夜の窓
多分アルミンも分かっていないのだろう。なぜ互いに肌を重ねるのか。ジャンは思った。カーテンの隙間から、まだ暗い窓の外を見ていた。ああ、黒だ。マルコの髪と同じ色の。ジャンは思った。 アルミン・アルレルトが体を起こした気配を察してジャンはベッドを振り向いた。そこにいたのは濃いハニーブロンドに透き通る深い碧眼、自分より随分と小柄な人物だ。黒髪にそばかす、自分と同じような体格のマルコとは全く異なっていた。 アルミンは夜には眠れないと言った。それは自分がいるからではないかと思い、朝まで共にいる事は決してなかった。アルミンが想う彼に、自分は成り変わる事はできないから。そんな、アルミンのためだとでも言うような思考に陥りそうになり、ジャンはもう一度頭を振った。アルミンのせいではない。これは自分のために夜のうちに部屋を出るのだ。まだ、体に熱を宿したアルミンを残して。考えているうちに分からなくなっていた。マルコを思い出すからアルミンを抱くのか、アルミンがいるからマルコを思い出すのか。自分が欲しいのはマルコの言葉だったのか。それともマルコの参謀としての適性か。参謀としてのアルミンはこれ以上ないほど魅力的だ。だから似ても似つかぬ容姿のアルミンを自分のものにしたいのか。ジャンは微かに頭が痛むのを感じた。違う。それだけは、信じていたかった。 自分の部屋に戻るとそこはまだ暗く、何の匂いも感じなかった。乱れのないベッドに腰を落として上着を脱ぐと、アルミンの肌の密やかな匂いが鼻を掠めた。膨大な安堵と共に、微かな吐き気がした。 アルミン、お前は何を思って俺に抱かれてる? ジャンは目を伏せ、また下半身の熱がぶり返している事を知った。あれだけアルミンを乱れさせ、体内に注ぎ込んだ直後だと言うのに。好悪の感情はなかった。ただ、興奮する体が命ずるままに衣服をはだけ、熱を解放した。汚れた手を拭う事もせず、ジャンは倒れるようにベッドに体を横たえた。忘れていた眠気がやっと眼を覚まし、ジャンは目を閉じた。朝日が昇るまで、あと少しだった。
おわり |