アスキラ寄りの、カガリ・キラ・アスラン・ラクスの四角関係注意報発令中です。二度の大戦後、オーブでのお話です。キラはアスランと同居しています。悲劇的要素を含みます。完全パラレルストーリーですので、他の二次創作物とは全く異なる世界観・時間軸としてお楽しみ下さい。今までも作者がアスランを虐める傾向にありましたが、さらに散々な事になっています。ハッピーエンドにはなりえません。苦手な方はご注意下さい。また、暴力的な描写と登場人物の行動が過激です。15歳未満の方の閲覧を禁止いたします。

この物語は、登場人物の行動・描写が暴力的かつ過激になっております。15歳以下の方の閲覧を禁止いたします。また、悲劇的要素を多々含みます。そういった表現が苦手な方にはお勧めできかねますのでご注意下さい。

 Lament Angel 1

 

 二度の大戦が終わり、ここオーブは平和を取り戻したように見えた。それは、国家主席たるカガリ・ユラ・アスハが、昔のように街へ出られるようになるほどに。だが、平和が何によって成り立っているのか、それは誰にも分からなかった。そして誰がその犠牲になるのかという事も・・・。

 

 その日、カガリはどうしても外に出ると言ってきかなかった。最近はめっきり代表らしくなり、公の場でも堂々としているカガリだったが、今日はキサカの目からすると、カガリは珍しく我が侭だった。それは、この場に居合わせた人々の影響に違いなかった。ここ、代表執務室にはアスラン・ザラと、そして彼女の双子の片割れであるキラ・ヤマトがいた。
「大丈夫だ!キサカ。大丈夫だと言っているだろう。」
「カガリ!いや、代表、しかし・・・」
「今日はどうしても出たいんだ。ほしいものがあるんだ。」
「買い物なら誰かに行かせられるだろう?それこそ、キラやアスランにだって行ってもらえるだろうに。」
「違う!どうしてもわたし自身で買いたいんだ。」
「なら、ボディ・ガードをつけろ。」
そう言われると、カガリは少し渋い顔をした。キサカは知っていた。気心の知れた身辺警護兵とは言え、カガリは自分がそのように扱われる事が大嫌いだった。そうしていつも、ごねた上に誰も連れずに出歩く事は、警護兵たちの頭を悩ませていた。今日も、カガリはいつものように何とか誰も来ないようにと一生懸命無駄な画策をしているのだった。少し考えていたかと思うと、はっと嬉しそうな顔になって言った。
「ボディ・ガードならここにいるじゃないか!」
「え?」
「ちょ、ちょっとカガリ!」
そうしてカガリがキサカの方に押し出したのは、キラとアスランだった。
「とびっきり優秀な奴らだろ?それなら、文句ないだろ?」
胸を張ってそう言い切ったカガリの顔は、一国の代表というよりは、年相応の女の子のものだった。そんなカガリに、キサカは少し苦笑しながら頷いた。そして、二人のボディ・ガードにそっと目配せした。
『私たちも行く。何かあった時には出て行く。願わくば、そのような事態にならぬ事を・・・』
キラとアスランは顔を見合わせ、そしてそっと頷いた。
 

街を歩くカガリは上機嫌だった。どこへ行くのか、キラにもアスランにも分からなかった。ただ、黙って付いて来いと言われて、その通りにカガリの半歩後と半歩前を二人は歩いているのだった。カガリに気取られぬよう、周りに油断なく目を配りつつ。そうしてカガリが辿り着いたのは、小さな銀細工屋だった。古い割には小奇麗な内装、そこにはどこか神聖という言葉を思わせる沢山の細工物が所狭しと置いてあった。その店と同化するように、奥に店主が座っており三人を笑顔で迎えた。落ち着いた風貌の店主とカガリは顔見知りのようだった。
「やあ。あれ、まだあるかな?」
「ああ、カガリ様。ありますよ。はい。」
そうして店主が取り出したのは、小さな銀製のペンダントだった。
「悲しみの天使だってさ。」
「悲しみの…?」
キラは、カガリの手元を覗き込んだ。そこには、美しいが哀しげな表情をした、大きな翼を持つ女の像があった。
「ああ、わたしはこういうのには詳しくないんだけどな。」
カガリは少し頬をかいて続けた。
「でも、これにすごい惹かれたんだ。ずっと、忘れられなかった。何かに似てると思ったんだ。今日、それが分かったんだ。これ、キラに似てる。どこか、寂しげで。」
「え?」
双子の後ろから、微笑ましそうに二人を見ていたアスランは、その言葉にはっとしてカガリを見た。
「寂しげ?悲しいんじゃなくて?」
きょとんとした目で、キラがカガリを見た。
「ああ、そう見えるんだ、わたしには。だから、これをキラにやりたくてな。今日、ここまで連れてきた。」
「そっか・・・。ありがとう、カガリ。」
そして微笑み合う双子に、どこか一抹の不安を掻き立てられ、アスランは少しだけ目を逸らした。

続く。