なんで俺を住ませてもいいと思ったんだ?
出された夕食を前に、元親は、ごく当たり前の問いかけを
当たり前に女にした。
穴から落ちてきた不審人物を、自宅に住まわせるような選択は、元親はしない。
例えばそれが無害そうな人間(女子供に限らず)ならば、どこか住み込みの仕事を
紹介してやったりするかもしれないが。
ともかく、そう問いかけると女はきょとんとした顔をして
それからこちらの腕を見て、足を見て、それから腹を見て顔を見た。
「………そういうのは、選択肢のある人の意見だよ」
「選択肢?」
「そう。だって長曾我部さんあれだよ。私のことなんて簡単に殺せるでしょ」
なんでもないような顔をして、女はこちらの腕を指差す。
確かに、女の細首ぐらいは、簡単に捩じ切れるだろうが。
だから、暴力が行われる前に譲歩したのだろうか。
俺はそんなことしねぇよ。と思っていると、次に女はどうでもよさそうな顔をして
「あと、あーなんだおかえりは良かった」
「……は?」
「酔っ払ってたけど、記憶はある。
あれで長曾我部さんマジ良い人。生き神様。というのが垣間見えたので。
まぁいいかなと」
照れ隠しなのか、それとも気になったのか。
爪の甘皮を、どうでもよさそうな顔で剥きながら女が言う。
その表情と言葉の感情に、警戒する必要もないなと元親はようやく箸を取った。