彼…いや、今は旦那様となったパヴァンOHに連れて行って貰ったのは仮面舞踏会。
こんな場所、俺は初めてで周囲を物珍しげに見渡すばかり。
そんな間に彼は参加の手続きとやらを済ませてくれている。
普段は俺が引っ張ってやんないとな、って思わせるくらい
細かい事で悩んで悩んで日が暮れるんじゃないかって程なのに
こういう、俺の知らない場所ではしっかりとしてるんだ。

それとも、以前に誰かと来たことがあるとか…?

彼だって俺の前に何人も付き合っていた人がいたんだ。おかしくはない。
おかしくはないんだ。
……。
あー情けないね。嫉妬してるんだ俺は。
俺だって彼が初めての恋人ってわけじゃない。それなのに勝手だよな。
俺には失恋を繰り返していた中で一人だけ答えてくれた人がいた。
その人には既に結婚直前まで進んでいる恋人がいたのにさ。
それなのに半ば強引な俺の告白に答えてくれた。
だけどお互いわだかまりを抱えたままではやっぱり上手く行かなくて。
たった一度だけのデート。その後は喧嘩ばかりですぐにお別れ。
そんな俺のやりきれなさに気付いていたのか
今の夫である彼は俺をいろんな所へ連れて行ってくれた。
王様だから仕事も大変だろうに、結婚した今も
こうしていろんな場所へ連れて行ってくれるんだ。
だから俺にとっては殆ど、彼がはじめての人なんだ…。

ああ、彼が呼んでる。
仮面持ってるけどあれを身につけるのかな。
ダンスなんてずっと昔に習ったきりなんだけど、大丈夫かな?
…失敗しても、彼ならきっと気にせず許してくれるか。
さ、行こうっと。



戻る