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こどもたち
その昼食は実にすばらしいものでした。サムが一人でかかえきれないほどの大きなバスケットにいっぱいに詰め込まれたおいしいお弁当は瞬く間に消えてゆきました。さいごのエッグノックを一飲みにしてパンのかけらを指からぺろっと食べ、それで全ておしまいでした。
「ふうー!」
フロドもサムもメリーもピピンも満足のため息をつきました。
「ああー!おいしかった!やっぱりこういう気持ちのいいところで食べるといつもの料理も格別においしいよね。あ、もちろんサムの料理は最高だって分かってるさ。」
ピピンがとても楽しそうにそう言いました。フロドも全くそのとおりだと思ったのでにこにこしながらうんうん、とうなずきました。
「それにしても旦那がた、この花たちはとてもいいにおいがしますね。と言ってもなんだか珍しいにおいですだ。すうっとするというか、なんだか身体にもよさそうな感じがしますだ。」
「そう言えばそうだね、サムや。」
フロドはここではじめて気がついたようにそう言いました。
「なんだか薬湯に入っているみたいないい気分だ。」
そう言ったものの、それ以上何だとは考えませんでした。しかしメリーはちょっと自分で見つけておきながら、サムの言葉を聞いて不思議に思ったのか、ぼそっと言いました。
「でもどうしてこんな一つの種類だけこんなに密生して生えてるんだろ。まあいいや。」
というわけで、ちょっと気にはかかりますが、花の話題をやめて、のんびり昼寝でもしようかと思ったその時でした。
『キャン キャン クゥー』
なんだか可愛らしい声が聞こえてきました。
「あれ?犬だよ!かーわいいー!」
ピピンが真っ白い花をかきわけて声のする方へ近づいていきました。みんなもその後からついていきます。するとそこには果たして、ピピンの言うとおり、花に負けないくらい真っ白な犬のこどもたちが何匹も座っていたのでした。
続く。
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