13 談笑

 

 やっと犬とマゴットさんの声が聞こえなくなったのは、とにかくめくらめっぽうに逃げ込んだ森の中でした。
「ふうー、やっと撒けたかな。」
ピピンがそんな手馴れたセリフを口に出しました。
「まさかね、あそこが誇り高きマゴット氏の薬草園だとは。」
フロドも笑ってそう言いました。
「全く困ったもんですだ。そうならそうと分かっていりゃ、おら決していかねえのによ。どこのブランディバックがつれてったんだか。」
まだぶちぶちと文句を言うサムに全く気がついているのか、いないのか、メリーは
「あの薬草はなんて名前なんだろ。後でうちかピピンの穴で調べてみようかな。」
そんなことを言っていました。メリーは後に本草学の本を書きますが、もうこんな頃から薬草やなんかに興味を持っていたようでした。それはまた別のお話。ここでやっと4人は談笑する気持ちの余裕ができました。ところが、一番先にもっと困った状況に気がついたのはフロドでした。
「あれ?ここはどこだろう?」
 

 まさか、このベタな展開はどうかと思いますが、なんと4人はこの住みなれたホビット庄内で、今いるところが分からなくなってしまいました。しかしおおよその検討はついています。もと来た道から走ってもまだ森の中、ということは、北の方へ来てしまったに決まっています。とにかくお日様の照っているうちに南に行けばよいということです。それならばと、4人はとにかくてぶらで(お弁当の残りだとか、それを入れてあったバスケットだとかは、あのまま畑に置き忘れてしまいました。しかし取りに帰るような大胆なことはさすがのメリーにもできませんでした。と言っても、くいつきの夕ご飯になるような量は残っていませんが。)ぽてぽてと思い思いにしゃべったり笑い合ったりしながら歩き始めました。

続く。