出会って間もない人だけど、一生傍にいたいと思った。
告白に対して少し驚いた顔をした後に頷いてくれたククール
デートに誘えばゆっくりと立ち上がり僕の横に来てくれた。

楽しそうな表情も時折見せてくれるのだけど
多くを話してくれずその瞳はどこか遠くを見ているようで。
そんな不安に揺れる僕に気付くと、笑ってみせる。
だけどその笑い方すらどこか痛々しい。…どうして?
その足元がぐらり、と揺れる。
咄嗟にエイトが支えると申し訳なさそうに瞳を伏せた。
その顔色はよくない。元より白い肌が更に血の気を失っているように見えた。
「ククール…大丈夫?」
恋人になれたのが嬉しくて連日連れまわしてしまったから疲れたのかもしれない。
見ていてあまり身体が丈夫ではないと分かったから、
これでも負担にならないよう場所もペースも選んで行動していたのだけど。
「休もうか」


近くの宿を取り、ククールを寝台に寝かせる。
後はゆっくり休んで、欲しいものがあったら持ってくるからと告げて
眠りの邪魔にならぬよう傍を離れようとすると上着を掴まれる。
「ククール?」
「今、しよう」
「え?」
「だから、エイトと…したい」
視線をあわさずにはいたが、その口からはっきりと告げられた言葉。
宿屋で、寝台の上で恋人達がする事なんてひとつしかない。
「…いいの?だってククール調子悪いんじゃ…」
そんな事をすれば余計に疲労させるのは分かっている。

「もう、この世界にいられる時間がない…」
蚊の鳴くような、独り言に近い小さな声
それはエイトの耳には届かなかった。
「ごめん、よく聞こえなくて」
「何でもない。お願いだから…駄目か?」

駄目、なんて言う筈がない。
好きな人と愛を深める。それは僕だって望んでいたことだから。

それまであまり反応を返してくれなかった君が
僕の腕を掴んだり名前を呼んでくれるのが涙が出る程嬉しくて。
精一杯の自制心を働かせて、辛くないよう優しく抱いた。


「ごめん…」

「…ククール?どうして謝るの?」


その言葉の意味を知るのは明け方の事――。





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