしてくれる?」

明日。

その前にマルチェロには天寿判定の時間が訪れる。
だが目の前の恋人はまだ荘のシステムを理解してないようだ。

教えるべきなのだろうか。自分は明日生きていられるかも分からぬのだと。
だが…

言えず、頭から離した手を宙に彷徨わせると
ククールはその手をぎゅっと握った。
自分よりも暖かく、そして少し小さな手

「おやすみなさい」

ククールは嬉しそうに微笑み、部屋へと戻っていった。



そうして運命の時が訪れる。




――閉じられた瞳が再び開かれることはなく。

何も知らない恋人はまだ眠りの中。




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