この物語は、登場人物の行動・描写が暴力的かつ過激になっております。15歳以下の方の閲覧を禁止いたします。また、悲劇的要素を多々含みます。そういった表現が苦手な方にはお勧めできかねますのでご注意下さい。

 

  Lament Angel 7

 

「予想外の収穫、だったのかしら。」
女の声が暗い地下に響いた。その女の足元には、一人の青年がほとんど裸で鎖に繋がれて転がっていた。血の気のない頬、乾ききった唇、落ち窪んだ眼窩。それでも彼は、キラは生きていた。キラの意識は女の声で、すっと闇から浮上した。乾きすぎて、もう開くのすら痛い瞼を無理にこじ開け、キラは見えにくくなってしまった視線の先を懸命に見ようとした。
「代表じゃないのは痛いが、それでも代表の身内、しかも弟らしき人物が手に入った。これはきっと代表にとっては、国の次に大切なものだろう。しかもこいつはあのフリーダムのパイロットだと言うじゃないか。むしろ代表よりも好都合だ。これを欲しがる輩はいくらでもいる。」
「そう・・・ね。でも、気をつけて、兄さん。大きすぎる収穫は、危険を伴うわ。」
「ああ、分かってる。」
そして男は足元のキラの後頭部をじっと見た。
「あいつを助けるまでの辛抱、か。それにしても・・・綺麗な身体をしていやがる。これが、オーブの要になる者・・・か。」
ぐっと、キラが猿轡の向こうで奥歯をかみ締めた。
「まあ、コーディネイターだしな。相当の扱いにも耐えるだろう。少しの自由も我らの危険につながる。この鎖を、はずすなよ。食事は自分でさせるな。」
キラは、言葉の羅列に恐怖は覚えなかった。ただ、自分の身よりも、オーブと、そしてアスランの事が気にかかっていた。
『アスランは、生きているの?カガリは・・・無事なんだね。よかった。あの時のアスランの声がまだ聞こえる気がする。僕の名を呼ぶ声が。どうして逃げられなかったんだろう。どうして、彼を助けられなかったんだろう。どうして・・・。』
そればかりがキラの頭の中を駆け巡り、キラは涙すら出なくなるほど乾燥した目が痛んだ。
「とにかく、我々の要求は、あいつの釈放と逃亡資金だな。それはまず、手始めだ。こいつの身の振り方には、もう少し時間をかけて考える必要がありそうだ。」
「ええ、そうね・・・。あの子を助けるのが、先決問題ね。」
男にそう答え、女がキラを見下ろして目を見開いた。
「もう目を覚ましている!水分も養分も最低限度にしたはずなのに!」
「薬は、まだ切れる時間じゃないだろう!」
「ええ、でも兄さん、こいつ・・・もう起きている。」
男の舌打ちが聞こえ、そしてキラの耳元で空気を切る音がした。それは、キラの頭を靴の先で殴打する音だった。そしてまた、キラの記憶も闇に戻っていった。

続く。