車内後部座席

「私は助手席に乗るのが好きなのですが。」
「何を言っているんだ竜崎。助手席は乗用車に乗っていて事故を起こした場合、最も死亡率が高い席だ。運転手が無意識のうちに自分の身を守ろうとしてハンドル操作をし、その結果助手席の人間は無意識のうちに切り捨てられる。僕が運転しない限り、お前が助手席に乗るという事態はこの状況ではありえない。それに僕がキラだったらどうするんだ。わざと事故を起こしてお前を殺すかもしれない。」
「まあ、それはそうなんですが。」
「否定はしないのか。まあいい。分かっているなら、ここの席でいいじゃないか。」
「しかし・・・」
「まだ何か言うことがあるのか?この状況に文句でも?」」
「・・・大いにありますね。」
「どこがだ。」
「まず、月くん」
「何だ?」
「運転席と後部座席を仕切る窓を完全に閉じないでください。」
「そんなことをしたら、これからやる事が前に聞こえてしまうじゃないか。」
「何をするつもりですか。・・・それから鎖を私に巻き付けないで下さい。」
「この狭い車の中だ。鎖が邪魔なんだ。竜崎に巻き付けておけば一石二鳥じゃないか。」
「だからどこがどのように邪魔なのかと聞いているのです。そして何に一石二鳥なんですか。」
「そんな事も分からないのか?しょうがないな。僕が直々に教えてやろう。」
「いいえ、結構です。あなたに何らかのいかがわしい行為を教わるつもりはこれっぽっちもありません。」
「可能性で言うと?」
「ゼロパーセントです。」
「はっきり言われると傷つくな。」
「・・・・・・」
「何だ、にやついたりして。」
「いえ、傷ついた月くんを見るのは、少し楽しいと思いました。」
「竜崎・・・お前・・・」

月の負け。