流行の国  2 Give and take

斬新なデザインの城壁から続く一本の茶色のすじの上を、一台のモトラドがその城壁から離れるよう走ってゆく。前来た旅人が去ってから、四日後のことだった。周りは一面の草原だった。運転手は黒いジャケットをはおり、右腿にはリボルバータイプのハンドパースエイダーのホルダーがあった。精悍な顔つきに、黒く短い髪を持っていた。
「なんか変な国だったね、キノ」
少年のような声がした。
「そう?」
キノと呼ばれた旅人が、心底不思議そうに言った。
「自分の名前さえ書ければ、あんなにおいしいご飯が食べられて、いい宿に泊まれて、それにタダでこんなにいっぱい食べ物も燃料もくれるなんて、なんていい国なんだ!もう一度近いうちに行ってみようかな。」
旅人の目は、本気だった。
「・・・よくばり。」
「何か言った?」
「別に。」
そうして旅人は、満足げにため息をついた。
「あー、それにしても今日の朝食もおいしかった。いい時期に行けてよかった。」
「確かにね。旅人の本が流行る前は、戦争番組が流行っていたみたいだからね。その時だったら散々な目にあってたかも。キノの幸運に完売。」
「・・・乾杯?」
「そう、それ。」
そうして、旅人たちは去っていった。そしてまた、城壁は新たなデザインに作り変えられようとしていた。

おわり