プロローグ 「坂に続く道・b」
―the
jinx・b―
「やっぱり、いい国だったじゃん」
呆れたような、憤慨したような声でエルメスが言った。
「そうだね。もう必要ない物も高く売れたし、これから必要な物もたくさん、しかも安く手に入った」
城門の外に出、もう夏だと自己主張する直射日光を浴びながらキノが言った。
「あれ?今日は素直じゃんキノ。雹でも降らなきゃいいけど」
「ボクはいつだって素直さ、エルメス」
日差しに顔を向け、眩しそうにキノが答えた。
「何言ってるんだか」
少し、沈黙があった。
「過去から、学んだだけだよ」
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