この物語は、登場人物の行動・描写が暴力的かつ過激になっております。15歳以下の方の閲覧を禁止いたします。また、悲劇的要素を多々含みます。そういった表現が苦手な方にはお勧めできかねますのでご注意下さい。 Lament Angel 17 叩いた手の平を見つめ、カガリは一瞬呆然とした。どうしてこんな事をしてしまったのだろうか。どうしてこんな事になっているのだろうか。どうしてアスランはここにいるのだろうか。そんな疑問が感情を駆け巡り、カガリはこの海の中でたった一つだけ熱くなった自分の手の平を見ていた。それは小さく震えていた。はっとして叩いた者を見ると、そこには何の表情も変えずにアスランが立っていた。その瞳があまりに深くて、暗くて、カガリは思わずアスランを抱きしめていた。 警護兵と運転手にしばらく下がるように命じ、カガリは海からアスランを引き上げて火を焚いた。向かいに座ったアスランは、青白い顔をしていた。そこから表情は何も読み取れず、カガリは眉を寄せてじっとその瞳を見つめた。 アスランは、焚き火の熱さに思わず目を覆っていた。パチパチと乾いた木が爆ぜる音、身を焼くような焔。それは今のアスランには熱すぎた。やさしさが、辛かった。冷たさよりもずっとそれは鋭利な刃となってアスランを傷つけた。カガリのやさしさと温かさが、身を切るようだった。揺らめく火の向こうに、キラがいるような気がした。悲しい目、遠い視線、美しい紫の瞳。しかしそれは焔の色に染め替えられ、金色の眩いばかりの光だけがそこにあるだけだった。光も温かさも、アスランには強すぎた。いっそこの炎に焼かれてしまえば良かったのかもしれなかった。それでも、アスランにはまだやる事があった。 「・・・カガリ。」 続く。 |