ルヴィア嬢短編劇場 ほのぼの その1

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目次

料理は愛情

 広い厨房の中で、士郎は一つの土鍋を見守っていた。彼が日本からわざわざ取り寄せた、一人前の小さな鍋である。この男が料理にかける情熱を示すものであるが、同時に屋敷の主がどれほど日本食を気に入ったかも自然と知られよう。

 中に抱いた粥をあやすように、鍋はことことと優しい音色を奏でていた。窓の外では小雨が謡っていた。士郎はその様子を暖かく見守りながら、火力を少しだけ調節した。

 料理は愛情、という言葉がある。場合によっては必ずしも真実とはいえないのだが、少なくとも今は信じて構わないようである。溢れんばかりに親愛のつまったこの病人食を食べれば、彼の雇い主もたちまち回復すると見て、間違いなかった。

 雇い主は女性である。士郎は彼女に仕えていることを密かに誇りとしていた。高貴さに彩られた豊かな髪と強い意志に光る深い色の瞳が、特に魅力を放っていた。その名を、ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトという。

 常に気高いルヴィアゼリッタに、士郎は憧れと尊敬を持って接していた。嫌みのない上品さを振りまくその人柄は、誰から見ても好ましいものであった。ごく一部の人物を相手にするときだけは、少々事情が異なるのであるが。

 その印象が、今日一日でがらりと変わった。病気は人の性格を変えるのか、病気が人の地を露出させるのか。士郎に断言することはできなかったが、何となく後者であると感じ取ってしまった。

 ベッドの中で熱にうなされていたのは、どこにでもいる少女に過ぎなかった。その余りの変貌ぶりに、士郎は一瞬の戸惑いを隠せなかった。頬はバラのように上気していた。ひどく妖艶な光景だった。

「シェロ……、どうか、どうか手を握っていて下さい」

 潤んだ瞳でそう願われて、士郎に断るすべなどあろうはずもなかった。結局、彼はつい先ほどまで、ルヴィアゼリッタの寝室に縛り付けられていた。士郎は自分の存在を求める彼女に、今までにない可愛らしさを感じてしまった。

 彼女が薬で寝入ってしまった後も、士郎は何度も赤面させられた。ルヴィアゼリッタが寝言でしきりに彼の名を呼ぶからである。その声が心臓に突き刺さる度に、彼はルヴィアゼリッタの唇を奪いたい衝動を、彼女を抱き締めたい欲望を、必死に押さえなければならなかった。

 少し前の出来事を思い出して、士郎は土鍋を前に赤面した。中でもおやすみなさいのキスを童女のように乞われたことが、一番強烈な記憶だった。願いをかなえた後、顔を真っ赤にして照れ笑いを浮かべた表情は、彼が生きている限り忘れないであろう。

 頭を振って余計な思考を叩き出し、もう一度土鍋と向かい合った。ルヴィアゼリッタに絶妙の状態で食べてもらうべく、料理人の思考回路が計算をはじめていた。粥の香りは上々だった。

 ゆっくりと昇る湯気に目を細めながら、士郎はルヴィアゼリッタのことを考えていた。あの弱さが彼女の本質の一つの側面だとすれば、それを守りたいと考える自分がいた。正義の味方を志望する青年は、今ここに、ほんの少しだけの寄り道を心に決めた。

士郎に耳掃除をされるお嬢様

 手にしたそれをあてがうと、ルヴィアゼリッタは微かに震えた。

「ルヴィア、恐い?」
「……はい。……その、初めて、ですから」

 椿のように頬を染めて、ルヴィアは俺を見上げる。いつになく幼い彼女と目が合った瞬間、途方もない罪悪感に襲われた。開きかけの蕾を手折るのか。あるいは花の精をけがすのか。それは、俺なんかには大それた行為ではないのか。

「なあ、やっぱりやめないか? きっと、俺なんかにさせると――」
「シェロ、それ以上言うと泣きますわよ? 私はあなたにして頂きたいのです。あなた以外の誰かに、こんな姿を晒すのは耐えられませんわ」

 恥じらいとともに、しかし力強く、ルヴィアは俺を見上げていた。さっきまで膝の上で震えていた小ウサギは、今や高貴な白鳥となっている。誰もが引き付けられてやまない、普段の魔術師としての彼女。その眼差しは、俺に確かに勇気をくれた。うなじを軽く撫で上げて、身体に一段と力を込める。潤んだ瞳がもう一度揺れた。

「優しく……、して下さい」
「大丈夫。力を抜いて」

 可憐なルヴィアには似合わない、長く無骨な棒を少しずつ挿入する。慎重でなければいけない。ゆっくりと少しずつ、なるべく刺激を与えないように。愛しい少女に苦痛など与えたくはないのだから。

 しかし、あまりにも慎重に行き過ぎたのだろうか。ようやく奥まで入った頃には、お互いにびっしょりと汗をかいていた。ルヴィアは、生きも絶え絶えで異物感に耐えている。俺は、手早く終わらせようと焦り、あろうことかどこかを強く引っ掻いてしまった。

「――――っ!」
「悪い。ルヴィア、痛かった?」
「……いえ。大丈夫です。う、動かして、下さい」

 自分の身体に異物を迎え入れるのは、一体どれほどの恐怖だろうか。意のままにならぬそれは、彼女の内壁をこそぎとるように動かされるのだ。たとえ彼女が望んだとは言え、そんな暴虐に健気に耐える少女の髪を梳きながら、せめて少しでも心地よさを知ってもらおうと、壁面を優しく擦り上げた。

「あ、シェロ。やっ、だめぇ!」

ルヴィアゼリッタ、果物を食べる

 柔らかな果肉に口付けた。恥じらうようにフルリと揺れる。心地よい感触、心地よい時間。味わえば誰もが虜になる、魔性の魅力がそこにあった。彼女、ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトも例外ではなかった。女性であっても、否、女性であるからこそ、その真価が身に染みるのだった。

 ふっくらとした膨らみは、甘い液体を内包しているのだろうか。あるいは豊穣な乳液か。彼女は、しっとりとした手触りを楽しみながら、取り留めのない思考に身を任せていた。心を炙る怠惰と愛しさの炎は、ジリジリと強くなっていった。

 細く長い指をもって、赤く染まったそれを強く摘むと、どこからともなく蜜があふれてきた。甘酸っぱく、熱く燃える、アルコールじみた味がする。トロリと流れるその液体は、ルヴィアゼリッタの身を快楽で震わせた。喉を潤し身体を焦がした。もはや、百年の美酒すらかなうべくもあるまい。

 ルヴィアゼリッタは、壊れかけた理性を脱ぎ捨てて、本能のままにかじりついた。羞恥に染まったかの如き、その恥じらいの中枢に。奥に秘められた柔らかい肉が、てらてらと光を放っていた。粘性のある液汁が、指に絡み滴り落ちる。瑞々しい内壁を彼女の舌が押し開き、無情にも更なる奥地を暴き出した。

 背徳感と征服欲に突き動かされ、ルヴィアゼリッタは容赦なく唇を動かす。もしも悲鳴を上げられたのなら、さぞや可憐に泣いたであろう。しかし、今はそんな権利すら与えられずに、一方的に玩ばれるのみであった。永遠を思わせる地獄の時間は、甘い香りに満たされていた。

癇癪の訳

 今朝、二人は揃って癇癪を起こした。昼を過ぎた今も仲良く寝室に閉じこもっている。原因は、……多分俺にあるんだろう。自覚はある、一応。しかし、だからといってあの二人が完璧に無罪というわけでもないのだが。

 例えばその髪。黒とオレンジの長い髪が、濡れた肢体に張り付く様は扇情的すぎる。

 例えばその肌。血管が透ける白い肌は、途方もなく清廉で嗜虐心を誘う。

 そして何よりその蜜壷。柔らかくとろけ、それでいてきつく締め付ける極上の快感。

 あれらを前にしては、いくら俺だって暴走してしまうのは当然ではないか。しかも昨日は二人一緒だった。我慢なんてできるはずがないじゃないか。そう、彼女達が魅力的すぎるのが悪いのだ。うん、多分。

 だから、である。たとえ昨夜あんな事やこんなことをしたとしても、普段なら絶対にやってくれないようなアレやソレを無理矢理やらせたとしても、挙げ句朝までずっと全力疾走して何度も失神させたとしても、それを俺だけのせいにするのはいささか酷だと思うのだがどうだろう。

 まあそれはいい。今はそんなことが問題なんじゃない。朝っぱらから家出ならぬ家入を敢行して下さってるお姫様二人をなんとかせねばならないのだから。

「おーい、いい加減にでてきたらどうだ?」

 鍵のかかった、しかもご丁寧に魔術で封印までされた扉をノックする。

「遠坂」
「……」
「ルヴィア」
「……」
「なあ、聞こえてるんだろ? せめて返事だけでもしてくれ」
「………………」

 応答なし。立てこもった銀行強盗じゃないんだから、そう意地を張らなくてもいいじゃないか。思わずため息がでてしまう。

「……まったく、二人とも昨日はあんなに素直だったくせに」
「――――――っ!」

 殴られた。グーで。なんでさ?

お嬢様。

あのですね、お嬢様。
退屈だから投影を見せてくれって、手品じゃないんですから。

微笑みが恐いです、お嬢様。
なんで遠坂と連絡を取っただけでそこまで睨まれなきゃならんのです。

理不尽です、お嬢様。
恋人とデートしたいから休暇を申請したのに、答えがガンド連射とはひどいと思うのですが。

疑問なんですが、お嬢様。
ちゃんとしたコックがいるのになんで私に夕食を作らせるんですか?

ダメです、お嬢様。
好き嫌いはいけないと叱った位で拗ねないで下さい。

ごまかされませんよ、お嬢様。
泣きまねなんてしてないで早くブロッコリーをお食べなさい。

はしたないですよ、お嬢様。
嫁入り前の女性が風呂上がりの姿を晒すのはどうかと思うんです。

私は執事です、お嬢様。
いくら大変だからって、御髪の手入れまで手伝わせないで下さい。

今さらですが、お嬢様。
お嬢様の寝室にあふれているぬいぐるみは見なかった事にするんですかそうですか。

見覚えがあるんですが、お嬢様。
このやけにボロボロなあかい女の子のぬいぐるみはひょっとしてひょっとしますか?

どうして慌てるんですか、お嬢様。
枕の下にもぬいぐるみが一体紛れ込んでるようですが。ほらその赤い髪の。

しっかりして下さい、お嬢様。
眠れないから一緒にいてってあなた歳はいくつですか。

………………わかったよ、ルヴィア。
そんな、手を握ってなくても、ずっといてあげるから。

ところで、お嬢様。
私が男だという事を忘れてやがりますかコンチクショウ。


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