外は朝から雨が続いている。
今日は子供達もアスカンタへと出かけた為、今家にはククール一人だ。
この時間帯の古臭いサスペンスを見る気にもなれず、
ペットがどこからか拾ってきた家庭画報に目を通していた。
なんとなく目を通しているだけでその内容は殆ど頭には残っていない。

郵便受けの音が鳴り、ククールは手元の本を閉じて玄関へと向かう。

雨でしけった住民ニュースを開くと
新たな恋人誕生やご懐妊報告が目に飛び込んでくる。
「今日もおめでた報告相次いでるなぁ…」

愛を囁きあう夫婦や
愛人含めて仲むつまじい様子を見ていると
羨ましくないとは言えない。
「俺にもそういう時期はあったんだけどな…」

思い出すのは約10年間の結婚生活の時間

別れを切り出したのは自分だ。
幾度か不倫した自分を許してくれた夫と
可愛い子供にも恵まれ不満なんて何もなかった。

ただ恐かった。

何だって許してくれるから
本当に自分は愛されているのか、なんて
一度でも思えばその不安を消せなかった。
結婚後も妊娠の合間をぬって頻繁にデートを重ねたし
彼が一度も他の人へのアプローチの気配を見せなかった事を思えば
持つ筈のない不安であったのに。
その優しさと自分への愛情から許してくれていたのに。
口に出して確かめればよかった。
そんな簡単な事が出来なくて何も言わずに逃げた。

「若かったよなー…俺」

住民ニュースを閉じていつもの場所に仕舞う。
今の子供達との生活に不満があるわけではないのだけど
新しい恋に走ることは止められない。
いつかまた、あの頃のような時間を持つことができるのだろうか。
そんな夢を今日も思い描いている。




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