恋人であるゼシカ(ちなみに俺が受)の故郷、リーザス村に向かう。
今日は正妻愛人含めての4人でデート。ダブルデートじゃない。
皆、一人に対する妻或いは恋人(愛人?)だからだ。
傍から聞けば正気かと疑われそうな話だろうな。
更に俺には信じられない事実があって…。
「ククール?」
俺の顔を横から覗き込んでくるのは見覚えある顔。
新しい恋人が出来てしまったとは聞いていたがまさかこいつだとは。
「君と会うのも久しぶりだね」
「ああ。こんな形で会うとはな…」
こいつとは以前に付き合っていたことがある。
その頃の俺には伴侶がいて、結局長続きせずお互いの幸せを願い別れた。
それが数年経過した今、こうして俺と同じ人と付き合うとは…世界は意外に狭い。

「二人とも遅いでがすよ。リーザスはもう少しだから頑張るでげす」
恋人の妻であるヤンガスが少し遅れはじめた俺達を心配して声をかけてきた。
恋敵であるはずの俺達をあっさり受け入れるあたり凄いと思う。
それとも正妻の余裕ってヤツ?

俺はいわゆる愛人にあたるわけで、どろどろの修羅場なんかも
覚悟の上での付き合いだったんだがそんな事はなく。
ゼシカもヤンガスに対して申し訳ないとは思っているようだが
少なくとも俺にはそういった素振りは見せない。
…負担に思わないよう気ぃ遣ってくれてんのか、あれが天然なのか。

リーザス村では幾人かと会話をした後、川のほとりでお弁当を広げる。
ヤンガスが早起きして作ったというサンドイッチは
多少不揃いではあるもののたくさんの量と種類で目移りしてしまう。
「これヤンガスが一人で?」
エイトが驚いたように問う。
「アニキ達の口にあうといいでがすが…」
「私も手伝ったのよ。…出来たのを容器につめるのをね」
「それは手伝った内に入るのか…?」
ククールのツッコミは無視してゼシカは意気揚々と皆に取り皿を配る。


「ククールはこれ、好きだったよね」
エイトがチーズとハムのはさまれたサンドイッチを指差す。
「あ、ああ…」
「はい。どうぞ」
その答えを聞いてからひとつをククールの取り皿に置く。
(「覚えてたんだ」)
たった1度だったデートの時にサンドイッチ作っていって
その時に俺からそう話したんだっけ。
恋人だった頃はいいけど、今そういう事されるとマズくないか?
今の俺の恋人はゼシカで、エイトの恋人もゼシカで…
ああややこしい。
ちらりとゼシカの方を盗み見ると
…全然気にしていないらしい。そうだった。
こういう子だから俺も特に気負わずここまで付き合いが続いたんだ。



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