16 おふろタイム

 

 お風呂場に入ると、そこにはもう、もくもくと湯気のたったバスタブが用意されていました。いつも使っているものだけでは4人には足りないはずでした。しかしどこから引っ張り出してきたのか、かなり古い型の大きなバスタブも、小さめのもありました。袋小路屋敷のお風呂場はかなり広いはずですが、それでもさすがに4つも置くと、そこはなんだかプディングをぎゅうぎゅうに詰め込んだかまどの中のようでした。
「なんだかおかしいねぇ。」
フロドがくすくす笑って言いました。
「私が入ってるバスタブのすぐ前にも両横にもバスタブがあって、そこにホビットが一人ずつ入っているなんて。」
「でもなんだか楽しいですだ。」
いつもピピンが言うようなせりふをサムが口に出しました。ピピンが何かいいかけましたが、フロドのにっこりとして整った笑顔に黙らされてしまいました。
「そうだね、とても楽しいよ。お前とお風呂に入るなんて一体どれくらいぶりだろう。」
「旦那ぁ・・・」
照れたようにエヘヘと笑うサムに、さすがにむっときたらしく、メリーはつっ込みを入れることにしました。
「わたしたちもいるってこと、忘れないでくださいよ、フロド。」
「そうだ!まったくだ。」
「おやおや、心の狭いホビットたちだねえ。仕方ない。今度は二人で入ろうね。」
語尾にハートでもついていそうな勢いの、今日も無敵なフロドでした。

続く。