この物語は、登場人物の行動・描写が暴力的かつ過激になっております。15歳以下の方の閲覧を禁止いたします。また、悲劇的要素を多々含みます。そういった表現が苦手な方にはお勧めできかねますのでご注意下さい。

 

  Lament Angel 9

 

 アスランが幾度目かで目を開けると、そこはもう病院ではなかった。
『トリィ』
小さなマイクロユニットが自分の手の甲に乗ったのを認め、アスランはここが自分の部屋である事を知った。あの騒ぎの中、このマイクロユニットは無傷でいた。そしてアスランの身体の傷は、大方治っていた。腹部の傷はかなり深いが、動けないほどでもなかった。あとは、静養が必要だと言われ、ラクスらによって運ばれたのだった。アスランは、手足を動かしてみた。ちゃんと動ける。そう自分でも分かった。ただ、足に入った弾丸が少しだけ神経に掠っていたらしく、動かし辛かった。それでも、生きていた。起き上がり、誰もいないその部屋で自分の点滴を抜いた。少しだけ、腕が痛んだ。もう、キラはいない。だから・・・

キィ、と音がして、ラクスがアスランの部屋に入ってきた。ピンクのハロが、その後からついてきた。
「アスラン!」
起き上がって着替え始めているアスランに、ラクスは驚きの表情を隠せなかった。
「アスラン、あなたはまだ寝ていなくてはなりませんわ。」
「いいえ、ラクス。」
アスランは静かに、自分でも驚くほど静かにそう言った。
「もう、行かなくてはなりません。」
「行くって、どこへですの?」
「キラの元に。」
はっとして、ラクスはアスランを抱き留めた。まるでこの地にアスランを縫い付けるように。
「駄目です、アスラン。あなたまで、いなくなってどうするというのですか。カガリさんだって、わたくしだってここにいるのに。」
それは、聞いた事のないくらい必死なラクスの声だった。その響きのあまりの脆さに、アスランはラクスを見つめて動けなくなった。
「あなたは、死んではなりません。」
「・・・ラクス・・・」
「・・・お願いですから・・・」
ラクスの涙が、少しだけアスランの服に染みを作った。
『ミトメタクナイッ!』
そんな電子音だけが、耳にこびりついていた。

続く。