平和なお茶会だった、はずだった。
少なくとも、彼女がその話題を口にするまでは。
遠坂凛とルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトが二人きりでお茶を楽しむのは、意外にもそれほど珍しい事ではない。二人は常日頃いがみ合っているように見えて、実は喧嘩というコミュニケーションの手段を通じてお互い心を許しあっているような側面もあったのだから。
その日も二人は少し高級な紅茶の香りを楽しみながら、他愛のない会話に花を咲かせてた。ここにはいない誰かの愚痴をこぼしてみたり、流行のファッションについて長々と想いを巡らせてみたり、時々クッキーをかじりつつ、無為で心地よい午後の一時を楽しんでいたのである。
しかしそんな、共に魔術師である彼女達が当たり前の女の子として過ごせる貴重な時間は、ルヴィアゼリッタの台詞がきっかけで終演を迎えた。
「……ところで、ミス・トオサカ。少し相談したい事があるのですけど」
真紅の紅茶で唇を潤したルヴィアゼリッタは、その波打つ水面に視線をおとし、次に窓の外の景色をしばらく眺め、最後に何かを思い出すかのように天井を睨んでから、ようやく、おずおずとそう切り出した。
「ん、なに? どうしたのよ」
その様子に興味をそそられたのだろう。凛はなんでもないという風を装いながら、微かに身を乗り出す。
「そ、その。本当ならこのような事を誰かに話してはいけないと分かっているのですが……。ですが私、こんな話、あなたしか相談できる相手がおりませんので……」
「もしかして……、相談事っていうのは士郎の事?」
「は、はい」
珍しくも控えめなルヴィアゼリッタにピンときた凛。なるほど、そういう問題なら、自分のところに回ってくるのもうなずける。確かにルヴィアには、わたし以外に相談する相手はいないだろう。そう、凛は内心頷いた。考えてみれば当たり前だ。彼女達を取り巻く少々特殊な状況を、他人に打ち明けられる訳もないのだから。
率直に表現すると、士郎と彼女達は一種の二股のような関係を続けていた。これだけを見ると彼の甲斐性が疑われかねないのだが、その辺りを二人にいわせると、どうせ士郎だし、初めから期待していませんわ、と散々である。
彼女達は耐えきれなかったのだ。過去、セイバーという最愛の人と別れを告げ、盲目に正義の味方として突き進んでいた士郎の生き方は苛烈すぎた。自分を顧みる事などなく、率先して傷付き、死の淵にその身を晒し、それでも足りないと更に更にアクセルを踏み込む。それはまさに呪だった。正義の味方という理想はどこで何を間違ったのか、灼熱する地獄の猛犬となって衛宮士郎をどこまでも追い掛け続けた。否、もはや士郎自身が狂犬となっていた。
二人はそんな士郎を説得しようとした。脅迫もした。説教して、殴って、激怒して、懇願して。最終的には宝石乱用投影全開出血大サービスの大乱闘でどうにかこうにか取り押さえ、ぼろぼろになった三人が三人ともわんわん大泣きして心の奥底まで曝け出し、その後に残ったのが今のような関係だった。凛とルヴィアゼリッタは自分達という枷を士郎にはめる事に成功したともいえるし、非常にたちの悪い男に捕まってしまったともとれるだろう。
いいじゃない、と凛は心の中で誰とも知らぬ誰かに呟いた。士郎は確かに無茶をしなくなったんだし、誰も迷惑してないんだし、何よりわたし達が彼に寄り添っていたいんだし―――。
「―――ミス・トオサカ、とても恥ずかしいのですが。それでも……」
「ええ、大丈夫よ。ここでの事は一切他言しないから。安心しなさい」
嘘臭いほど優しい笑みを浮かべながら続きを促す凛。刺激的な話題に飢えていたのだろうか。好奇心にキラキラ輝く瞳は全く隠せてないが、耳まで赤く染めて俯いてしまったルヴィアゼリッタは気付いていないようだった。
「……ありがとうございます。それでは、恥を忍んでお話いたします。そう、例えば、あれは一昨日の夕方の事でした―――」
時計塔での講義から戻り、屋敷の自室で一息つこうとした時です。部屋には私とシェロの二人だけ。彼に紅茶でも入れさせて、気晴らしにゆっくり談笑しようとでも思っていたのですが。
突然、後ろから抱き締められまして、力ではかなわない事をいいことに抱え上げられ、そのまま椅子に座った彼の膝におろされたのです。何ごとかと抗議したのもつかの間、強引に唇を割ったシェロの舌に、脳の奥までかき回されるように貪られました。舌を絡められ、唇を甘噛みされ、唾液を流し込まれ。シェロが私の舌を彼の口腔に迎え入れてくれた時点では、すでに抵抗を忘れていたどころか、すっかり彼の体に寄り掛かっていたのです。
「シェロ……」
きっと私の瞳は潤み、甘えきった表情で彼を見上げていたのでしょう。殿方に媚びるような仕種をするなど、レディにあるまじき事とは分かっておりますが、そのときの私はそれに思い当たる事すらなく、ただただ童女のように甘えるだけでした。
そっとさすったシェロの胸板は厚く、顔を埋めた首筋は逞しく。微かに香る汗の匂いが、私の脳を麻薬のように蝕んでいくのです。私の肩に添えられた彼の掌は大きくて、その力強さに溺れてしまいたいと願ってしまいました。それがとても恥ずかしく、それでも胸の内から嬉しさがとどめなく零れてきまして、私はその衝動に逆らえなかったのです。だから、ただシェロの全てが欲しかったですし、彼も当然、私を欲しいと願ってくれているのだと、期待しておりました。
夕焼けに赤く染まる部屋の中、世界には私達二人だけ。男と女。故に私は、望んだ通りの展開になると疑う事すらしませんでした。シェロも服の上から静かに愛撫をしてくれましたし、私の髪を何度もすいて、夕日に透かせて愛でてくれたのです。……正直な話、私の髪色がより濁って見える夕暮れはあまり好きではないのですが、シェロはそんな髪でも口付けを落して、綺麗だよって囁いてくれまして。―――そんな卑怯な事をされたら、もう、身も心もとろけるしかないではありませんか。
それなのに―――、そう、私をそこまで燃え上がらせておいてそれなのに、シェロったらそれ以上の事を何もしてくれなかったのです。軽い愛撫を延々と繰り返し、ただ私を苛め、翻弄し、もうお願いですからと幾度となく視線で訴えても、悪戯っぽい瞳で見つめるだけでした。挙げ句、彼は恥知らずにも、レディに対してこう尋ねるのです。
「ルヴィア、どうしてほしい?」
「どうしてって……」
シェロが何を求めているのか、それは一瞬の後に思い当たりました。いえ、不幸にも思い当たってしまったのです。衝撃が電流のように体を貫きます。前にも何度か、シェロは私に求めてきたことがありました。いやらしい言葉をいえと。その度に私は自らねだり、はしたない姿を晒す事を強いられてきました。
もちろん私ともあろう者が、そのような求めに応ずる事はあり得ません。……ですが、執拗なシェロの攻めに耐えかねて、泣きながらおねだりしてしまった事が、ないわけではなく……。それに、最後まで意地を張って拒み続けたあの日は、結局シェロは私をおいて帰ってしまい、その晩はどれほど自分で慰めようとも全く収まらず、あまりの悔しさと虚しさに泣きながら眠りにつきましたっけ……。
「シェロ、ひどすぎますわ……」
折れれば地獄、折れなければ更なる地獄。結局はシェロの強要する通りふるまわねばならないと分かっていても、その選択は死にたくなるほど恥ずかしく、どうしても避けたい羞恥そのものなのです。私がためらっている間も、シェロの手は私の体を撫で回すのをやめません。服の上からの弱い愛撫でしたが、それは私を確実に断崖へと押しやり、しかし決して果てさせてはくれない悪魔のように残酷な動きでした。
せめて勇気を下さいと口付けをねだってみても、彼の口は私の唇をあっさりと躱し、信じられない事にそのまま耳を甘噛みするのに使われる始末。しかもあろうことか、その直後に耳もとで「愛してる」なんて囁くのですよ。よくもまあしゃあしゃあと、そんな白々しく残酷で卑怯な台詞をはけますわね、と睨み付けてやりたかったのですが、その言葉が私の心にありえないほど染み込んできて、無言で俯く事しかできませんでした。
「………………します」
「ん? ルヴィア?」
「あ、やぁっ……、ひゃあ!」
ようやく絞り出した蚊の鳴くような声では聞こえないとばかりに、シェロの指が私の胸の頂きをぐりぐりと玩びます。今までの真綿で首を絞めるような責めから一転して激しい動き。それを喜んでいる自分が心の片隅にいたと自覚してしまい、余計に恥ずかしい思いでした。
「お願い……、します」
泣いてはいけない。いくら恥ずかしくても、自分のはしたなさが悔しくても、私をいじめるシェロを憎たらしく思っても。泣いてしまっては何かに負けてしまうから。そう、自身を押さえようとは頑張ったのですが、目から溢れる液体は、決して止まる事がありませんでした。
「───シェロ、……して下さい。あ、あなたが……ほしいの、です……」
熱に浮かされるままに言葉を紡ぎ、いやらしい行いを懇願する私。屈してしまったのは、これで何度目になるのでしょうか。初めての時は、狂乱したように泣き喚きながらでしたのに。今ではもう、静かに涙を流す程度でした。ここまで慣れ、堕ちてしまった私を惨めに思う一方で、更なる辱めにあう事を期待しているような自分がいる気がして、恐ろしさで身が震えました。
シェロはぐったりと力が抜けた私の体を抱き上げると、隣接する寝室に運び込みました。がちゃん、とドアに鍵のかかる音が、嫌に大きく部屋に響いたのを憶えています。いつのまにか辺りはすっかり暗くなっていたようです。私は柔らかなベッドに沈み込んだまま、戸締まりをし、ほのかな灯をつけるシェロをぼんやりと眺めておりました。
「ルヴィア、自分で脱げる?」
私は頷きましたが、手足の力が抜けきっていましたので、結局はシェロに脱がせてもらいました。そのときは頭に霞がかかっておりましたから、恥ずかしさはあまりありませんでしたけど、それも汗や他の液体でぐっしょりと濡れた下着を見られるまででした。顔から火が出るとはあのような事をいうのでしょう。私は何一つ言葉を発せずに、口をぱくぱくとさせるだけでした。シェロが私の額に口付けて、気にしないと言ってくれなかったら、今でも立ち直れなかったかもしれません。
私を裸にした後のシェロは、先ほどまで苛めていた彼とはまるで別人かと思うほど優しくしてくれました。とうに蜜で潤んでいた秘所を丁寧に舐め、彼のものをあてがい腰を沈めると、たったそれだけで、私は遥か遠くの世界へ飛ばされてしまったのです。地平線の彼方まで真っ白になるような快感でした。
胸を揉まれただけでも、陰核を刺激されただけでも、私の背中はアーチを描き、ガクガクと震えて快楽を叫びます。焦らしに焦らされた結果なのでしょうか。私の体は、驚くほど敏感になっていたのです。
それからの事は、実はあまりよく憶えておりません。シェロが激しく腰を動かす度に意識は途切れ、ゆるしての一言さえ発せずに、ただただあまりの快楽に壊されてしまう恐怖に怯えていました。いっそ壊されたいと思うほどシェロを求めて、ぐちゃぐちゃになった思考回路はいつ失神したのかさえ記憶に残しませんでした。
―――半分以上惚気じゃないか、と凛は呆れた。まあ、確かに目の前でゆでダコになってるルヴィアは困っているのだろう。いや、戸惑っているのか。
「……ですから、私はシェロに求められるのは嬉しいんですけど、ですが、ですが……、もうちょっとこう……」
ルヴィアゼリッタが必死になって説明する傍ら、凛は不機嫌な眼差しで天井を睨んでいた。「士郎もずいぶん頑張っちゃっているのね。あの日わたしを放ったらかしにしてついに帰ってこなかったのはそういう訳だったんだ、ふーん」など、内心でぶーたれていたのだが、それはそれとして、ルヴィアゼリッタの気持ちは分からなくもない。女として、そうそう毎回のように羞恥攻めなどされては堪らないだろう。
「……その、ミス・トオサカとするときも、シェロはこんな風に強引に?」
「わたし? ううん。そうね、たまに……、本当にたまになら似た様な事するかもしれないけど、普段はお互いに求めあう普通の行為よ?」
そうですか……、としょんぼりするルヴィアゼリッタを多量の優越感と若干の同情を込めた目で見詰めながら、凛はふと気が付いた。―――士郎の気持ち、少し分かるかも、と。
「ねえ、ルヴィア」
「なんでしょう?」
「あなた―――、可愛いわね」
「なっ―――!」
怪しく目を輝かせて舌舐めずりする凛に驚くルヴィアゼリッタ。その、目を丸くしておろおろする様子が、小動物を思わせるほど愛らしかった。普段の尊大な様子とは大違いのイメージだ。
少々色は違えど、揺れる金の髪は凛にいつかの廃虚を思い出させる。あのときと同じように押し倒してしまいたい。ルヴィアゼリッタの唇を奪い、士郎がしたのと同じように、否、それ以上に辱め、啼かせてやりたい。あの胸、たわわに実った果実はじつに揉みごたえがありそうだ。じわじわとルヴィアゼリッタを壁際に追い詰めながら、自分にこんな性癖があったのか、と凛は少し苦笑した。
獲物を追いつめた凛は、ルヴィアゼリッタの髪をかき分け、耳たぶを甘噛みしかねないほどの妖婉さで囁いた。
「教えてあげようか?」
「何を……、ですか?」
「もちろん、士郎の悦ばせ方」
凛が言葉を紡ぐ度、ルヴィアゼリッタはぴくりと反応する。その様子が楽しくて仕方ないと目を輝かせ、可愛い幼子に諭すように、甘く残酷に追い討ちをかける凛。
「今のままじゃ、―――受け身に甘んじるだけじゃ、士郎に飽きられちゃうわよ?」
「―――そんな……、シェロに?」
「ええ。どんなご馳走だって、それだけを食べ続ければ嫌になるじゃない。いつまでたっても同じ反応じゃ、男の子だって飽きると思わない?」
無音の雷が奔った。凛の言葉は鋭く研がれた恐怖の矢となって、ルヴィアゼリッタの心臓に静かに沈み込んでくる。胸が締めつけられるように苦しかった。もし士郎に捨てられたらと想像するだけで、目の前が真っ暗になるのを感じていた。凛の台詞の妥当性など、考える事すら忘れていた。
「―――わ、私、このままじゃ、……シェロに?」
「ええ。どうする?」
どうする、と問われても、ルヴィアゼリッタにはどうしようもなかった。恐怖だけが先走るものの、対策をたてられるような知識も経験もない。思い返してみれば秘め事は常に士郎によって主導されていた。
「ミス・トオサカ、私……」
よって、縋り付けるのはただ一人。ルヴィアゼリッタが頼る事ができるのは、目の前で微笑む凛以外にはいなかった。
「私に、教えていただけますか?」
「覚悟はある? 経験の足りないあなたには厳しいかもよ?」
「……はい。それで、シェロが喜んでくれるなら」
「だったら喜んで。ルヴィアはわたしの大切な友人ですもの」
しかし、ルヴィアゼリッタは気付いていたのだろうか。あまりにも優しすぎる笑顔の仮面をかぶった凛の瞳が、やたら爛々と輝いていた事に。
部屋に消音と人払いの結界を設置すると、まず真っ先に服を脱ぐように指示をした。まだ陽が高いうちから裸になるのをルヴィアはためらったけど、折角の機会、服を着たままなんて勿体なさすぎる。―――いや、着衣のままも捨てがたいけど、それはまた別の機会という事で。
「女同士でなにいってるのよ。ほら、脱がないとあんたの体が分からないでしょ」
「……で、ですが。…………いえ、分かりました」
しぶしぶと着ていたドレスに手をかけるルヴィアを眺めながら、なんとなく、士郎にも明るい場所で裸を見せた機会はあったのか、と尋ねてみた。どうせある訳ないだろうと思ってだけど、なんと、真っ赤に染まったルヴィアから二回ほどあるという答えが返ってきた。……奴に先を越されてたみたいだ。士郎のくせに中々やるじゃない。
「下着も、ですか?」
「うん、お願い」
ルヴィアの胸を覆い、見事な谷間を形作っていたブラジャーが外れる。プルン、と躍動する白い双丘。桜と同じほどにか、あるいはそれよりも少し大きめか。とにかく、わたしから見れば羨ましくて仕方がない。
「ミス・トオサカ?」
「―――隠さないで」
注がれる視線をさえぎる腕を封じてから、その魅惑の膨らみを凝視する。なんて美乳。プロレスだかレスリングだかで鍛えているおかげなんだろう。ルヴィアの胸はこれだけ大きいのに、重力に負けることなく理想の形を保っている。思わず、ごくりと喉が鳴った。
「ひゃんっ!」
指を沈めるとたちまち仰け反る。感度も上々。柔らかさと触り心地はもはや極上。味は―――、可愛らしく存在を主張する頂きの辺りをペロンと舐めると、ほのかに塩っぱい汗の味が少し。だけどそれが不思議と脳に甘い。これも最高。……まいった。たまらない。不公平すぎてあまりの嫉妬に千切れるぐらい乱暴したくなるのに、素晴らしすぎてこのまま永遠に愛でていたくもなる矛盾の存在。今までこんな贅沢なものを独占していたなんて、士郎はなんてずるいんだろう。
「……次よ」
「次ですか?」
「ショーツよ、脱ぎなさい」
少し不機嫌になったのが声に出てしまったようだ。ルヴィアはちょっと怯えたようにわたしを見て、後ろ向きに屈んでショーツに手をかけたところまでいって躊躇した。
「ミス・トオサカ、やはりこれは……」
「恥ずかしい?」
「……はい」
顔がこれでもかと上気している。ここまで脱いでしまったら全裸でも大して変わらないじゃないかと思わなくもないけど、まあ、確かに恥ずかしいのだろう。屈んでいる今の体勢も十分刺激的だけど。胸はふるふる揺れてるし、お尻は強調されてるし。うん、これはこれで。
「それじゃあ、それでもいいけど」
ほっと息を吐くルヴィア。
「でも残念ね。ルヴィアの覚悟ってその程度だったんだ」
「えっ?」
「ルヴィアにとってみれば士郎もその程度の存在なのねー」
「むっ! ぬ、脱ぎます! ええ脱ぎますともっ!」
半ばやけくそとばかりに露になるルヴィアの下半身。丸く張りがある少しばかり大きめのお尻。真っ白で形のいいそれが割れ目も隠さず目の前にあらわれる。ともすれば胸に勝るとも劣らない魅力的な女の部位。そして何より―――。
「だめよルヴィア、手で隠したりしちゃ」
飢えた男達ならよだれを垂らしそうな、女の子の一番大切な秘密の花園。
「ルヴィア、こっち向きなさい。気を付け。隠さないで」
おずおずと従うルヴィアゼリッタ。素晴らしい裸体が目の前に広がる。白磁の肌、引き締まったウエスト、目一杯自己主張するバストとヒップ、華奢な肩と細い背中、丸みを帯びたシルエット。何よりもルヴィアの表情がたまらない。茹で上がった顔はわたしと目を合わせる事もできずに、そっぽを向いたまま羞恥に耐えていた。
「ふーん、下の毛は少し色が薄いのかな? 綺麗に手入れされてるじゃない。意外ね、うぶなルヴィアの事だからもじゃもじゃかと思ったのに。あ、金髪だから放っておいてもそこまで茂る事はないのかしら」
ルヴィアは唇を固く結び、何一つ言葉を発しない。士郎の為だと耐えているのか、ぎゅっと拳を握り涙を溜めていた。なんて健気。そんなにいじらしい様子を見せつけられて、どう我慢しろというのだろう。わたしがもっと苛めたくなったのも、ルヴィアが可愛すぎるのがいけないのだ。……たぶん。
「あ、こんなところにホクロがあるんだ。士郎は知ってるのかしら。まあ知ってるだろうけど、知らなくても不思議じゃないわね。後で教えといてあげようか?」
あ、ビクッと震えた。そんな事止めてくれと叫びそうになって、それでも精一杯気丈に振る舞おうとしているんだろうか。すっぽんぽんの時点で今さらだとは思うんだけど。
「……濡れてるわね。微かにだけど。こういうの好きだったりする? ひょっとして―――」
勿体をつけて一旦区切る。ルヴィアゼリッタは聞きたくないと首をすくめ、ぎゅっと目をつぶって縮こまった。そんな彼女の頬に手を添え、決して聞き逃さないよう、聞き逃せないよう、耳もとに優しく囁いてあげる。
「―――士郎にすっかり染められちゃったかな?」
「――――――っ!」
わたしの揶揄に目を見開き、これ以上ないほど真っ赤になるルヴィア。俯いて涙をポロポロ流しながら唇を必死で噛み締める。あーもうっ、ダメだ。反則なんてもんじゃない。ルヴィアの様子がただ純粋に愛しくて、気がつけば抱き締めて唇を奪っていた。
どれほど時間が経っただろうか。部屋にあった大きなソファーの上で、全裸で戯れるわたしとルヴィア。ルヴィアの白い肉体は柔らかく、敏感で、初々しくて上品で。わたしは飽きる事なく貪り続けていた。
溺れてしまう。既に彼女の手足は、責めに耐えきれず震えていた。それでもわたしはかまわずに、ルヴィアを四つん這いにして、前も後ろもいじくりまわした。止めどなく湧き出る愛液をすくって、後ろの窄まりに塗りたくる。思う存分観察し、卑猥な感想を教えてあげもした。実験道具相手のように冷酷に秘芯をつねり上げ、愛する姉妹のように愛情を込めて蜜をすする。
「ふゃッ、あぁああぁーーーっ!」
もう何度目か分からないほどの絶頂を迎えて、ルヴィアはソファーに倒れ込んだ。びくびくと体が痙攣している。呼吸が荒い。汗にまみれた肌に張り付く乱れた金髪が、清純な乙女もかくやというほど淫らだった。
「ルヴィア、ほら、キス―――」
「ぅ、ん―――」
最初の内は女同士というだけで厭がったけど、瞳が半ば虚ろになるほど念入りに可愛がったおかげか、もう彼女自身の愛液を流し込んでも飲み込んでくれる。わたしの唾液をすすって、舌を絡めて甘えてくるほど。そんなルヴィアの頭を撫でながら、頃合を見計らってもう一度、今度は膝立ちに立たせてみる。完全に膝がわらっているようだけど、わたしに寄り掛からせてなんとか体勢を保たせた。
愛液が太腿を流れて垂れ落ちている。ソファーにはずいぶん染み込んでいるはずだから、後で凄い事になりそうだ。
胸の谷間に顔を埋めてから、右に左に頬を押し付け、心行くまでその柔らかさを堪能する。汗の香りが鼻をくすぐり、なぜかほんわか安心できた。そんなルヴィアの豊かなバストと女らしさにちょっと悔しくなって、谷底に鬱血するほど強く吸い付いてみた。
「ひゃ、それは、いやぁ…………っ!」
ルヴィアはいやいやと泣いたけど、おかまいなしに乳首の周りにも跡を残す。ルヴィアの体はキスマークだらけだ。首筋、鎖骨とバスト、背中に太腿、それから腋の下なんてマニアックなところまで。士郎が見たらどんな反応をするのか楽しみで、それを恐怖するルヴィアの厭がり様がもっと楽しくて、調子にのったらこうなってしまった。士郎に対抗してわたしの所有印をつけていたのかもしれない。
下から乳房をすくいあげ、舐めまわすと同時に下の口を弄って遊ぶ。陰毛や花弁を引っ張ってみたり、指を入れてかき回してみたり。幾度となく士郎の無骨な凶器を迎え入れているのが信じられないほど可憐なそこは、控えめに指に絡み付いてきてたまらなく楽しい。
「わ、私、もう……、ひゃん! だめ、やだぁ……!」
ルヴィアがガクガク震えて抱きついてくる。果てさせてあげてもよかったんだけど、もう少しこの状態を楽しみたかったから、やっぱりそう簡単に逝かせるのは止めにした。両手で背中を抱き締め、幼子をあやすようにさすってやり、触れあうだけの軽い口付けを繰り返す。だけど―――。
「いじわるっ! いじわるっ! ミス・トオサカの、いじわるぅ……」
焦らしに耐えきれなかったのか。べしょべしょに泣きじゃくるルヴィアが、まさか自分から求めてくるとは思わなかった。いやらしい腰の動きで貝を貝に擦り付け、わたしの胸に自分の乳房を押し付ける。唇を割って侵入してきたルヴィアの舌は、信じられないほど積極的で暴力的だった。
「やっ、ちょっと! あんっ! だめ、だめだって。ルヴィアァ……」
こんな技量をどこに隠してたのか。単に無我夢中なだけなのか。ルヴィアの攻めは炎のように情熱的で、巻き込まれたわたしも絶頂にむけて燃え上がる。
「だめ、もっ……、わたし、いっちゃう! ……だめぇ!」
「ぁんっ! いっしょにぃ! お願い、一緒に、いっしょに……! あっあぁぁぁ……!」
エクスタシーの波から泳ぎ出て、頭を振って状況を確認した。ルヴィアは未だうつ伏せにソファーに沈んだまま、快楽の名残りにその身を犯されている。全身汗だくで呼吸も荒く、あそこも汁で凄い事になってるみたい。それにしても……、窮鼠猫を噛むとはあのような事をいうのだろうか。少々苛め過ぎたのか、それともとどめが足りなかったのか。どちらにしろ、ちょっと失敗してしまったのは確かみたいだ。
「ねえ、ルヴィア、まだできる?」
わたしの声に反応はしたものの、返事が帰ってくる気配はない。お尻を優しく撫でてみると、ビクッと緊張して、疲れきったであろう体に力を込めて、なんとか起き上がる動作をしようとした。なんて健気な子なんだろう。だけど四肢に力が入らずに、うつ伏せのまま脚とお尻を震わせるのが精一杯だった様子。限界かと聞いても声すら出せず、微かに頷くのがやっとだった。
「そっか、限界なら仕方ないわね。なら―――」
軽くお仕置きをしてあげようと、ソファーに浅く座っておいでと手招いた。子供のように素直に頷いて、ふらふらながらも従うルヴィア。支えてあげながら誘導して、膝の上にルヴィアをうつむけに寝そべらせる。太腿には暖かいお腹が、目の前には綺麗なお尻がくる体勢。すべすべ。やわらか。ふふっ。ルヴィアはもう思考回路もまともに回転していないのか、疲れきって眠たいのか、こんな格好を求められてもきょとんとするだけだった。すぐにとろんと瞼が落ちる。
……寝入ってしまった。こんなかわいすぎる寝顔は罪だと思う。あまりにもかわいすぎて酷い事をするのがためらわれる。だってほら、普段とは別人と思う程純粋無垢な彼女を涙で汚すのは、ちょっとばかり酷じゃない。
むにゃむにゃと眠るルヴィアは、わたしの夢を見ているのか。さっきまでちょっと苛めちゃったけど、今はこの子を守りたい。この想いはきっと、間違いなんかじゃないはずだから。
「――――――シェロ……、キスしてくださいませ……」
――― 間違いだった。シークタイムゼロセコンド。ルヴィア有罪、お仕置き実行。片手でルヴィアの体をしっかり押さえ、もう片方の手を振り挙げる。今まで感じてた愛情、普段いがみあってる憎悪、士郎を半分とられてる嫉妬、密かに隠してた憧れ、その他諸々ありったけの感情を手の平に込めて―――。
―――パンッと、処女雪の柔肌めがけて振り下ろした。
「―――いゃぁぁぁっ!」
肉の鳴る音と女の悲鳴が部屋に響く。結界がなかったら一大事だろう。それぐらい大きな音だった。続けざまにもう一発、二発、更に更に、手が痛くなるのもかまわず想いっきり振り下ろして叩き付ける!
「っぁあ! っかはっ! いやっ! 何でっ?! いたっ、やだっ! 助けっ、痛い!」
大粒の涙が宙に舞う。痛みで一気に覚醒したルヴィアは、残ってなかったはずの体力を絞って逃げ出そうともがきだす。無論、わたしがそれを許すはずもない。跳ね上がる腰を押さえ付け、魔術を使う機会も与えず、容赦なく尻に打撃をくわえ続けた。
一撃ごと、一撃ごとにルヴィアが跳ねる。嗚咽が漏れ、お尻の肉は波打ち、乳房は大きく揺れ動く。白い肌には紅葉が栄える。わたしは白い部分を残さないように、満遍なく真っ赤に腫れ上がるように、一発ごと慎重に狙いを定めていった。
「ばかあ! もうっ、やだっ! 許してっ! 許してっ、下さいませ! お願い!」
――― ふう、少し小休止。痛々しく腫れ上がって大きさを増したお尻をさすって次どこにしようかと考えていると、なぜか頭が朦朧としてきた。―――どこか遠く、すすり泣く声が聞こえる。ぜい、ぜいと荒れた呼吸音も。……なんだ。息を切らしてるのは、わたしか。酸素が足りない。腕が重い。視界が朧だ。本気で打ち続けるのは、酷く、体力を、消耗させたみたい。
見るとルヴィアはとうに失神している。もうちょっと、……色々楽しみたかったけど、どうやらわたしも限界らしい。フラフラになっていたからだをなんとか彼女の隣に横たえて、ふかふかのバストを枕に意識を手放した。
凛が目覚めると、陽は大分傾いていた。顔は柔らかい何かに埋もれている。抱き締めていたそれから頭をあげて辺りを見回すと、むくーと膨れるルヴィアゼリッタと目が合った。
「……やりすぎですわ」
「……やりすぎた?」
「もちろんですっ!」
「そ……、そう。体は大丈夫? お尻とか?」
「……傷やキスマークは刻印のおかげで治りましたが、ですがもう二度としないでくださいませっ!」
思い出して、ごめんね、とバツの悪そうに胸に顔をうずめる凛。目の前にあった控えめな乳首を手悪戯しながら、だってルヴィアがかわいかったから、などとボソボソ言い訳をしはじめる。その手を払いながら、ルヴィアゼリッタは何かが引っ掛かるのを感じた。
「―――なるほど。あなた、シェロと同じことしてましてよ」
「士郎、と?」
「ええ、彼もいつも、情事が終わってからも私の胸に顔をのせたり、悪戯をしたり……。―――あなた達、大きな胸に飢えてません?」
明らかに凛の一部を見ながら冗談めかしていうルヴィアゼリッタ。そして冗談ととれずに青筋を立てる凛。母性を象徴するほど豊かな胸の膨らみが凛に備わっているか否か、その答えは一目瞭然だったのである。凛はムキになって反論しようとし、しかし何かに気付いて静かに答えた。
「……別に。片親なんて、魔術師なら珍しくもなんともないでしょ」
「………………そうですね」
凛は寂しそうに口を尖らせて、再び彼女の乳房をいじりはじめる。ルヴィアゼリッタも今度はそのままにしておいた。凛は制止がないのをいいことに頂きを甘噛みして、まるで赤子のように吸い付いてみた。無論、母乳なんてでるはずはなかったが―――。
「ひゃん!」
「あはっ、感じちゃった? もう一度、する?」
寂しそうな顔はどこへやら、にししと笑う凛から胸を隠し、ルヴィアゼリッタはがー、と怒鳴る。
「もう十分ですわ! 大体、さっきまでの行為のどこにシェロの悦ばせ方があったというのですか」
「ああ、士郎の悦ばせ方は―――」
「悦ばせ方は―――?」
「ごめん、忘れてた」
「わっ、わす!? ミス・トオサカ、あなたという方はっ」
正直すぎる凛の答えに激昂するルヴィアゼリッタ。それをまあまあと落ち着かせ、なだめるように続ける凛。
「あれだけルヴィアがかわいかったら、士郎が飽きるなんてないと思うけど……、どうしてもっていうのなら、そうね、今度どこかへ出かけてみない?」
何かのきっかけになりそうな特別なデートを企画してあげるから、と楽しげに提案する凛に、ルヴィアゼリッタはどこへ行くのですかと首をかしげた。
「ハイキングでもいかがかしら」
「ハイキング?」
「そう。自然に囲まれた開放的な環境は、女の子を積極的にしてくれるわ。それならルヴィアでも大丈夫。3人で行きましょう。今日のお詫びに、セッティングは全部わたしがしてあげるから」
「開放的で、積極的ですか……」
期待と心配を混ぜこぜにした心情で凛の説明を聞くルヴィアゼリッタだったが、ハイキング自体を魅力的に感じた事もあって、結局は凛の提案に頷いた。
空はどこまでも青く澄み渡り、木々は若々しい緑で世界を包み込む。風は柔らかく木漏れ日は暖かく、肥えた黒い土は豊穣の香りを辺りに漂わせていた。見上げるとそこには燦々と輝く太陽がある。
森の切れ間、透き通った水を湛える湖の畔にたたずんで、ルヴィアゼリッタは大きく息を吸い込んだ。空が広い。風に水気が混じっている。どこからか聞こえる鳥のさえずりが、耳に心地よく染み込んでくる。胸一杯に辺りの空気を吸い込んで、その瑞々しい味を楽しんだ。確かにこの場所は、凛の主張する通り開放的な環境といえるだろう。
「でしょ? だからさ、ルヴィアも一緒に泳ぎなさいよー」
「お断りしますっ!」
泳ぎながら誘う凛に、ルヴィアゼリッタはすげない返事しか返さなかった。凛が食い下がっても取りつく島もない。先ほどからしばらく続くやり取りだが、ついに痺れを切らしたのか、凛はむっとした顔で岸へと泳いでくる。
「なによ、ノリが悪いわね。せっかく来たんだから泳がないとつまらないでしょ?」
「泳ぐ? あなたの本心は違うのではなくて?」
「……なんでよ?」
「―――その格好は何ですのっ、その格好は!?」
「いいじゃない。開放的でしょ?」
「開放的すぎますわ!」
ルヴィアゼリッタが勢いに任せて指し示した先には、水から上がったばかりの凛の体があった。水滴を滴らせ存分に陽光を浴びるその肉体は、まさに生まれたままの姿である。邪魔にならないよう髪を結い上げている以外、かすかな布切れさえも身につけてない。今回の準備は全て凛がしたのだが、水着の用意は全くなかった。忘れた、というのが彼女の言い分であったのだが、水着以外は完璧にそろえておいて、それは少々苦しかろう。
「なんて破廉恥なんですか。今年流行の水着はシャネルの5番だとでも?」
「そうかっかしないでよ。大丈夫。この辺りにはわたし達以外誰もいないんだし、見るとしたらせいぜい野兎くらいでしょ。もちろん念のため辺り一帯結界もはってあるし。 ほらほら、そんな野暮ったいドレスは脱いじゃって、一緒に楽しみましょうよ、ね?」
「そういう問題ではないんです。宜しいですか? こんな真っ昼間から、青空の下、どこの淑女が肌を晒すというのですか! あなた達も見ているというのに!」
あくまで強固に反対するルヴィアゼリッタ。そんな彼女に、凛は冷ややかな視線をむけて、
「あなたの裸ならこの前も見せてもらったけど?」
「その後どんな仕打ちを受けたか忘れてませんわよ、私」
更に冷ややかな目で返された。
「……どうしても?」
「どうしても、です」
「そ。じゃあ仕方ないわね。わたしは士郎と二人っきりで楽しませてもらう事にするわ」
「シェロ、と……? いえ、それがよろしいですわ。破廉恥な方同士せいぜい楽しみなさい」
「そうね。思う存分見せつけてやるんだから。―――おーい、しろー! 一緒に泳ぎましょー!」
いいでしょ、ラブラブよ、などと煽りながら、凛は遠くまで泳ぎにいった士郎ぶんぶんと大きく手を振ってみせる。しかしルヴィアゼリッタは士郎という名前に反応こそしたものの、彼があらかじめ凛と示し合わせていたようにあっさり服を脱いだ事を思い出し、更にむくれて依怙地になった。そうですわ、あんなに簡単に裸になったシェロなんて、裸に……。
「―――やだっ、私ったら……」
「ん?」
どんな光景を思い出したのか。いぶかしむ凛を気にもせず、頬をおさえてふるふると頭を振るルヴィアゼリッタ。あのとき淑女たるルヴィアゼリッタはとっさに顔を覆ったが、手の指の間から見てしまった士郎のあの部分は、まだ小さな状態だったとはいえ、彼女にはあまりにも強い刺激だった。しかもあれが更に大きく、固くなるというのだ。情事の記憶の隅に映る臨戦態勢のそれは、確か猛々しく反り返って―――。
「……ルヴィア、すごくいやらしい顔してる」
「―――え?」
「ふふっ、ねえルヴィア。わたし、この前の事思い出しちゃった」
ルヴィアゼリッタの背中にまわった凛は、豊かな金髪に顔を埋め、彼女を軽く抱き寄せながら、いかにも愛情たっぷりという仕種で脅迫の言葉を紡ぎ出す。
「わたし、ルヴィアが一緒に泳いでくれないなら、寂しさのあまり何もかも士郎に喋っちゃいそう。ルヴィアがどんなに嫌らしかったか、どんなふうに乱れてどれほど淫らにおねだりしたのか事細かに。……自分から刺激を求めてここを擦り付けてきたりもしたわよね。あなたの淫乱さを士郎が知ったら、どんな反応するのかな」
「―――っくっぅぅっっ! このっ、あくま!」
「で、結局遠坂にかなわず脱がされた、と」
「はい……」
湖の一周に挑戦して戻ってくると、ものすごく嬉しそうな顔で泳ぎよってきた遠坂と、その背中に隠れるルヴィアに迎えられた。特にルヴィアは肩までどころか下顎の辺りまで水につかり、顔は温泉でもないのに茹で上がっている。こんなに恥ずかしがってるルヴィアをどうやって納得させたのか。恐るべし、あかいあくま。
「あ、ルヴィアも髪をあげたんだ」
「はい。邪魔になりますので。い、いかがです?」
「似合ってる。お世辞じゃなくて。うん、そういうのも新鮮かも」
3人とも立ち泳ぎしながらの会話。ルヴィアと俺は、現実逃避気味に当たり障りのない話題で場をつないでいる。確かに普段髪の間から覗く程度の首筋が完全に露出しているのは新鮮だったけど、今は他にも色々露出してはいけない部分が露出しまくっていてそれどころじゃない。この湖は透明度が高いから、遠坂の後ろにまわれば水面下で揺らめくルヴィアの裸体がまるまる拝めるはずである。現に遠坂の体が丸見えで俺の一部がえらい事になっていた。
遠坂の白い肢体。水面に近い胸の辺りは特によく見える。相変わらず小さめだけど凄く綺麗なふくらみで、ドキドキしながら眺めてたら遠坂に水を引っ掛けられた。
「……スケベ」
「……悪い」
「もうっ……。そんなに見たいなら、ルヴィアのでも見てなさいよ」
「わ、私!?」
「ルヴィアの?」
どういう事さ、と尋ねると、遠坂の奴、わざわざ俺のそばまでやって来て耳打ちした。それはいいけど、肩の辺りに何かが、むにゅっと……。
「―――凄いわよ。水に浮くの」
「―――そいつは凄いな」
頭に浮かんだ素晴らしき光景。まるで貴い幻想なそれをこの目で拝もうとルヴィアの元に泳ぎよると、腕で胸を隠しウーと唸って威嚇された。……だけど全く恐くないのはどうしたことか。むしろかえって可愛いと思う。
「ほら、ルヴィア、隠さないで士郎に見せてあげなさいよ」
「じょ、冗談じゃありませんわ! そんなことしたら貴方また、またあんな……。今度あのような目に遭ったら、私、本当に壊されかねませんから!」
イヤイヤと首を振って遠坂におびえるルヴィアの後ろに回り込み、強く優しく抱き締める。ルヴィアは一瞬ビクッとしたものの、俺だと分かって少しは安心してくれた。だけどさ、遠坂、おまえルヴィアになにしたのさ……。遠坂に視線で問いかけても、目を合せずごまかすように笑うだけだった。
裸のまま水中でルヴィアと強く触れあう。それは不思議な感触だった。冷たい水に浮かぶ暖かい体温。細く柔らかい体が何もつけてない皮膚を通して強く存在感を訴えかけ、立ち泳ぎをしながらだから常に動いて擦れあう。だから余計にお互いを意識してしまい、妙に気恥ずかしい空気が流れる。前に一度だけ、遠坂と一緒に風呂に入った事があったけど、あの時とはまた違う感覚だった。
「シェ、シェロ……」
潤んだ瞳で困ったように見上げるのは反則だ。上気した頬、見下ろした先の胸元、濡れた首筋、細い肩。なにからなにまで反則的すぎる。さっき遠坂の裸を見てからまずい事になっていた男根が、気付けばギンギンの臨戦態勢になっていた。しかもそれがルヴィアの体に当たってる。まずい。二人とも立ち泳ぎを続けているので、どうしてもルヴィアの太腿やお尻に触ってしまう。
「きゃっ、シェロ、あ、あたって……」
「―――ちょっとルヴィア、いいかしら」
思い付いたことがあったのか、唐突にルヴィアに何かを囁く遠坂。するとルヴィアは慌てて囁き返す。目の前で為されてた内緒話だったが、生憎と、どんな内容かまでは分からなかった。開放的とか積極的とか、あとは士郎が悦ぶなどのフレーズを聞き取る事はできたんだが。俺が悦ぶ?
「じゃ、士郎、ちょっと疲れちゃったから休憩してるわね」
「お、おう」
「ルヴィアも、ね。がんばりなさい」
「ミ、ミス・トオサカ……」
あからさまにルヴィアにアイサインを送ってから岸へと泳いでいく遠坂。何かを企んでいるのだろうか。それともルヴィアに気を利かせたのだろうか。彼女の行動の意味を考えていると、もう何度目か、ルヴィアのお尻の辺りに男根があたって―――。
―――そのままきゅっと挟まれた。
何が起こったのか、考えるまでもない。ルヴィアが挟んでる。お尻の割れ目で。尻たぶを押し付け、締め付けて。意図的であることも確かだろう。俯いてしまった彼女の表情は見えないけれど、耳の裏も首筋も羞恥に染まっていた。
素股の様に太腿の間まで誘導され、よりしっかりと包み込まれる俺の男根。そして擦られ、締めつけられ、玩ばれる。ルヴィアにはこんな事の技術も経験もあるはずなく、快楽とは程遠い拙い動きだけど、それでもただそうされているというだけで、この一時は貴重に過ぎた。
「ルヴィ―――」
「―――シェロ、見てください……」
しばらくの後、俺の腕を振りほどいて向き合ったルヴィアは、胸を隠すのをやめ、その見事な双丘を水面に浮かべた。相変わらず上気したままの顔。だけどどこか悪戯っぽい笑みを浮かべている。燦々と輝く太陽の下、波とともに浮き沈みする二つの白桃。それは、陳腐な想像なんて吹き飛ばすほど神々しくて、いっそこのまま齧り付きたくなる。
「いらっしゃい」
クスリ、と艶やかに微笑んだルヴィアは、呆気に取られる俺の後頭部に手を添えて、己が胸元に抱き寄せる。顔を覆う柔らかな乳房。トクン、トクンとルヴィアの鼓動が聞こえる気がして、俺の鼓動もルヴィアに聞こえている気がして、なぜだろう、とても優しい気持ちになっていた。
「ルヴィア?」
「……お嫌?」
静かに、しかし拒絶を恐れる不安げな声。そして拒絶など聞きたくないと言うかのように、ルヴィアは俺の頭を強く抱き締める。そんな彼女に俺は、嫌じゃないと首を振って否定した。嫌なはずない。たとえ嫌と言わないといけない状況でもそれが難しいほど、今の俺は喜んでる。
だけど正直、あまりの展開に、ついていけてない。
「ルヴィア、なんで?」
「シェロは、いつも私を可愛がってくださいますよね」
「……ん、そうなのかな」
むしろ俺がルヴィアに溺れているような気もするけど。……だめだな、俺。もっとしっかりしないと。
「そうですわ。ですから、私もシェロの事を可愛がりたかった。受け身でいるだけでなく、あなたを悦ばせる事ができるようになりたかったのです。……そう、ミス・トオサカのように」
幼子をあやすように俺の頭を撫でながらの彼女の台詞に、どれほどの気持ちが込められていたのだろう。どのような経緯を経てルヴィアの口から零れたのだろう。俺なんかにその全てを理解する事はできないのかもしれない。それでも、ルヴィアを愛しく想う気持ちがとどめなく溢れてきて―――。
「―――ルヴィア、顔をあげていいかな?」
「やっぱり……、お嫌でしたか?」
「そうじゃない。そうじゃなくてさ、今、無性にルヴィアとキスしたくなった。ルヴィアの唇が、今すぐに欲しい」
湖面に訪れた静寂は、甘く激しく、柔らかな涙の味がした。
「あら、ずいぶん早かったのね」
岸辺に上がると、タオルを羽織った遠坂が水筒のお茶を飲んでいた。
「なによ、もっとゆっくりしてこればよかったのに」
「いや、それが結構疲れるんだよ。水の中でいちゃつこうとすると。それにそもそも―――」
「あなたの事を放っておけませんわ。ミス・トオサカ」
「わたし?」
きょとん、と首を傾げる遠坂に、ルヴィアは水を滴らせたままの体ですり寄った。
「あなたのおかげですもの。私が、あんなに大胆になれたのは。シェロを悦ばせてあげられたのは」
「そっか。よかったじゃない。ルヴィア、頑張ったのね。よかった」
遠坂の頬にキスをして微笑むルヴィア。そんな彼女をまるで愛する妹か娘かのように、かわいくて仕方がないと抱き締め頬ずりする遠坂。二人はそのまま生い茂る草の上に倒れ込み、仲良く無邪気に戯れた。青空に響く笑い声、転がる二つの白い肉体。二人とも本当に楽しそうで嬉しそうで、声をかける事もためらわれる。そのまま絵画になりそうな楽園の光景。美しきギリシャ神話のニンフが現代に現われたのか。……しかし、目の前で美少女二人が全裸で絡み合っているのに、この寂しい気持ちはどうした事か。
さっきから完璧に忘れられてないか、俺。
遠坂にルヴィアをとられたのか、ルヴィアに遠坂をとられたのか。どうやら乱入もできそうな雰囲気ではないし、仕方がない、もうしばらく泳いで時間を潰す事にしよう。見ると二人は盛り上がってきたのか、いつのまにか舌を絡ませあっている。最早このまま立ち尽くしていると人生の無為とか安らかな老後とか悟りかねない。そうだな、二時間ほどしたら帰ってくるか―――。
「―――ちょっと、士郎ったらどこに行こうってのよ」
―――っ、めざといな遠坂。逃がしてはくれないのか。っていうかこのまま延々見せつけようって魂胆なら泣くぞこのあかいあくまっ!
「いや、ちょっと神の不在を嘆いてこようかと」
「……シェロ?」
「ふーん、つまりのけ者にされていじけた、と」
「なあ遠坂。世の中にオブラートは絶対必要だと思うんだが」
「なによ。逃げ出そうとする士郎が悪いんでしょ。ほら、遠慮しないで混ざりなさいよ。なんなら二人で一緒に口でしてあげようか」
「……ミス・トオサカ?」
ご奉仕よご奉仕、なんて魅惑的な言葉で誘いながら俺を押し倒す遠坂。ぺろん、と頬を犬のように舐められて、悪戯っぽい瞳でキスを迫られた。俺に断る術などあるはずがない。しなだれかかる遠坂を抱きとめて、まずはその唇を軽く舐める。
「ルヴィアの味がするでしょ」
「……確かに」
今度は遠坂の味を確かめようと、彼女の口の中に深く分け入る。遠坂に唾液を飲み込ませ、遠坂から唾液を飲まされる。舌と舌でせめぎ合い、柔らかい唇を甘噛みする。一通り遠坂を堪能して唇を離すと、一筋の糸が橋とかかった。急に気恥ずかしくなる俺達。二人同じく手の甲で口の周りを拭い、照れ隠しとばかりに触れるだけのキスをすると、示し合わせたようなタイミングでルヴィアを呼んだ。
「ねえ、士郎に口でしてあげましょうか」
「……口?」
「ええ、士郎もきっと喜ぶわ。ほら、もうこんなになってるじゃない」
ルヴィアの肩に手を添えて、俺の息子の目の前に誘導する遠坂。頬を染めながらもまじまじと見詰め、指でちょんと突ついてみるルヴィア。すぐに俺の視線に気付いて真っ赤になりあたふたする。
考えてみれば、こんな風に明るい場所で間近に見せた事はなかったか。ルヴィアの仕種が初々しい、汚れを知らない乙女のようなそれだったからだだろう。そんな彼女の前に汚らわしい物を突き立てている自分が酷く罪深い気がして、なんだか恥ずかしい気持ちになった。―――と、なんだろう、ルヴィアの視線が急に険しくなってる。
「シェロ、あなたいつもこんなに大きなものを私の中に入れてたのですね」
初めての時なんて、本当に恐くて痛かったんですから。なんて、ツンツンとつきながら文句を言われても困るというか。あと、頬を染めたまま上目遣いで恨めしげに見上げるのはやめてほしい。俺の理性は決して無限じゃない訳で。なんというか、その……、助けてください遠坂さん。
「もうっ……。ほら、ルヴィア」
「ミス・トオサカ? 何を?」
戸惑うルヴィアを促して、俺の男根に近付けていく遠坂。だけどルヴィアは何も分かっていないようで、唇にどんどん迫るそれに戸惑うだけ。
「ミ、ミス・トオサカ! 私に何をさせようというのですか?」
「だからさっきから口でって……。ルヴィア、あなたひょっとして知らないの?」
「何を……、ですか?」
そういえばルヴィアにしてもらった事なかったな、と今さらながら思い当たった。俺としても、ルヴィア相手だとなぜか一方的に攻めるだけだったったから、そういう事を頼んだ事は一度もなかったし。だけどまさか存在すら知らなかったとは。
「……士郎?」
「……ああ、そうみたいだ」
確認の視線に頷くと、遠坂はなぜか溜め息をついた。
「あんた……、わたしには色々ねだっておきながら―――」
「……すまん。遠坂がかわいかったから、つい」
「……ばか」
そんな言い訳で納得した訳じゃないだろうが、今はとりあえずルヴィアに説明する事を優先させたらしい。
「―――でね、アレを、こうやって―――」
「そ、そんなっ! 殿方のものを、口で!?」
「そうよ。士郎だってあなたのここ、舐めてくれたりするしょう?」
やれしゃぶる時は口の中をどうするとか、どの部分をどう舐めると感じるだとか。聞いてるこっちが恥ずかしくなるぐらい具体的な説明をする遠坂。それに時々とんでもない台詞が混ざっている気がする。はじめに三つ指ついてご奉仕させてくださいとねだるのがマナーだとか、出された精液は全て飲み干せだとか、挙げ句尿道に残ったものも吸い出さなくちゃいけないのよ、とかなんとか。遠坂、俺はおまえにだってそこまでしてもらった経験は一度も―――。
「黙ってなさい。そっちの方が嬉しいでしょ?」
「いやでもおまえ……」
「い・い・か・ら」
「……はい」
自分の弱さに涙がでた。
「二人とも、何をこそこそ内緒話などしているのですか?」
「ん? なんでもないわよ。気にしないで。しっかし勿体ないわね。その分だと胸も大して使ってないんでしょ? こんだけ大きいなら確実に挟めるのに」
ルヴィアの胸を下から掬いあげながら羨望の眼差しで見る遠坂。確かに大きさでは圧倒的にルヴィアに軍配が上がるけど、それでも遠坂の胸、俺は好きだぞ。そう、正直に自分の気持ちを告げたら、ばか、と赤くなってそっぽを向かれた。
「シェロ、あなたは私が胸で挟んで差し上げると、嬉しいですか?」
「あ、ああ」
でしたら……、と上気するルヴィアを抱き締めて口付けを交わし、お願いしていいかな、と頼んでみると、桜色に染まった頬でこくんと頷いた。
「それでは……、ご、ご奉仕させてください」
遠坂の嘘を見事に信じ込み三つ指をつくルヴィア。クラッときた。これはちょっとかわいすぎるのではなかろうか。ぐっと親指を立てる遠坂に、こちらも親指を立ててかえす。
立ち上がった俺に対して膝立ちになって挟み込むルヴィア。考えてみれば人生ではじめての体験する行為だった。暖かい乳房で包まれている。熱く絡み付き、グミのような、無数の舌の様な柔らかさの秘裂とはまた違った心地よさ。しっとりと静かに柔らかく、ルヴィアが一生懸命感じさせようとしてくれているのが無性に嬉しくなってくる。
「ルヴィア、もう少し強く」
「こう、ですか?」
ぎゅっ、ぎゅっ、となれない動きでも精一杯やってくれているルヴィア。上から見るとルヴィアの白い体が、普段あれだけ高貴で凛とした彼女がかしづいているように思えて、嗜虐や背徳で雄の本能を更に刺激する。胸で擦る度に揺れ動くルヴィアの腰も、まるで男を誘っているかのようだった。健気なかわいさと拙い動きのもどかしさが相反して、焦れったささえ愛おしい。ルヴィアの髪をそっと撫でると、不安げに見上げる彼女と目が合った。
「シェロ、気持ちよく……、ありませんか?」
「あ、ああ。大丈夫。ルヴィアが頑張ってくれるだけで気持ちがいいよ」
俺としてはフォローしたつもりだったのだが、なぜかルヴィアは落ち込んでしまった。ショックを受け、意地でも気持ちよくさせてやると依怙地になるルヴィア。そんな彼女を見かねたのか、ふと、隣で見ていた遠坂がアドバイスをはじめた。
「唾とか垂らしてみた方がいいかも。手はこうやってしぼり込むようにぎゅっと。士郎の先っぽに口が届く? うん、舐めてあげたらもっと喜ぶわよ」
頷いて、その通りにするルヴィア。唾液をたらし、力を込め、恐る恐ると舌を伸ばす。ちょん、と舌先で触れて慌てて離して、それを何度か繰り返す内、馴れてきたのだろう、大胆にも亀頭をくわえ込んだ。
そして再びルヴィアが胸を動かしたとき、快楽は全くの別物だった。とろけそうになる。腰が抜けないか心配だった。思わず声が漏れてしまい、それを聞いたルヴィアの顔に華が咲いた。
白い谷間から男根の先端が顔を出すたび、ルヴィアの赤い舌が撫でつける。粘性の液体が舌にからみ、亀頭が離れるたびに白濁の糸がつうと伸び、俺とルヴィアに橋を架ける。ルヴィアは決して逃がしませんわ、もっと舐めさせなさいとばかりに舌を伸ばし、実に楽しそうにペロンと舐める。遠坂のアドバイスがきっかけでこんなに変わるとは、どれだけ感謝すればいいのだろう。しかし―――。
「ずいぶん詳しいよな、遠坂。もしかして勉強してたのか?」
「うっ、うるさいわね! ええ、本を読んで勉強したわよ! いつか大きくなったら士郎にやってあげるのに憧れてたわよ! わっ、悪い!?」
自分の胸を隠し、えらく可愛い事をのたまう遠坂。そんなことない、と慰めようとしたら、意外な方向からの笑いにさえぎられた。
「あら、ミス・トオサカにしては可愛いお話ですわね」
「……まさかあんたにそんな台詞をもらうとはね」
この恩知らず、と睨み付ける遠坂の視線を涼しく受け流し、微笑みさえ浮かべるルヴィア。
「あなたの胸では量がたりませんもの。いえ、寄せてあげて、なんとか挟めるかもしれませんが、それだけですわ」
「ルヴィア、それはちょっと酷く―――」
「―――お黙りなさい、シェロ。ですが、ミス・トオサカ一人では無理でも、誰かと一緒ならできるのではありません?」
「ル、ルヴィア? ……いいの?」
「ええ、いらっしゃいな」
二人は適当な倒木の上に寝そべるよう俺に求め、向い合せになってまずは軽く男根を舐め、唾液でドロドロにしてから胸を寄せあった。四つの乳房に囲まれる快感。別々に動く二組の双丘。快感そのものも凄い事ながら、幸せそうに笑う二人が嬉しかった。二人はとても満足そうで、楽しそうで。俺に見せつけるよう、仲良くキスさえしていたのだから。
「あんっ! やだ、こすれて……」
「ふふっ、ルヴィアったら可愛いんだから。……ひゃん!」
胸と胸で乳首が刺激されあっているのか、動く度上気して燃え上がっていく遠坂とルヴィア。それゆえ益々激しく動き締めつけられ、快楽はもはや電撃に近い。
「二人ともっ、ごめんっ、出る!」
「きゃっ!」
耐えきれないとわかったら、それ以上は本当に耐えきれなかった。驚くほど飛び散る白濁液。それは遠坂とルヴィアの顔を汚し、体に飛び散り、特に胸をどろどろにした。腰そのものが消失したかと思うほどの脱力感。これほど出したのはいつ以来だったか。
「ちょっと士郎?」
顔にかかった精液を拭いながら、むっと睨み付ける遠坂。一方ルヴィアは、射精が終わって力が抜けてきた男根をじっと見て―――。
「ルヴィア?」
「ちょっとあんた、なにしてるのよ?」
なぜかチュウチュウ吸っていた。追撃する快感が腰の裏から後頭部まで響く。ルヴィアは口の中にあるものをしばらく味わって、挙げ句、飲みにくそうにしながらもなんとか飲み干した。
「ぅん……、はあ、苦いですのね……」
「あんた一体……?」
「あら? だって、これがマナーなのでしょう?」
「うっ……。そ、そうよ、それでいいのよ」
今更嘘とは言えなかったのか。目をそらせながらも肯定する遠坂。それを見たルヴィアはしばらく考え、そしてにこりと微笑みを浮かべ、遠坂の体をも舐めはじめた。
「んんっ! ルヴィア、あんた……」
「遠慮はいりませんわ。私、シェロのならどんな味でも大丈夫ですから。あら、こんなところにも……」
「ひゃっ! ……わかったわよ。好きなだけ舐めなさい。わたしもルヴィアの体を全部舐めてあげるから。もう……」
観念した遠坂もルヴィアの体を舐めまわし、お互いに丹念に掃除しあう。俺の腰に流れ落ちたそれすら舐めとられ、二人が喉を鳴らして飲み込んだ。全て綺麗になった後でも燃え上がった気持ちを持て余したのか、二人の絡みあいは続いている。あきれるほど情熱的なキスを繰り返し、四肢は温もりを求め絡まりあって休む様子がない。
結局、二人の仲睦まじい営みは、俺が復活して乱入するまで続いていた。
「いやぁっ! 私、壊れる! 壊れちゃう! わたくしぃ、こわれるぅっ、こわれますうぅっ! いやぁっっ!」
陽は沈み月が昇った森の中、投影されたテントと即席のキャンプファイアーのすぐそばで、ルヴィアゼリッタは泣き叫んでいた。犬のような体勢の彼女を後ろから貫く士郎。そのピストンは早く強く強烈で、一撃ごと、彼女の乳房が激しく揺れた。ルヴィアゼリッタに与えられる快楽は強すぎるあまり、彼女を苦痛ともとれる絶頂の激流に溺れさせているのだった。
「だめぇ……。もう、やめて……、これいじょうはやだぁー! ひゃっ!? あぁぁぁぁッ! 死んじゃうぅっ!」
ひときわ大きな悲鳴をあげ、極限まで体をそらしヒクヒクと痙攣するルヴィアゼリッタ。そんな彼女を背中から抱きしめて、ドクドクと熱い液体を注ぎ込む士郎。彼が肉棒を引き抜くと、痛々しいほどに犯された秘裂から白濁液が大量に流れ出た。更に後ろの穴にさえ、貫かれ射精された痕跡が残っている。
汗と精液と愛液で美しかった体をドロドロに汚されたルヴィアゼリッタは、すでに限界を超えて気を失い、土がつくのもかまわずその場に倒れ込んだ。余韻に震える彼女の肢体を眺めていた士郎だが、テントまで運び込もうかと思案していると、彼の背後で毛布を羽織った人影が起き上がる。
「もう大丈夫なのか、遠坂」
「ええ、なんとかね。……うわ、ルヴィアったらドロドロじゃない」
頑張ったのね、と微笑む凛に、士郎は困ったような笑みを浮かべる。彼女が何を期待しているか、心当たりがあり過ぎるほどだったからだ。士郎は目を閉じて集中し、トレース・オンと口の中で呟いた。するといかなる奇跡か魔法だろうか。ルヴィアゼリッタの中に欲望を吐き出し萎えかけていた男根が、天を衝くほどに反り返ったのである。自分が使っていた毛布をルヴィアゼリッタにかけてやった凛は、その変化を見て満面の笑みを浮かべた。
「優しくか? それとも激しくか?」
「うーん、今度は思いっきり優しくしてもらおうかしら」
あぐらをかいた士郎の上に座った凛。その嬉しそうな表情を目の当たりにした士郎は、たちまち疲れを忘れ去り、もう何度目かわからないほど繰り返した口付けに溺れていく。
もう少しすれば、再びルヴィアゼリッタも起き上がるだろう。それまで凛を焦らし、持たせようと士郎は考えた。3人同時に睦合い楽しむのも、自分達ならではの幸せだろうから。
夜は長く、人生は短く、歳月は儚い。故に人は温もりを求めるのか。故に彼らは愛に飢えるのか。壮大な満天の星の下、彼らの営みは今しばらく続くようである。
―――そして私は、全裸で後ろ手に手錠をかけられた姿のまま、ベッドの上に転がされました。うつ伏せにされ、腰を高くあげるよう求められます。
「……シェロの変態」
「ひどいな。ルヴィア、この目が変態の目に―――」
「見えますわ」
見えないはずがないでしょう。私を辱めようとワクワクしてるのを隠そうともしていないではないですか。第一、電灯が明々と照らす寝室の中、女の子にこんなにも屈辱的で恥ずかしいポーズをとらせる人が、変態以外のなんだというのでしょう。
「今夜は好きにしていいっていったじゃないか」
「だからって、いきなりこんなこと……」
そう渋りつつも、シェロに再び促されては、逆らうことができません。恥ずかしくて死にそうなのを必死に耐えて、ゆっくりと腰を上げていきます。熱く上気した頬とにじむ涙を見られたくなくて、シーツに顔を埋めながら。我ながら健気なことだと思いました。
シェロにお尻を突き出すような、どうぞ全て見て下さいといわんばかりの格好です。羞恥と屈辱のあまり体が震えておさまりません。シェロになら何をされても平気です、とついさっき恋心に浮かされて口にしてしまったことを、早速後悔したほどです。
見られてしまうのは初めての経験ではありませんでしたが、だからといって恥ずかしいことに変わりありません。こんなこと、これからも慣れることはないでしょうし、決して慣れたくなどありませんでした。
だというのにシェロときたら、それはもう楽しそうに観察して、尻たぶを開いてのぞき込んだり、わざわざ肩を持ち上げて私の乳房を乳牛のそれのように搾ろうとしたり。調子に乗り過ぎだと叱責したくなるほど残酷で執拗に責めるのです。後ろの穴の色やしわの具合などを事細かに評価されたときなど、もう、自分が泣き崩れていないのが不思議でした。
「ルヴィア、気持ちいい?」
「……知りません」
私の意志を無視して湿り気を増していくその場所を撫でながら、意地の悪い質問をするシェロ。
「残念だな。俺、ルヴィアが悦ぶ顔が好きなんだけど」
だったらもう少し優しく可愛がって下さってもいいではありませんか、と拗ねてみせると、泣き顔も同じぐらい好きだからなんて、首筋に優しく口付けて低く甘い声で囁くのです。
「ゾクゾクするんだ。可愛い瞳が涙に濡れるのも、恥ずかしがってバラ色に染まる頬も、苛められて感じちゃって戸惑う表情も。感極まってグシャグシャに泣いちゃって、きれいな顔が熱く歪むのなんてたまらない」
なんて、真剣な顔でしゃあしゃあと。私、そんな戯れ言でごま、ごまかされませんからっ……!
「大体、ルヴィアだっていじめられるの好きなくせに」
「なっ―――。そんな訳ありませんわっ!」
「……いつも悦んでいるじゃないか」
「そんなのっ、シェロの錯覚です!」
「本当に?」
「当然ですわっ」
納得したのかどうなのか、シェロはしばらく沈黙しておりました。そして突然、何を思ったのでしょう、私の足首をつかんで仰向けにし、無理矢理大股開きにさせたのです。なんという暴挙。抵抗は全て無駄でした。手は後ろで拘束され、足をじたばたさせようともシェロの力が強すぎて、腰をよじっても彼を誘うようなダンスにしかなりません。なんでこんなことをと顔を見上げると、シェロの表情にゾッとしました。
その笑みは正義の味方には似つかわしくない、そう、むしろ正反対の邪悪と呼ぶにふさわしくて―――。
「決めた。今日はルヴィアを徹底的に泣かせてやる。いじめて、恥ずかしがらせて、それでも凄く感じさせてやる。覚悟しとけよ。今まで経験したことがないほど悦ばせてやるからな」
―――悲鳴すら出ないほどの恐怖でした。
どれほどの時間がたったのでしょう。どれだけの涙を流したのでしょう。シェロは手を替え品を替え、様々な体位で私の体を嬲りました。一度もいかせてもらえずに焦らされて、乱れてしまって、悔しくて。
「んぁぁ……。あっ、あんんっ! や、だ、ああぁぁぁ!」
意思に反して体が洩らす甘い声を、押し止めることができません。登り詰めるだけの快楽など得られないと分かっていながらも、太ももを摺り合わせ、乳首をシーツに擦り付けるのがとまりません。それをシェロに指摘され、いっそ舌を噛みきりたくなりました。もはやプライドはズタズタにされ、私の心は諦めと絶望に塗り潰されてしまったのです。
「ほんと、ルヴィアは感じやすいんだな」
「そんな訳っ、ひゃっ! あっ……、ちがうっ、そんなわけ、ありませんっ! やっ、うぅっ……!」
彼が楽しそうな声で揶揄するのが悔しくて、悔しすぎて、その悔しさすら快感になってしまうのがいっそう私を惨めにさせます。時々垣間見えるシェロの優しい気遣いも、容赦のない行為とのギャップで私をさらに追い詰めていきました。
それが一段落し、ようやく抱いてもらえると思ったのに、入ってきたのはバイブでした。それも前と後ろの両方にです。冷たく無情なそれを私の中に入れて出して、既に洪水になっている事実を誇示するようにわざとくちゃくちゃ音をたてて掻き回されました。二つの器具が動く度、淫らに喘ぎ仰け反ってしまうのが恥ずかしくてなりません。本当に、シェロの玩具になった気分。
「……シェロ、あなた、憶えておきなさい。……許しませんから。絶対に許しませんから」
荒い息をなんとか整えて睨み付けても、シェロは全く堪えてない様子。秘裂に入っていたバイブを抜きながら、彼は信じられないほどデリカシーのない台詞を投げかけました。
「なんでさ。ルヴィア、凄く感じてるじゃないか。ここだって凄い濡れてるぞ。ほら」
「……あ、やだ……。だって……」
「だって?」
「シェロが……、シェロですから……」
私を弄ぶシェロが許せないのに、悔しくて堪らないはずなのに、彼が彼であるというだけで全てを受け入れてしまう私の体。それどころかたった今、十分すぎるほど嬲られているはずですのに、更なる羞恥と被虐を望む自分が確かにいると感じてしまっていて、恥ずかしさのあまり彼の顔が見れませんでした。
そんな私をうつ伏せにし、覆いかぶさりながらシェロは再び尋ねます。堅いものがお尻に当たり、その逞しさが感じ取れます。それを渇望してしまうのは、私がはしたない女だからなのですか?
「どうする、ルヴィア?」
「………………」
もし自分から求めないのなら、これから私は延々と嬲られ、弄ばれ、罵られて蹂躙され続けるのでしょう。例えようのない切なさが胸を締め付けて、大粒の涙がとめどなく溢れ、頬を流れ落ちていくのを感じました。
いっそ屈してしまいましょうか。認めてしまえば逝かせてくださるとシェロはいいます。私がどんなに淫乱なのか洗いざらい告白してしまえば、シェロは慰めてくれるのでしょうか。激しく貫いて下さるのでしょうか。そう考えてしまった瞬間、私の中で何かが折れました。
「お願い……、します」
「ルヴィア、聞こえない」
「お願いしますっ、なんでもしますからっ、もう本当にっ……」
あなたの温もりをくださいと、泣きながら腰を振りねだる淫らな女。熱に浮かされたこのときの私は、たとえシェロにどう思われようとも、一時の渇望を満たすため彼のそれにしゃぶりついていたかもしれません。屈辱に打ちひしがれる度なぜか敏感になっていく私の体は、もう、これ以上の焦らしに耐えることなどできなかったのですから。
「認める?」
「はいっ、認めますっ! 私は、淫乱です。変態ですわ。あなたに苛められて感じてしまってます。ですからっ、認めますからっ」
「なら、どうして欲しいのさ」
「入れて下さいっ。しぇろのそれでっ、わたくしのっ、なかをっ、ぐちゃぐちゃにしてぇっ! あっ……、ひゃうぅうぅぅっ!」
そしてようやく、私の身体を貫くように、熱くたぎる本物のシェロが打ち込まれました。強烈な快感が頭の上まで走り抜けて、私は思わず仰け反ります。後ろにバイブが入れられたままでしたら、往復と振動で余計グチャグチャに掻き回されてしまいました。それでなくても、焦らしに焦らされて気も狂わんばかりに燃え上がった体です。たちまちのうちに絶頂に達し、シェロの見てる前で果ててベッドに沈み込みました。ひくひくと余韻に震える私の肢体は、無力で情けなく見えたでしょう。こんな姿、シェロにしか晒せないはずなのに、シェロにだけは見せたくありませんでした。
「はっぁっ……、シェロっ、しぇろぉ……!」
「ルヴィア、次いくぞ」
いったばかりで敏感な私を抱き上げ、自分のひざの上にのせるシェロ。たしか、対面座位と呼ばれる体位だったでしょうか。シェロの顔が目の前にあって、その太い腕と厚い胸板に酔いしれることができる、私の好きな体位の一つでした。ですが今は手錠で後ろ手に拘束されています。おかげでせっかく抱き締めてもらっているというのに、私の腕をシェロの背中にまわすことができません。たったそれだけの事なのに、それがこんなにも辛い事だったなんて。
「お願いです。せめてこれをはずして下さい、お願いですから……!」
腰を持ち上げられて私の秘裂にシェロのいきり立ったそれをあてがわれたとき、私は恐ろしさのあまりそう叫びました。このままではまるで人形を扱うかのように、私の体は弄ばれ壊されてしまうでしょう。シェロに抵抗することができず、自分から彼を求めることもできないまま。それは嫌ですと子供のように首を振る私を、シェロはかえって楽しむように眺めます。どれほど必死に懇願しようとも、聞き入れてくれる気配もありません。優しく笑い残酷に私を蹴り落とすシェロのことが、とても恐ろしく思えました。
「やだっ、待って! あっ……!」
「悪い、ちょっと我慢してくれ」
「や、あ、あ……。かはっ―――!」
根元まで一気に叩き込まれ、呼吸困難におちいる私の肉体。痙攣しパクパクと金魚のように口を動かして痛さと快感に翻弄される私を無視するかのように、シェロは腰を動かすのをやめません。右手で私の腰をつかんで動かし、左手で乳首をつまんで引っ張り、痛いほどにのばして放します。私の乳房がプルプル揺れるのをみて、愛しくて仕方ないという様子で優しく笑いました。
「ぁんっ! 嫌ぁ……、やめ……、くださいませ……」
痛みと屈辱に震えていましたのに、不意に唇を奪われました。だ液でたっぷり濡れた舌が強引に押し入ってきて、口腔を蹂躙し、逃げまどう私の舌を捕らえ、次から次へと唾液を注ぎ込んできます。いつもと同じキスのはずですのに、今日はこんなにも荒々しいのはどうしてでしょう。思わず飲み干してしまった彼の味が私の全身を上気させ、汗をさらに吹き出させました。
シェロの肉体とぶつかる度、お互いの汗と粘液が混じり合い、むせ返りそうな匂いが充満していきます。鼻をつく野性的で淫蕩なその香りが、私の奥に眠る雌としての本能をこれでもかと刺激してしまうのです。
それがあまりにも怖かったので、私は身を捩り彼の口付けから逃げました。いやいやと首を振って体を揺すりますが、あきれるほど鍛えられた彼の体は微動だにせず、かえって自分で結合部をより刺激してしまう始末でした。腕の中で暴れる私へのお仕置きなのでしょうか。私の肩をガッチリおさえた上で、乳首を親指と人差し指でこれでもかと抓られました。あまりにひどすぎる仕打ちです。痛さのあまり悲鳴が溢れ、体がビクビクと跳ねました。痛みから逃れようとどんなに暴れても、シェロの腕はびくともしません。かえってギリギリと力が込められ、それは私が逆らうのをやめるまで続きました。体から力を抜き、許して下さいと謝るまでいくら泣叫ぼうと終わらなかったのです。
魔術師として痛みには慣れていたはずでした。ですがほかならぬシェロに乱暴されていると感じただけで、私に痛みを耐える術は皆無なのです。本当に、なんてひどい方なのでしょう。彼に懸想さえしなければ、私は自分を貞操な淑女だと錯覚し続けていられたでしょうに。
逆らうことをやめた私は、シェロの意のままに唇を捧げ、彼の動きに任せて全てを受け入れました。求めるままに腰を振り、淫らな言葉で陵辱をねだります。性器の名前をいえといわれて、正気のときなら絶対に口にしないような卑猥な俗語を連呼してしまうほど、そのときの私はシェロの言いなりでした。
私の秘裂を押し広げる男根が突き上げる度に壊される私の理性。快楽の波に耐えられなくなり、ついには爆発するような絶頂に何も分からなくなりました。全身が性器になったよう。白く濁った頭の中、私の最奥に熱い精を放たれてたのをぼんやりと感じていました。
「あ、熱い……。シェロの、とても……」
お腹の奥に広がる確かな温もりを感じながら、彼の胸に身をゆだねて、溶けていくようにまぶたを閉じます。いっそこのまま、シェロと解け合ってしまえたら素敵ですのに。
「ルヴィア? おーい、ルヴィア? 大丈夫か?」
「……シェロ。次はもう少し手加減して、……下さいませ」
今夜はこのまま眠ってしまおうと思いました。このまま朝を迎えれば身だしなみに苦労しそうですけど、体力の限界はとうに超えていましたから。シェロはまだまだ物足りなさそうにしてましたが、それは私をいじめ抜いたあなたが悪いのですわ。まだつけられたままの手錠と、お尻で震えっぱなしのバイブは、シェロが取り外して下さるでしょう。
―――それなのに、今日のシェロは私に眠ることすら許してくれませんでした。私を持ち上げて体勢をかえ、何をするのかと思えば次の瞬間、お尻を強く叩かれました。
「イタッ、な、なにを……!?」
眠気など吹き飛ばして余りある、強烈すぎる痛み。
「悪い。まだまだ足りない。ルヴィアが可愛いすぎて壊してしまいたい」
「っ! ダメですわっ、私、もう―――! きゃあぁっっ!」
「
なに? それで結局次の日の朝までぶっ続けだったわけ?」
「……昼過ぎまででした」
私の答えに大笑いするミス・トオサカ。彼女は妙にご機嫌で、そのお肌はやけにつるつるで、おまけに腰の辺りが充実してるようでした。どうやら私がご無沙汰してるのをいいことに、シェロと充実した日々を過ごしているようです。ちっとも羨ましくありませんけど。
あれから一週間ほど過ぎました。全て終わった後、全く反省の色がないシェロの態度に私はとうとう爆発し、荒々しい言葉で怒鳴り付けてしまったのです。そんな私の態度に思うところがあったのか、彼の方も意地を張っているらしく、あれから一切触れてきませんでした。
ですが、さすがに一週間も冷戦状態を続ければ少しは落ち着いてくるというものでして。なんだかんだいって私も感じてたのは事実ですし、シェロが謝るなら許してあげようかなと思っているのですが。
「私がそれとなく呼び掛けて流し目してみても、ご用でしょうかお嬢様、なんて冷たく返されますし、手すら握ってきませんし、それどころか仕事でもプライベートでもほとんど顔を合わせないほど徹底してますのよ。本当に頑固なんですから!」
おかげで欲求不満になってストレスがたまってしまっ―――、いえ、そんなこと一切ありません。シェロなんていてもいなくても変わらないんですから。
「だけど、士郎が折れるの待ってたらいつまで続くか分からないわよ。変な意地張らなけよればかったのに。気持ちよかったんでしょ?」
「で、ですけどっ! 胸は揉まれ過ぎて痛かったですし、腰は動かなくなりましたし、体中筋肉痛になりましたしっ! それにあ、あそこは、ヒリヒリして熱まで持っていたんですよ! 下の毛だって投影したカミソリで全部剃られてしまいましたし、挙げ句首輪と尻尾をつけられて深夜の廊下を散歩させられてそのまま応接間で3回も―――!」
あれは女として色々な意味で散々でした。ほら、ミス・トオサカだって引いています。確かに気持ちよくはありましたけど。……恥ずかしくて死にそうだったり、シェロを怨んで泣いたりしましたど、凄く感じてしまったのも確かでしたから。でも……。
「そ、それは流石にちょっと……」
「でしょう? 私の気持ち分かっていただけるでしょう?」
「ええ、わたしも同じことされたらと思うと、ね」
だからなんとしても今回はシェロの方から謝らせないといけないのです。そう、女の意地にかけて絶対にっ。そのためには多少のストレスや寂しさなど微々たる問題ですわ。
「まあ、わたしはこのままでも特に困らないけどね。むしろ毎日のように愛し合えて嬉しいかな」
「……羨ましくなんてありません」
「そう? 昨日なんて、あいつ昼間から甘えてくれちゃって、近所の公園の芝生の上で、膝枕してあげちゃったんだから……」
頬に手を当てていやんいやんと赤面するミス・トオサカ。恋する乙女のようで似合わないにもほどがあります。しかし私はついうっかり脳裏にその蜂蜜ワールドを再生してしまって―――。
「そ、そんなのちっともうら、羨ましくなんてありませんわっ!」
「またまた、無理しちゃって」
「無理してませんっ!」
「仲直りを助けてあげようか?」
「是非っ! ―――って違います。そんなの余計なお世話です。ほ、本当ですわっ! ほんとう、ですけど……」