ごくり、喉を鳴らす音が大きく響いた。久しぶりに帰って来た我が家。世界で最も安心できるその空間で、寝る前に一風呂浴びて部屋に戻って来たらこんな事態になるなんて誰が思おう? 目の前にはいるのはよく知る女の子。それでも彼女のこんな姿は知らない。知るはずも、ない。
「ルヴィアゼリッタ……」
喉が上手く動かない。ひとり灼熱の砂漠に迷い込んだのか。砂漠が招き入れたのが俺なのか。水が欲しい。躯が熱い。汗をかく機能は消失してしまったのかもしれない。熱は体内にこもり続ける。水が欲しい。
この熱を吐き出す方法は知っている。
それをしてはいけないとも知っている。
「ルヴィアゼリッタ……」
「シェロ……」
月影の中で単衣が揺れる。彼女にはなじみがないはずの服装。俺だってない。あんな着物、昔話の中だけの存在のはずだ。
透ける肌はほのかな桃色。曲線のラインは瑞々しくも熟れていた。微かにかすれた声が脳を削る。理性を駆逐して本能を呼び覚ます。いま、ひたすらに水が欲しい。あの果実の中には甘い蜜がつまっているのか。
いけない。それだけはしてはいけない。俺ではルヴィアゼリッタを不幸にすることしかできない。 かけらほど残った理性が叫ぶ。トレース、オン。神秘を起動して非常を駆逐しよう。
「シェロ。ふつつか者ですが……」
完璧な動作と震える言の葉で、ルヴィアゼリッタが頭を下げた。
それが、とどめだった。起動しかけた神秘は霧散し、費やされるべき魔力は体躯を灼熱。ああ、水が欲しい。なんだ。すぐ近くにあったじゃないか。水。それは素晴らしき液体。彼女の上気した顔を引き寄せて、そのふっくらとした唇にむさぼりついた。
たわわな果実がリズミカルに揺れる。 わたしの上で嬌態を晒す。しっとりとした膨らみの中には何が入っているのか。あの極上の手触りは何をもとにしているのか。男どもが魅了されるのもよく分かる。だって同性のわたしでさえ虜になったのだから。
その双丘の見事さに思わず嫉妬してしまう。わたしにはないものを持っている彼女。それが余りにも悔しかったので、わたしの身体の上で踊らされているルヴィアゼリッタの、その豊かな乳房にかじり付いた。
獣のような姿勢で士郎に攻められる姿は被虐的だ。思う存分泣かせてみたくなる。貫かれる度に啼き声を上げる。それが耳に心地よい。 快楽に翻弄される可愛らしさがいい。ちょっとした悪戯にも過敏なまでに反応してくれるのがいい。降り注ぐ汗と涙はアルコールよりも刺激的だ。羞恥で声を押し殺しているのがたまらない。それでも漏れる喘ぎ声に、自ら顔を真っ赤にしているのが反則的すぎる。もっと見たい。この甘美な時間をもっと感じたい。
ルヴィアゼリッタの頭を抱き寄せて、一言二言囁いた。別になんて事はない。自分の状況を確認させてあげただけだ。だと言うのに彼女は幼子のようにイヤイヤと首を振る。それだけならまだしも、あろうことかわたしの腕から逃げ出そうとした。生憎わたしはそれを見のがすほど寛容ではない。敏感に尖った膨らみの頂きを、強くひねった。
ひときわ甲高い悲鳴が士郎の欲望を刺激したようだ。彼の動きが更に激しくなる。擦りつけるように腰をまわす。さぞや強い快楽なのだろう。彼女は仰け反りながら必死に許しを乞う。もう限界、助けてくれと懇願する。
バカなルヴィアゼリッタ。そんな姿をみてわたし達が我慢できるはずもないのに。士郎と一緒にクスクスと笑いながら、わたしはありとあらゆる技工を駆使して胸を攻め続けた。
いい子だから壊れなさい、ルヴィアゼリッタ。溢れるほどの快楽で脳を灼き切ってあげるから。士郎と二人で、優しく、そして激しく。ずっと、ずっと。
ルヴィアゼリッタは困惑していた。自分はいつからこれほど淫乱になったのか。どうしていつまでも腰をふり続けているのか。このような姿、目の前の男にしか見せられないものではあったが、同時に彼にだけは見せたくなかった。
羞恥心はもう限界だった。体力だって残ってなかった。膝はとっくに笑っていたし、腰だってくだけていた。途切れることなく流し込まれる快楽に、理性は焼き切れる寸前だった。辛うじて意識を保っていられたのも奇跡でしかなかった。ただ、涙を流すことしかできなかった。
それでも、身体は魔力に飢えていた。彼女は今、本能のままに雄にまたがり、精をむさぼる雌に過ぎなかった。いや、彼等ですら今の彼女よりは上等だろう。獣達は己の体力の限界を知っているであろうから。
ルヴィアゼリッタは悔しかった。憎らしかった。魔力の枯渇程度に耐えられないこの身体が。それに抵抗もできずに泣き叫ぶだけの弱い自分が。全て分かっていると言いたげに頬を撫でる衛宮士郎という男が。それにあがなえず、甘えてしまう弱い自分が。――そしてなにより、このような目に遭わせた遠坂凛という女が。そんな彼女に負けてしまった弱い自分が。
ふと、一ヶ月前のことを思い出した。あのときの決闘ではルヴィアゼリッタが勝者だった。あの後の凛も同じような目に遭ったのだろうか。今考えると、そうだったのだろう。あれからしばらく、凛の様子がおかしかったのを覚えていた。
それではこれは彼女なりの復讐か。それなら受けてたとうと考える自分がいた。そう思うと少しだけ楽になった気がした。ただの気休めだと分かっていたけれど。
剛直がルヴィアゼリッタの最奥をいっそう強く突き上げた。激しい歓喜と苦痛とが、眩くばかりの激流となって彼女の肢体を引きさいた。ルヴィアゼリッタの内壁がひときわ強く収縮すると同時に、怒濤の魔力が液体となって彼女の内部を満たした。ひときわ大きい悲鳴とともに、ルヴィアゼリッタの背中が見事なアーチをえがいた。
ようやく、少しだけ落ち着いて身体の制御を取り戻したルヴィアゼリッタは、恥ずかしさをごまかすようにゆっくりと口付けを求めた。いまだ膣を押し広げる士郎の分身を引き抜くだけの力も残っていなかったが、彼の胸板で休めるのなら、そのままでもいい気がした。
しばらくの休みを経て、ルヴィアゼリッタはそっと囁いた。もう一度抱いて下さい、と。今度はゆっくりとした、ひたすらに甘い行為を求めた。うっすらと頬に紅を散らしてねだる彼女に士郎が抵抗できるはずもなかったのであるが、それはまた別のお話。
死後もまたこのように共にいられるのであれば、
私も守護者となったかいがあるというものでしょう。
放っておくと勝手にどこかに行ってしまうようなひどい人だけれど、
それでも私にとっては大切な男性なのです。
愛しい愛しい彼の分身を胸で包んであげると、
それはそれは幸せそうな顔をしてくれました。
くちゃくちゃと音が鳴る恥ずかしさには慣れることがありませんが、
閨の中で私が優位に立てる数少ないこの行為は、
昔から好んでしてあげたものでした。
胸が熱くなるような幸せを感じながら彼のものを愛撫していると、
ついに欲望の白濁をしたたかに撒き散らしてくれたのです。
その特徴的な香りの中で陶酔してしまうのは、私が淫らな女だからでしょうか?
ええ、それでもいいかもしれません。
事実、私は彼のためならいくらでも淫らになれますもの。
そして、私は大きく温かな手が愛しげに頬を撫でてくれるのを感じながら、
満たされた幸福に心を震わせておりました。
あのミス・トオサカがこんなにも可愛らしいなんて、
生前、ロンドンにいた頃は思っても見ませんでした。
あの頃はシェロと一緒になって私を虐めてばかりいましたが、
私の指で悶えるミス・トオサカを見ていると、
あのときの彼女の気持ちが分かるような気がします。
そのしなやかな身体を抱きかかえるように膝の中におさめ、
彼女の手を用いて自慰の如く虐めてみますと、
花園はたちまちとろとろとよだれを垂らしてしまいます。
はしたないですわねと耳もとで囁くのは、
むかし何度も彼女にうけた仕打ちです。
その効果は身にしみていますが、
フルフルと恥じらいに染まる肌を目にすると、
彼女のことをより一層愛しく、壊したくなるのです。
自分自身の手により身体を隅々までこねくりまわされて、
ミス・トオサカもすっかりその気になってしまったようでした。
しかしながらここで行かせてあげるほど、私の心は広くはありません。
後一歩の所でじらし続け、はしたない言葉で懇願させましょう。
むかし、彼女にとっては未来の出来事の復讐は、
それはそれは甘美なものになりそうです。