17・ボロミアの死
フロドが必死で丘を駆け下っており、サムが必死にフロドを探している時、メリーとピピンは木陰で近づいてくるオークたちから隠れようとしていました。はっとメリーがフロドの姿をとらえました。
「こっちだよ!フロド!隠れて!」
ピピンが叫びましたがフロドは動こうとしませんでした。フロドは二人に向かって頭を振って見せたのです。メリーはフロドがしようとしていることが分かったのです。
「メリー、フロドは何をやってるんだ。」
ピピンはびっくりして言いました。
「かれは去ろうとしているんだ・・・」
「嫌だ!フロド!」
そう言ってメリーがピピンを抑える暇もなく、ピピンは茂みから出てしまいました。オークたちがこちらに向かってきました!
「逃げろ!フロド!行け!」
メリーはそう言ってオークに向き直りました。
「おい!そこのやつ!こっちだこっちだ!」
ピピンもようやく分かったようでした。自分たちはフロドのために今何ができるのか、ピピンもオークに向かって大きく手を振りました。フロドは逃げる事ができ、オークは二人の方へ向かってきました!
「うまくいった!」
「そうとも!逃げろ!」
しかしすぐに追いつかれ、逃げ場がすぐになくなりました。
その時です!ボロミアが二人とオークの間に立ちはだかりました。メリーとピピンに逃げるようボロミアは叫びましたが、二人ともどうしたらいいのか分かりませんでした。集まってくるオークたちの数はますます増えるばかりでボロミアひとりでどうにかなるものではありませんでした。ボロミアは、いつも持っていたゴンドールの執政家に伝わる角笛を大きく吹き鳴らしました。しかしかれの故郷には遠すぎました。それに気がついたのはサルマンのオークとウルク=ハイと、それにそれぞれ戦っている数少ない旅の仲間だけでした。一本、二本とウルク=ハイの穢れた矢がボロミアに刺さりました。もう立てないはずですが、ボロミアはまた立ち上がり、向かっていったのです。3本目の矢が刺さり、ボロミアが膝まで崩れ落ちた時、メリーとピピンの覚悟も決まりました。もはやかれらはただの怯えたホビットではありませんでした。しかしボロミアの目の前で軽々とさらわれてしまったのでした。
アラゴルンがボロミアの側に駆けつけた時、既にオークの姿はなく、たった一人サルマンのウルク=ハイが最後の矢をボロミアに射ようとしていました。アラゴルンはその驚異的な力を持ったサルマンのしもべの首を飛ばし、ボロミアに駆け寄りました。
「小さい人たちがさらわれてしまった。」
絶えそうになる息の下、ボロミアはそう言いました。
「フロドは、フロドはどこに・・・」
ボロミアは悲しそうに言いました。
「かれは去った。」
アラゴルンは目を伏せて答えました。
「わたしはかれから指輪を取ろうとした。許してくれ、わたしは皆を裏切り、フロドを裏切った。」
ボロミアは涙を流しながらそう言いました。アラゴルンの目にも涙が浮かんでいました。
「違う!ボロミア。そなたは勇敢な戦士だった。さいごまで誇るべき戦士だった。」
アラゴルンはボロミアの矢を抜こうとしましたが、ボロミアには自分の死が分かっていました。
「もうだめだ。人間の世界はもうない。全てが暗闇に沈む。そしてわれわれの都も・・・」
「わたしの血にかけて誓おう、ボロミア。われら人間はミナス・ティリスを陥落させはせぬ!」
「われら人間。」
ボロミアはそう言うと安らかな強い笑顔を苦しみの中に作る事ができました。アラゴルンがボロミアの剣を手渡しました。
「わたしはあなたについて行きたかった。わが友よ、この旅の先導者よ、わたしの王よ・・・」
こうして守護の塔の君、デネソールの世継は死にゆきました。
「安らかに眠れ・・・ゴンドールの息子よ。」
アラゴルンはボロミアのまぶたをおろし、額に口づけしました。レゴラスとギムリがかれらを見出したのはちょうどこの時でした。
「サムワイズとフロド」に続く。 |