その晩、俺は自分の胸の辺りが苦しくなり目が覚めた・・・ そこには俺の顔の両サイドに両手を付き、じぃっと俺を見つめる辰巳様の顔があった・・・ 「・・・ん?なんだ・・?辰巳様」 俺は眠気が取れず、ボォッとした頭で辰巳様に尋ねる 辰巳様の表情はいつもに増して真剣な瞳・・・しかしどこか悲しげで・・・ 何かあったのか?と思い起き上がろうとするが、辰巳様が俺の体の上に馬乗りの様に乗っかっている為に起き上がることは難しい 「???どうした?トイレか?トイレに行きたいのか??」 そこまで尋ねると辰巳様はか細い声でようやく口を開く・・・ 「・・・・羅苑、僕・・・羅苑にお願いがあるんだ・・・」 「お願い・・・?・・・んだぁ?」 別にこんな夜中じゃなくても・・・と付け足そうとした瞬間、辰巳様の瞳がウルウルと光りだす 「ど、どどどど、どうした!!何かあったのか?!辰巳様!!」 辰巳様に泣かれちゃ俺が後で佳嗣にどやされる!! そう思った俺は、起き上がれなかった体を無理に起き上がらせる! 辰巳様はたったの七歳 七歳の少年がこんな真夜中に涙を溜めながら俺にしがみ付いてくる 「どうしたんだ?辰巳様!恐い夢でも見たのか!!」 小さな辰巳様を抱きかかえながら必死に俺は辰巳様を慰める その間も辰巳様は「違うの」と首を横に振る しばらくして何かを決意したように辰巳様は、七歳とは思えないほどに大人びた表情をし、真剣な瞳で俺に頼み込む 「羅苑!僕を大人にしてっ!!」 プロポーズ 辰巳ver 今日、僕は、僕の大好きな大好きな佳嗣に思い切って僕の素直な気持ちを告白した・・・ *** 洗濯物を取り込み、居間でお洋服を畳んでいる佳嗣 「佳嗣、僕もお手伝いするよ♪」 「おや、辰巳様。それはあり難いですね」 「だって、佳嗣一人じゃ大変でしょ?一人より二人の方が効率いいもん」 そう言って僕は洗濯物の山に手を伸ばす 「辰巳様は本当に優しい方ですねぇ・・・」 「そ、そんなことないよっ!た、ただ佳嗣が大変そうだと思って・・・」 僕は佳嗣に誉められた事が嬉しくて顔が真っ赤になった 佳嗣は優しい 佳嗣は強い 僕は佳嗣に比べて全然幼くて、僕が佳嗣の為に何かをしてあげれる事なんて数が知れてて・・・ でも僕は・・・僕は早く佳嗣を守れるくらい強くなりたいのに・・・・ 「さて、辰巳様、ありがとうございます。おかげで助かりました」 僕が考え事をしている内に、佳嗣はあんなに沢山あった洗濯物の山を綺麗に片付け、各々の持ち主に配るため、居間を後にしようとしていた 僕なんて、タオルを五枚しか畳んでないのに・・・ 僕は佳嗣の背中を見つめる・・ 本当に僕は『子供』で、佳嗣は立派な『大人』なんだと思う 僕は全然佳嗣に追いつけない・・・早く大人になりたい・・・早く、早く * * 夜、何気なく佳嗣に言った・・・ 「佳嗣!僕と結婚して!」 「・・・ハイ?」 「だから、佳嗣!僕と結婚してっ!僕、佳嗣が大好きなの!お願い佳嗣!!」 僕は僕なりに真剣に真剣に僕の本当の気持ちを打ち明けた・・・ 佳嗣は呆れてて、「はぁ〜〜〜〜」とため息を付いていた 「全く、何を言い出すのか思えば・・・辰巳様、申し上げますが私も辰巳様も男同士、結婚なんて出来ませんよ!それに、私はお子様に手を出す気はありませんよ」 佳嗣は事実を突きつける でも、僕はそれでも食いかかる 「佳嗣、僕本気だよっ!本当に佳嗣が大好きなんだよ!!真剣なんだよ!!」 佳嗣の服にしがみ付き訴える・・・ 佳嗣はそんな僕に深い深いため息を付き、こう言った・・・ 「辰巳様、ではこうしましょう?辰巳様が大人になって、私よりも強くなって、それでも私への想いが変らないのであれば、もう一度その言葉を告白してください」 「大人・・・?」 「ええ。但し、私よりも強く、そして逞しくならなといけませんよ?それでもその気持ちが変らないのなら、私も辰巳様への返事を真剣に考えましょう」 佳嗣はしゃがみ込み、僕の頭を撫でながら言い聞かす 佳嗣を超えるなんて至難の業なんだ でも僕は必ず佳嗣を超えてやるんだ!! でも・・・目が熱くなる・・・ 鼻がツゥン・・・とする 多分、今の僕は佳嗣にとって恋愛の対象にも見られないことがとっても悲しんだ・・・ でも、泣いちゃいけない・・・ 泣いちゃったら佳嗣が困っちゃう 泣いちゃったら僕が幼いんだって、自覚しなくちゃいけない・・・ チャンスが無いわけじゃない・・・ 時間はあるんだ 佳嗣は、僕にチャンスをくれたんだ・・・ 僕ハ笑ウ 佳嗣ニ向カッテ 僕ハ言ウ 佳嗣ニ向カッテ 「・・・分かった!僕、絶対に強くなって見せる!!僕の本気だっていう気持ち、絶対に佳嗣に認めてもらうからね!!」 「ええ」 「絶対だからね!その時になって『そんなこと、言いましたっけ?』とかいうの無しだからね!」 「ええ、わかりました。私も楽しみにしていますよ、辰巳様」 「ようし!早速修行だっ!!」 佳嗣を背に走り去ろうとする僕 佳嗣は言う 「辰巳様、修行は明日からになさってください。もう夜ですから御近所の方に迷惑がかかりますよ」 「そ、そうだね。あ・・明日からやるよ!僕!!」 振り返れない・・・ 佳嗣が見れない・・・ 今、佳嗣を見たら・・・僕は・・・ 「・・・ん、んじゃ、僕、明日の為にもう寝るね!!お休み!佳嗣!!」 僕は走り去る・・ 振り返らずに走る・・・ 振り返らずに部屋に駆け込む・・・ 溢レ出ソウナ気持チト涙ヲ、誰ニモ見ラレナイヨウニ・・・ *** ** 俺は俺の腕の中で眠る小さな少年を見てため息を付く 「羅苑!僕を大人にしてっ!!」 どうして急に辰巳様がこんなことを言い出したのかは直ぐに検討がついた・・・ 頭を撫でてやると、辰巳様は何かが切れたように泣き始めた 一人で眠ることが出来なかったのだろう・・・ 子供ながらに真剣だったのだろう・・・ この幼い少年が心に小さな傷を作ってしまった事の元々の原因を作ってしまった俺自身に対して、小さな罪悪感が生まれた 俺は声をかける・・・ 先ほどから傍にいる姿無き二つの気配に・・・ 「いるんだろ?心配なら出て来いよ、二人とも」 同時に二人の青年が姿を現す はじめに口を開いたのは金髪に眼鏡の青年・架愁 「あれぇ?バレチャッタ?」 「お前なぁ・・・」 「辰巳様寝ちゃったんだ・・・」 「おう、泣きつかれてグッスリだ」 そういうと俺と架愁はもう一人の青年・佳嗣に視線を送る 佳嗣は困ったような苦笑いをしている そんな佳嗣に俺はあえて言う 「佳嗣、辰巳様を部屋まで運んでくれ・・・俺はもう腕が限界だ・・・」 「はははv羅苑あんまりさしで子守しないもんね♪まだまだだね〜」 「お前はガキと一緒になって遊んでるだけだろ・・・」 「僕はいいのっ☆」 架愁とそんな会話をしていると急に腕が軽くなった・・ 佳嗣が辰巳様を抱き上げて部屋を出て行こうとしていた 去り際、佳嗣は言った・・・ 「・・・羅苑、お世話を掛けましたね・・・」 そして戸は閉められる・・・ 残った俺と架愁は同時に噴出す・・・ 「・・・佳嗣、後悔するくらいなら始めからアンナ事言わなきゃいいのにね」 「・・・アンナ風に言わなきゃ辰巳様が納得しないだろ?佳嗣の場合、不器用すぎるんだよ」 「そっか・・でも、佳嗣らしいけどね〜」 「だな」 「ふぁぁぁ・・・んじゃ僕も寝るよぉ〜おやすみぃ〜〜〜」 「お〜」 そして俺たちは同じ朝を迎える・・・ 何事も無かったかのように振舞う俺たちと辰巳様 ただ、いつもよりも数倍、修行の量を増やし始めた辰巳様の姿が屋敷中の人間の目を引いたことは言うまでもない・・・ えんどv *************************************** ☆後書き☆ ギャクパロのつもりが、変にシリアスに・・・; おかしなもんを送りつけてごめんなさい!! この物語のパロを『例のアレ』で挑戦したい・・・ような・・・; まっ、もう少し組織の話を更新されたら、コレのパロを押し付けます!! 遅くなりましたm(__)m 2004,3,18 |