この物語は、登場人物の行動・描写が暴力的かつ過激になっております。15歳以下の方の閲覧を禁止いたします。また、悲劇的要素を多々含みます。そういった表現が苦手な方にはお勧めできかねますのでご注意下さい。
Lament
Angel 4
あれ以来、カガリはキラとアスランをボディ・ガードとしたがった。しかし公用などにはもちろん、私用でも周りからはそうそう許されなかった。もちろん、キラやアスランにもずっと多忙なオーブ代表首長に付き合うほどの時間もなかったのだが。それでも二人の時間が空いて、カガリが息抜きにちょっと出かけたい時には必ず二人を同行させるようにとカガリはごねた。キラだけの時間が空いた時でも、どう都合をつけてきたのか、アスランも必ずついてきた。もちろん、三人だけでの外出をオーブ政府が許すはずもなく、影から必ずキサカらが警護していた。ラクスからの情報はますます確信を持ったという事以外進展はなく、表面上は何の変わりもなかった。
それは少し靄のかかったような日だった。昼間だというのに、少し肌寒く、そして薄暗かった。そんな日は、決まってカガリは外に出掛けたがった。
「もう、こんな部屋にいたら息が詰まって死んでしまうぞ!」
最近、カガリは確かにこの部屋に篭りっきりだった。書類整理やら閣議やらばかりに時間を取られ、自由になる時間など、ないに等しかった。今日は、そう仕事もなかった。あとは夕刻から各界からの大物ばかりが集まるパーティーがあるだけだった。カガリは仕事の中でも特にその類のものに嫌悪感を示したが、最近はそれもずいぶんとましになってきていた。そんなものが控えている今この時に、カガリを少しだけ息抜きさせてやるのは、気分転換にもってこいだと、珍しくキサカが外出を許した。
「その代わり、ちゃんと自慢のボディ・ガードたちを連れて行くんだぞ。」
「ああ、分かってるって!」
そう言って、カガリは嬉しそうに笑った。
政府内から、発信される無線があった。
『姫が出掛ける。供はいつもの二人。それと、後ろから警護兵数名。』
『了解。ポイントAで待つ。行き先が分かり次第報告を頼む。』
『了解。』
政府が傍受する隙もない間に、無線は切られた。
キラとカガリが、アスランの少し前を並んで歩いていた。それはいつもの風景。それは、アスランにとってかけがえのない大切な者達だった。カガリの輝くような笑顔に、キラの少し困ったような小さな微笑。
「な、だから、わたしが教えてやるって言ってるんだ。」
「え、いいよ。別に僕は・・・。」
「何言ってんだ。楽しいぞ。わたしと一緒に弾いたり、歌ったりすればいい。」
「でもさ、カガリって、楽器なんか扱えたんだ?」
「・・・なーにを!キラ!お前、わたしを何だと思ってるんだ!」
「あ、ご、ごめん。そうだよね、カガリだって、お姫様なんだし、そりゃ、楽器ぐらいできるよね。」
「キラっ!そういうこと言うなって、いつもいつも言ってるだろ!そういう事じゃなくてだなぁ・・・まったくもう!」
アスランには分かっていた。そんな二人のじゃれあうような言葉は、お互いを思って出た優しい言葉だと言う事が。ふっと、アスランは笑って思った。
『そっか、今日は、確か楽器を買いたいとか言っていたな。キラにまた押し付ける気だな、カガリ。まったく。そのとばっちりはいつも俺に来るんだぞ。』
ふとアスランがキラを見ると、キラもアスランを振り返っていた。どうしよう、と目で訴えかけてくるキラに、アスランは肩をすくめてみせた。と、カガリが突然走って通りを渡り始めた。少し広めの通りの向かい側に、お目当ての楽器屋があったからだった。突然の事に、アスランとキラ、そして警護兵たちは慌てた。カガリと彼らの間には通りが横たわっていた。
「おーい、こっちこっち!お前たちも早く来いよー!」
カガリが嬉しそうに通りの向こうにいるアスランとキラに手を振った。その時、警護兵と二人の無線に緊急信号が入った。
『外出は取りやめよ。ただちにカガリ様を保護し、政府まで戻るように。不信な無線が政府内部より発せられた。本日の外出が漏れている可能性がある。繰り返す・・・』
アスランがはっとした瞬間、平和だったはずの街に銃声が響いた。
続く。 |