この物語は、登場人物の行動・描写が暴力的かつ過激になっております。15歳以下の方の閲覧を禁止いたします。また、悲劇的要素を多々含みます。そういった表現が苦手な方にはお勧めできかねますのでご注意下さい。

Lament Angel 6

 

 アスランが目を覚ました時、そこにはラクスがいた。しかしそこにいる彼女は、いつものようなやわらかい雰囲気をまとってはいなかった。
「ここ・・・は?」
「ここは、オーブの病院ですわ。あなたは3日間も眠っていましたわ。」
ラクスの声はアスランにそっと語りかけていた。穏やかな、いつか自分もいたその世界。そのやわらかさにアスランはまた目を閉じかけた。が、一瞬後、はっとしてアスランは身を起こそうとし、そして激痛に身をかがめた。
「キラ!キラは!・・・ぐぅっ・・・」
「いけませんわ、アスラン。あなたは、まだ動いては。」
そうしてラクスはアスランの背にそっと手をあて、そしてアスランを寝かせた。痛みに顔を歪めながら、アスランはもう一度口を開いた。
「ラクス、なぜ、あなたがここに?・・・キラは?カガリは?どうして私はここに一人でいるんです?キラと、カガリは今どこに・・・。」
「カガリさんは、ご無事ですわ。大丈夫、今も政府の方でお仕事をなされています。」
少しだけ、アスランは安堵の表情を浮かべた。だが、次のラクスの言葉は完璧にアスランから思考と声を奪った。
「でも、キラは・・・攫われました。」
はっと息をのんだアスランは、身体の痛みよりもどこか他の部分に激痛が走ったように、胸の前で手を握り締めた。そしてラクスも、口調は静かだったが顔は憔悴していた。
「お医者さまからアスランと話すのは、今日はもうやめなさいと言われました。でも、わたくし、あなたとお話せねばなりませんと言いましたの。あなたにも謝罪したくて、わたくしここに参りましたの。」
「ラクス・・・何を・・・?」
ラクスは、一度目を閉じて、そしてアスランをまっすぐに見て話し始めた。
「わたくしは、キラが狙われている事を、プラントで知りました。なるべく逐一オーブに知らせるようにはしていましたが、まさかこれほど急に事が起こるとは思ってもみませんでした。そして先日、犯人の一人の居場所すら分かったのです。それを知って、わたくしはここに戻ってまいりました。でも、何もできませんでした。キラが危ないと、分かっていたのに何もできませんでした。キラの側へ行く事も、キラを守る事も。わたくしは、何もできなかったのです。ですから・・・」
その大きな美しい瞳から涙が溢れるのではないかと、アスランは震える声を押さえつけて話した。
「そんな・・・、あなたのせいではありません・・・ラクス。俺が・・・俺がもっとしっかりしていればよかったんです。あんなところで気を失わなければ、こんな事にはならずにすんだのに・・・」
「いいえ、アスラン。あなたは何も悪くありませんわ。」
「でも、俺だって知っていた・・・キラが、狙われているって・・・。なのに・・・俺はっ・・・」
話しているうちに、アスランは世界の音が遠くなってゆく気がした。自分の声すら、どこか篭って聞こえていた。
「アスラン、ご自分をそんなに責めないで下さい。わたくしだって、あなたと同じなのですから。」
「・・・ラク、ス・・・」
「今は、眠ってください・・・アスラン。」
そして、沈黙だけが部屋に落ち、いつの間にかまたその静けさの中、アスランは気を失うように眠りに落ちていった。

続く。