見晴らし

 

 サムがよいっしょっと掛け声をかけて、さいごの枝を登ると、そこにはもうすっかりくつろいだ感じの3人のホビットがいました。その大きな木に自然にできた小さなうろにパイプの道具を置いて、半分寝転がるように枝に腰掛けていました。
「サム、さあここへおいで。お前のパイプ草もあるからね。」
そう言ってフロドは登ってきたサムに向かって微笑んで見せました。しかしそれに答えたのはピピンぼっちゃんでした。
「わあい!僕たちにもくださいよ!ご自慢のパイプ草とやらを!」
「こら、だめだよピピン!君はあと!」
どうした訳か、フロドはそう言ってピピンが今にも膝に飛び乗ってきそうな様子をぴしゃりと言葉で押えました。むー、とふくれたピピンと、苦笑いするメリーを横目に、フロドはいたって平気な顔で言いました。
「このパイプはもともとわたしとサムのものなんだよ?だからサムが先さ!君たちはあと!分かったね?さあ、サムおいで。」
サムはこの主人のやや強引な手を、ほんの少しくすぐったく感じましたが、嬉しさがそれに勝ったようでした。ごそごそとフロドの隣にやってきて、フロドにパイプを詰めてもらいました。そうしてやっとその後に、メリーもピピンも、そしてフロドもパイプにありつくことができました。
「ああ、いい草ですね。本当に。」
メリーが満足そうにそう言いました。
「そうだろ?この夏一番の出来だって、こっそりもらったものだったんだけどね。」
フロドはちょっと含み笑うようにそう言いました。やっぱり独り占めはだめみたいだ。パイプ草もサムも。フロドは心の中でそんなことを思ってまたくすっと笑いました。
 

「それよりも、見てご覧よ!ホビット庄のなんてきれいなことか!」
フロドはそう言って、皆の視線を下に向けさせました。するとどうでしょう。その木の上から見るホビット庄は、緑にあふれ、とても眩しく見えました。何十と種類のある緑色と、植えたばかりの苗の黄色に近いやわらかい色、道に敷かれた砂利の茶色いような色が目に飛び込んできました。そこに、このいい天気に輝くような白いシーツやら洗濯物が、あちこちにはためいています。遠くに見える緑龍館の屋根の鮮やかな色。その間を行き来する小さなホビットたちの姿。それらは全てある調和を保っていて、ためいきが出るほど綺麗な眺めなのでした。これこそ大地を愛するホビットの象徴となる景色なのでした。

続く