二度目の破瓜は一度目よりも痛かった。
現代では良い歳をしていたから、経験がないわけではなかったけれども。
腹部を刀で貫かれるのとも、腕を斬られるのともまた違う痛み。
それを耐えようと、無意識に男の背中に爪をたてかけ
義子はぎゅっと拳を握ってそれを耐えた。
そうする気にはなれなかったからだ。
なんとなくの、意地というか。
さして深い理由はない。
そうして、乱暴に体を貪られ、揺すられ、対して弄られもせず行為は終わり
義子は久しぶりに現代のことを思い出して
ダッチワイフのようだったな、とどうでも良く思った。




その後、切っ掛けを得た官兵衛は
感情の発散のさせどころを、仕事から義子に幾分か切り替えた。
相変わらず仕事しかしないのは直らないが、
睡眠も食事も削ってというほどではない。
その代わり夜になれば、ただ思うままに嬲られる。
官兵衛との行為は、性交、交わりなどというものではなかった。
あれはただ、体を使って行き場のない感情をどこぞに捨てているだけだ。
義子は自分の体を使われているにも関わらず
そう、冷静に思う。
前戯もなにもなしにつっこまれ、揺すられかけられるだけの交わりを
毎夜毎夜繰り返されて、こうも冷静なのは義子が自ら選んだことだからである。
さて、ではなぜ体を与えて官兵衛を止めるまでのことを、彼女がしたのか。
偽りとはいえ、夫婦だからか。
長年の友だからか。
半兵衛と、元就が死んでああなったからか。
さぁ。
ただそれだけならば、許したかどうかは、義子自身にも分からなかった。
結局のところ、義子は官兵衛を失いたくはなかった。
彼女だとて、寂しい。
義元は既に没し、氏康もすでに無く、甲斐姫は嫁いで簡単には会えなくなり
氏康と甲斐姫が北条から居なくなってから、風魔もいずこかへと消えてしまった。
そうして、半兵衛・元就は、もうこの世には居ない。
氏真は存命だが、彼の子が生まれて以来、家臣たちが
義子と氏真が仲を良くするのに、良い顔をしないので
以前のようには会っていない。
だから、結局のところ官兵衛にもう義子しか残っていないように
義子にも官兵衛しか残っていないのである。
寂しい、だからあなたまで居なくならないで欲しい、か。
今夜とて、毎夜毎夜のように貫かれ
痛いという声も、なにも無視されたまま乱暴に揺すられて。
その後今日はもう良いのか、ずるりと男根が抜かれるのに
声が漏れそうになるのを抑えながら
義子は自分と官兵衛の愚かしさを、どうしようもないなと評した。