右手と左手

「なあ、竜崎。」
「・・・・・・」
「竜崎!」
「・・・なんですか。」
「なんですかじゃない。何だその嫌々そうな口調は。」
「最近分かってきたんです。あなたが私に話しかけるのは、とてつもなく下らない事か、はたまたとてつもなく私を疲労させる事を思いついた時より他にないと言う事が。ですから、できれば黙っていようと思いましたが、さすがに繋がれている状況ではどうにも返事をしない訳にもいかない上に、時間が経つほどあなたの煩さも倍増していきますから、仕方なく返事をしたらそのようになってしまったという訳です。お気に障ったのならば謝りますが、どうしましょうか。」
「いちいち人の神経を逆なでするのが上手いな、竜崎。今回はそんな事で呼んだんじゃない。」
「では何ですか?キラの手がかりになるような事でも発見したのですか?それとも逮捕に必要な物的証拠を収集する方法でも見つかりましたか。」
「何を言っているんだ。それこそ下らないじゃないか。」
「それが目的で私たちは動いているのですが・・・」
「まあそれはいい。実はだ、竜崎。良い事を思いついたんだ。」
「何ですか?」
「今、僕たちの鎖は右手と左手に手錠をはめてつながっているだろう?」
「そうですね。」
「それを、左手と左手にしたらどうだろう。」
「どうだろうもこうだろうもありませんよ。それでは今まで以上に生活しにくくなってしまいますよ。」
「生活しにくいとかしやすいとかの問題じゃないだろう。要は僕と竜崎が常に繋がっていればいいという話だ。それだったら左手同士でも問題はないはずだ。」
「それはそうですが、どうして左手にしようと思ったんですか?」
「愛を誓い合うのは運命の左手だと、昔から相場が決まっている。」
「・・・・・・やっぱり。そんな事だろうと思いましたよ。」
「何か言ったか?」
「はぁ、いえ、なんでもありません。」
「そうか、じゃあ早速左手同士にしよう。」
「嫌です。」
「遠慮するな。」
「遠慮などしているつもりは毛頭ありません。」
「いいから。」
「よくありません。」
「いいから!」
「力ずくとは卑怯ですよ月くん。力だけで私に勝てると思ったら大間違いです。」
 

(がっしゃーん!どっかーん!ばきっ!・・・)

月の負け。