19・それぞれの旅立ち

 

岸には船が一艘なくなっておりました。今やレゴラスとギムリとアラゴルンのみとなった旅の仲間はフロドがサムを置いて行く事ができなかったと悟りました。残された3人はまずボロミアを葬ってやろうとしました。一艘の小船に3人はマントを拡げ、その上に友の亡骸を乗せ、かれの最後の戦いの戦利品をその上に積みました。かれのマントは折りたたんで頭の下にしかれました。綺麗な長髪は梳られて、両肩にかかるように形を整えられました。その腰にはロスロリアンの金のベルトが、かたわらには兜が、膝の上には最後の戦いで割れた角笛と、剣の柄と折れた刃とが置かれました。3人はゆっくりと河へ友を運んで行きました。亡骸を乗せた船はゆっくりと岸を離れ、みるみる遠ざかって、黄金色の光に浮かぶ点となり、やがてたちまち姿を消してしまいました。ラウロスは変わることなく物悲しげに轟々と音をたてていました。かれの勇姿はもう二度とミナス・ティリスにみられることはないのです。しかし大河はデネソールの息子ボロミアを受け取ったのでした。そして言い伝えによると、かれの船はアンドゥインのたくさんの河口を過ぎて、ある夜星空のもと、大海へ放たれていったといいます。

そしてレゴラス、ギムリ、アラゴルンは可能性のある限り、さらわれた仲間を助けようと身一つになり出発したのでした。

 フロドとサムは林を通り抜け、岩を登った高みに来て行く先を見下ろしていました。足元には黒い岩だけの勾配が続き、その山のはるか彼方には滅びの山を見ることができたのでした。フロドとサムはその場で立ち止まりました。フロドの瞳には何ともいえぬ色がただよっていました。
「モルドール。」
フロドは独り言のように言いました。
「あとのみんなは大丈夫だろうか。」
サムがフロドの後ろから驚かせないようにそっと答えました。
「馳夫さんが面倒をみてくれると思いますだよ。」
「もう二度とみんなには会えないだろう。」
しかしフロドは瞳の色を変えずにそう言いました。静かに、でも悲しげな声でした。
「だけど会えるかもしれませんだ、フロドの旦那。いつか。」
フロドはサムの言葉を聴いてはっとしました。そして苦しくなるような微笑を浮かべてサムを振り返って見つめました。
「サム、わたしたちは行くことにしよう。一緒においで!それにサム、」
フロドは言葉を切ってサムに向き直り、こう言いました。
「サム、お前がいてくれて嬉しいよ。」
 

 こうしてサムとフロドは旅立ちました。絶望という名の目的地に行くのです。そして二人はエミン・ムイルの灰色の山々を越え、影の国に降りていく道を求めて歩き出しました。

「The Two Hobbits 2」へ続く。