「マルチェロさんっ!」
自分よりも小さな恋人は両手ひろげてマルチェロの腕の中へと飛び込んでくる。
「やっとお仕事終わった。はやく会いたかったよ」

二人の間には結構な身長差があるが
こうして椅子に腰掛けて膝の上に乗せてしまえば
互いに見つめあえるから。
どっちが攻でどっちが受だか分からなくなるが
そんなことはどうだっていい。

「大好き!」
嬉しそうに笑って抱きついてくる。
「マルチェロさんも僕のこと好き?」
「ああ、大好きだよ」
好きとかいった言葉を口にするのは得意ではないのだが
彼の前では何の躊躇いもなく言えてしまうのは
「よかった!」
そうして嬉しそうに笑う彼が何よりも愛しいからだ。
「…あのね、キスってしてもいい?」
「えっ?」
「あっ、嫌ならいいんだ。…友達がね、好きな人とするものだよって言ってたんだ。
 僕はマルチェロさんのこと大好きだからキスしたいなぁって思って…」
少し恥ずかしそうに俯くエイトを見てマルチェロは思わず目を細めた。
「構わないぞ」
「本当!」
途端にいつもの、一番大好きな可愛らしい笑顔
「ええっと、じゃあ目を瞑って?」
言われるままにマルチェロは目を瞑る。

気配が近づき、ほんの一瞬、触れるだけのキス
キスをする、と言われていなければそうとも気付かないであろう程の一瞬の感触。

それでも目をあけると膝の上の恋人は真っ赤になっていた。
「…嫌じゃなかった?」
「当たり前だろう」
それを聞くと良かったぁと呟き寄りかかってくる。

「…明日もしていい?」

小さな声での問いに一秒と待たせず頷いたのは当然のこと。



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