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パイプ草
「フロド!フロド!おはよう!今日はいい天気だよ!さぁ!こんな部屋にいないで出ておいで!」
ピピンがそう叫んでフロドの部屋に入ってきました。後からメリーもにやにやしながら入ってきました。フロドはとっくに着替え終わり、棚の上のパイプに手を伸ばしているところでした。
「なーんだ、もう着替えちゃったのか。つまんないや。」
ピピンがちょっと(実に)残念そうに言いました。しかしどこからともなく突き刺さる冷たい視線を感じてきょろきょろしました。
「なんだ、サムか!」
「なんだとは何ですだか、ピピンの旦那!フロドの旦那の着替えをのぞこうったって、このサムが許さねえだよ!」
「まぁまぁ、サム。ピピンもメリーもそんな事しないよ。」
フロドは少し笑ってそう言いました。サムは主人に口出ししたい気持ちをぐっとこらえて黙りました。内心では大いに疑わしいと思っていましたけれど。不審な目つきでトゥックとブランディバックの坊ちゃんを見ているサムを横目に、メリーは何事もなかったかのようにぺらぺらしゃべりはじめました。
「そうさ、サム。勘ぐり過ぎさ!僕たちはただ、フロドのとこにパイプでも吸いに来ただけなんだから。確かいとこのフロドさんは、寝室に上等のパイプ草を隠し持っているとか。ねえ、フロド。」
「もうばれていたのかい?困ったブランディバックの若旦那だな。そうさ、昨日ビルボが手に入れた最上品を少し分けてもらったんだよ。そこまで分かっているならしょうがないか。さあ、居間へ行って待っているんだ。」
フロドはそう言ってメリーとピピンをとりあえず寝室から追い出すことができました。
「さあ、サムもおいで。今回の葉は、とびっきりの上物だよ。お前の分もたっぷりあるからね。」
フロドは窓枠にひじをのせて、なんとなくぶーたれているサムにそう言いました。
「ほら、そんな顔しないで。ね!」
フロドはそう言ってサムの方へ足を踏み出しました。そしてサムのおでこに小さなキスを落としました。
「待ってるよ。」
「・・・・へぇ・・・」
サムには、もう何も言えませんでした。
その頃メリーとピピンはビルボの書斎の前を通り過ぎて、居心地のいい居間に入ろうとしていました。
「メリー!きみ何でそんなこと知ってたんだい?」
「なんのことさ。」
「パイプ草だよ。聞けば昨日手に入れたばっかりだと言うじゃないか。すごいなぁ、メリーは!さすが♪」
そのピピンの言葉を聞きながら、メリーはいつもフロドが勧めてくれる小さくて座りごこちの良いソファーに腰掛けました。その顔はなんとなくにやにやしていました。
「何言ってるんだいピピン。あんなの口からでまかせに決まってるじゃないか。しかし本当だとはね!ふふ、得したね。」
ピピンはしばらく呆然として口をぱくぱくさせていました。しかし数秒後にはすっかりもとどうりになり、にやっと笑ってメリーの隣に腰掛けました。
「それでこそきみだ!」
そうして二人はフロドを待つことにしました。
続く。
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