1.林檎パイ(幸村姉)
2.名前の話(幸村姉+佐助)
3.からかい(今川娘+無双半兵衛)
4.拝啓、混合編お試しバージョン











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1.林檎パイ(幸村姉)




唇を寄せると、年上の女(ひと)は、顔をほんのりと赤く染めた。
その表情が可愛らしくて、思わずかわゆいと呟けば
かっと彼女の顔が赤くなる。
久子殿、かわゆい」
「………あの、止めてください、それは」
たじろぎ、身をよじらせて逃げようとする妻の肩をつかみ
幸村は再度彼女へと口づけをした。
それにますます顔を赤くする彼女は、林檎に似ている。
だから、林檎のパイが食べたいと呟けば
彼女は苦笑しながら材料さえ手に入れば作るんですけどねと
困ったようにこちらの頭を撫でて優しく笑った。









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2.名前の話(幸村姉+佐助)



幸村さん今日はいい天気ですねぇ。
そうでござるな、久子殿。

そういう会話だったのが

幸村さん、今日も良い天気ですねぇ。
そうだな、久子殿。

で。

幸村さん、今日は雨ですね。
そうだな、久子

に最終的になったわけだ。

段々と気安くなる主に比べて、その奥方ときたら
喋り方が砕ける様子はない。
けれども、それでいいのかとも佐助は思う。
後ろ盾のない彼女が、気安く主に接すれば
口さがないものが騒ぎ立てることもあるだろう。
彼女には出来るだけ傷つかないで欲しいのだ。
思いながら、佐助はぼんやりと主と奥方を見つめて。
そうして主と奥方は、佐助に気がつくと
パッと顔を明るくして、彼を手招く。
その表情に溜まらない幸せを感じて、佐助はそれを隠すために
わざと彼らに向かい、苦く笑った。








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3.からかい(今川娘+無双半兵衛)





つぅっと、少女の背中を指でなぞってみると、ひゃんっという可愛らしい声が少女から漏れた。
「…………えぇと」
「…………………」
無言で義子が振り返り、こちらをねめつけてくる。
けれどその耳たぶは赤く、羞恥に震えているその様は
半兵衛には可愛く思えた。
ので、
「今の可愛かったよ義子様」
「っ!半兵衛殿っあなた、もう…どうして…」
怒ろうと思っていだろうに、恥ずかしいのかふるふると震えるばかりの少女は
微妙に虐めたくなる。
可愛いねと、もう一度耳元で囁いてやると
彼女はきっとこちらを睨んで
「戯ればかりしていると、さぼっている場所を余さず
官兵衛殿に言いつけますから!」
可愛くないことを言って、半兵衛の帽子を思い切り下げて去っていった。
その切り返しの可愛く無さは、全く義子様だと思いつつ
半兵衛は彼女の少女らしい所を目にしたことで、ふくくと意地の悪い笑い声を洩らしたのだった。









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4.拝啓、混合編お試しバージョン


あらすじ
世界は突然に遠呂智という化け物によって混ぜ合わされた。
それだけならまだ良いものの、遠呂智は圧倒的な武力を持って
混乱する無双日本、三国、婆娑羅日本を制圧。
各勢力は大方が遠呂智の傘下に下り、下らなかった者たちは打倒遠呂智を掲げ活動を行うのだった。

ただ、遠呂智が世界を制圧したということは、彼が政りごとを取り行わなければならないということである。
頂点に立つとはそういうことだ。
しかし、彼にその気はなく、それを重々承知していながらわざと遠呂智でなく
その腹心の部下である妲己相手に、しつこくあてこすり・皮肉り・嘲笑った
某3でもさった三成や、後ろの単語に比重が置かれたファザコン王子及び白い南瓜
ついでに某顔色が悪い方の官兵衛に、命知らずで空気読まない誰かの兄上
大人しく従っているように見えながらも、侮蔑・嘲笑を自重しないオクラっぽい彼、等々の功績により
幾らかの将が(一見)適当に集められ、政治代行の任を命じられたのであった。



以上、あらすじ終わり





政治代行を命じられた将達の顔合わせも終わり、さてどうしようかとなった。
そこで普通ならば本来の任である政治代行の話をするべきだったのだが、自然と皆それを避け。
代わりに話題に上ったのは、遠呂智との争いによって出た各々の国での被害についてであった。
現在集まっている将たちの中にも、ただで済んでおらぬ者もいるし
兵の被害も相当な物にのぼっている。
中でもとりわけ、最初の方に攻められた毛利・安芸は見せしめに、ということだったのか
その被害も著しく、散々たる有様だったのだが、それについて同情の視線を送られた毛利元就は
気にいらなさそうに片眉を上げ

「兵など所詮捨て駒よ。最終の目的が果たせるのならばそれで良かろう」

…毛利元就がそう言った途端に起きたのは、一人の男の爆笑だった。
「あはははははは!!こ、これ!!俺、元就公はこういう人だと思ってたんだよ!!
これ、これこれ!!あはははははは!!」
「酷いな、半兵衛…私はこのような外道は、昔から言ってはいないよ」
「…半兵衛の言は、二段でけなす卿ほどではない」
言いきったのは、黒田官兵衛。
その視線の先に居るのは、先ほど発言したのと同じく、毛利元就である。
遠呂智と言う名の化け物によって、世界が混ざってしまったがため
似て非なる近しい世界の同一人物が、同じ場に存在しているという珍事が
この世界では起こっている。
目の前の光景が、まさにそれだと思いながら、義子は横に居る義兄の腹をつついた。
「…兄上、半兵衛殿が面白そうにしているのは良いのですが
同じ部屋に同じ安芸の大名たる毛利元就公が二人もいるのは、少し分かりにくいかと思います」
「それは、思うけどねぇ。いいのでないかな、面倒だし」
さらりと答えた義兄の返答は、常となんら変わりない。
この事態に至ってもこれなのだから、この人のこの性格は死んでも直らないなと
諦念を抱きつつ、義子はぱんぱんと手を叩いて、皆の注目を集める。
「すいませんが、一つご提案を。
魏・呉・蜀の三国の方はともかくとして
重なり合った我らの日の本は、二つ同時に世界に存在することとなりました。
それにともない、異なる同一人物が同時に存在するという珍事の発生が起こり
例えば、今であるなら、毛利元就公と呼んでも、両人どちらを指すのか分からない。
そのような事態であることを考え、私はこの場で、戦場にて強さを讃える時の単語
無双者、婆娑羅者を名前の前につけることをご提案いたします。
いかがでしょうか」
くるりと見渡して問えば、場に居る者は皆、それぞれそうだな、という顔をして頷いていた。
遠呂智の城で、自分の意思かどうかはさておき、ひとまず遠呂智に従うという選択をした幾名かで
寄り集まって開いた会議だが、この分だと、議長は務めた方が良いのだろうか。
収拾のつかぬ顔ぶれに、義子は内心ため息をつきたい気分であった。
この場に居るのは、まず婆娑羅者の毛利元就。先ほど兵を捨て駒扱いした彼は、酷薄そうな表情をして
椅子にふんぞり返っている。…性格は、見たままそうだ。
次にその隣に居るのは、婆娑羅者の竹中半兵衛。
秀麗な顔を仮面で隠した彼は、義子と目が合うと、微かに微笑んだ。
あぁ、こいつも油断ならなそう。
足元をすくわれないよう注意したいと、その表情に義子は思う。
その他については、無双者の竹中半兵衛、黒田官兵衛、毛利元就。
そして義兄氏真に、義子の計七名が、この部屋で円卓を囲んでいるのだが。
さて、その目的はといえば、当座の国土の運営をどうするかである。
本来ならば、制圧した遠呂智がやるべき事柄であるが、彼にそのような意思は無い。
「まったく、治める気もないのなら、滅ぼさなければ良いでしょうに」
「仕方がないね、遠呂智にその意思がないのだから。面倒だけれども。
……義子、よしなに頼んだよ」
仕方がないねと言いながら、氏真は席を立ってじゃあ、と義子に片手を上げて部屋を出ていく。
……おそらく、昼寝でもするつもりなのだろう。
あの人は…。
自分の仕事がない時には、とことんまでさぼりたがるのだから。
呆れた気分で机に肘をついて指を組み合わせると、婆娑羅者の毛利と目が合った。
「貴様、あれを許すか」
「許すも何も、兄上はああだから、兄上なのです。
兄上が面倒くさいと言わなくなったら、世界がひっくり…がえっても駄目だったからには
打つ手がありませぬ」
世界がひっくり返ったらと言おうとして、現状がまさにそれであることに気がついた義子
ふっと哀愁の混じった笑いを浮かべて、机に視線を落とした。
別に、甘やかしているわけじゃなくて、あの人、人の話、聞かないから。
「…別に、婆娑羅者の毛利元就公。あなたがいって、兄上を連れてきてくださっても構わないのですよ。
面倒の前には死も厭わぬあの人を連れてこられるというのならね…!!」
「…そんなに重たい話だったかい、これ」
やれるもんならやってみたらいいわ!という気分で義子が机をたたくと
婆娑羅者の竹中が呆れ混じりの突っ込みを入れてくれる。
その何も知らぬ者たちの反応に、これ、新鮮だなぁと思いつつ、こほんと義子は咳払いをして場をごまかす。
「まぁ、兄上については、どうせおっても役に立たぬので放っておくとして。
此度集まったのは、内政について話し合わなければならぬが故のことです。
残念ながら、残党討伐部隊に属する方々は、妲己に所用を申しつけられ
このような会議には参加できぬような忙しさで在るということ。
かつ、妲己たち妖怪は国を治めることには興味がないという理由にて
私たちに、内政が一任されたわけです、けれ、ども!」
「ども、だよねぇ。俺たちに任されてもっていうか、下手に動くと後が怖いよーこれ」
あははーと笑いながらい言う無双者の半兵衛に、一同揃って頷く。
…遠呂智は全ての国、全ての地域、なんら例外なく襲ったため
現在遠呂智の支配地域は、この大陸全土にわたる。
そうしたならば、無双者の日の本、中の中国、婆娑羅者の日の本全てが
遠呂智の手の中にあるということだ。
その内政をするということは、本来自分が治めるべきでない地域に口出しをするということ。
…確実に、後で文句が出る。
出ないわけがない。
やりたくねー。
という気持ちで、この場に居る人間の心が一つとなった。
「………提案します」
「なんだ、義子姫」
「…我ら日の本組だけでやってもらちあきません。
生贄として、中の魏・呉・蜀の人間を調達する必要があるかと思われます。
話は、またその後かと」
「…………そうだね、うん。それはそうだ………。……言うなら妲己かな?」
「妲己であろうな」
無双者の元就に、婆娑羅者の毛利が頷く。
偉そうな態度で頷く彼に、年嵩の元就は微妙そうな顔をしたが
これも自分であることを思い出したのか、諦めた態度ではぁとため息をつく。
その表情を見ながら、義子は自分が二人いるのは大変そうだなぁと暢気に物思う。
けれど、そうやっていつまでもいるわけにはいかない。
義子主導のもと、とりあえずの散会が言い渡され
そうして一同は、一旦散らばったのだった。