義弟ができて、便利だなぁと思ったのは
2Pプレイ可能なアクションゲームをやる時である。


「あ、慶次、ごめん。ミッションこなして」
「………ごめん、デフォルト姉ちゃん、迷子になった。俺どこにいんの?」
「……………L2切り替え、ビーコンに従い進んで下さい。
ミッション現場につきます」
「……L2L2…。あ、地図切り替わった。すげぇ」
ぱっと二分割されたテレビ画面の右上に出る地図が
切り替わったのに感嘆の声を上げる慶次に、私は悲痛な顔で
慶次の腕に、自分の肩をぶつける。
「………慶次、慶ちゃん、さっき、私たち演舞クリアしたよね。
一緒にしたよね?」
「一緒に阿国の章クリアしたじゃん、何言ってんのデフォルト姉ちゃ」
「それ、私のセリフだからね、慶次!
説明書渡したよね、読んだ?」
「え、説明書とか、読まなくてもニュアンスでどうにかなるかなって思って」
とどのつまり読んでいないということか。
今回、忙しなく申し渡されるミッションを的確にクリアしなければ
すぐさま敗北してしまうそのゲームにおいて
相方が機能を理解していないというのは、致命的である。
私は黙ってスタートボタンを押し、ゲームメニューを開いて
一旦ゲームの進行を止めた。
そうして、慶次に説明書を投げつけ、読めと低い声で恫喝をしたのである。


………義弟ができて…便利。
便利…便利?
…便利、なような、ストレスがたまるような。


どうにもあれな義弟が懸命に説明書を読んでいるのを見ながら
私はぼんやりとポーズさせたテレビ画面を見つめた。


…案外一人でやった方が、ストレスフリーかも、これ。