The Two Hobbits 1

〜序章〜

 

 これはフロドとサムワイズの信頼と愛情の物語である。

 これは一つの指輪をめぐる旅中にフロドが残した手記であり、旅の後、サムワイズの手によって物語として完成されたものである。赤表紙本と共に製作されたにもかかわらず、一度も発表される事なくギャムジー家にずっと保存されてきた。そんなこの本をここで刊行したいと思う。原本は既になく、サムワイズが灰色港を指して旅立った後、ギャムジー家において密かに作られた最初の写本を基とする。数部作られたギャムジー家の写本がホビット庄を出、そして失われ、そのかわり多くの写本の写しが作られた。それらの写しは後代に省略され多くの部分が失われ、同一の文章はないと言う。なお、ビルボ・フロド・サムワイズによってまとめられた赤表紙本、並びに「指輪物語(指輪の王)」と時を同じくする場面において別の言葉、異なる描写であるのはひとえにこれがフロドの手記であると言う点によるものである。赤表紙本が指輪をめぐる歴史の客観的描写であるならば、これはフロドとサムワイズの内面的な記録であり、また二人の叙情詩なのである。この一連の出来事を自ら記憶している最後の一人がいなくなったのはいつのことであろうか、その記録はない。

「ホビット庄」に続く。