ジューンブライド、6月の花嫁。
よく晴れた空の下で二人の結婚式は執り行われた。
お偉い方や弟(達)からの絶えることない祝福
全てが終わり皆が帰る(というか強引に帰した)頃には
太陽は既に姿を消し、かわりに少し欠けた月が空の真ん中で輝いていた。

「マルチェロさん、今日はお疲れ様でした」
夫となった彼、エイトは恋人時代とかわらぬ呼び方でマルチェロを呼ぶ。
夫婦となったのだから呼び捨てや「お前」でも構わぬのに…。
そう思いつつも口には出せないマルチェロであった。
「心配には及ばん。エイト殿こそ慣れぬ式で疲れたのではないか?」
「僕だったら大丈夫ですよ。式典には慣れてますから」
「そ、そうか。大丈夫なのだな」
大丈夫らしい。
ならば大丈夫なのだろう。
そう今日は新婚初夜。
夫婦となった二人が一線を越える夜
バスルームで爪の間から毛根の中までしっかり洗って
体の準備万端オールOK☆
心の方は…正直まだ準備ができていないが
ここは漢らしく、いや、妻らしく夫に全てを委ねようではないか。

「そろそろ寝ましょうか」
「おっ、おおおそうだなな」

まずはエイトが真っ白なシーツに包まれたダブルベッドの中へ。
続いて心音バクバクのマルチェロも中へ。

―さあ、いつでも来るといい。覚悟はできている。

……。

…………。

エイト殿?


「って、本気で寝るつもりか!?」
全く動く様子を見せないエイトに焦れたマルチェロ思わずツッコミ
「マルチェロさん疲れてるでしょう。あんまり顔色よくないし
 お風呂からなかなか出てこなかったし…」
顔色がよくないのは緊張のせいで、長風呂であったのは
すみずみまで丹念に洗っていたからなのだが。
「この先、時間はたっぷりあるんですから
 今日はゆっくり休みましょう。ね?」
なんと優しいことだエイト殿…!
そんな風に言われてはそれ以上は何も言えないな。
確かに時間はある。その通りだ。
「おやすみなさい。マルチェロさん」
「お、おやすみなさいだ。エイト殿」



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