着替え


「竜崎、もう睡眠を取った方がいい。着替えろ。」
「いえ、私はこのままで構いませんが。」
「僕が構う。」
「いえ、でも。」
「でもじゃない。体を締め付けない衣類を身につけ、きちんとした睡眠時間を取ることは推理力の向上と精神衛生に必要なことだ。」
「しかし私は今までこのままで寝てきましたが。」
「そう言う事じゃないだろう。今僕達は鎖で繋がっているんだ。おまえが不衛生だとこちらまで不快な気持ちになる。せめて服を着替えてくれ。」
「しかし・・・自分で言い出した手前、何と申し上げたらいいのか分かりませんが、この状況でお互い着替えるのはかなり無理があるかと思いますがどうでしょう。」
「破くなり切るなり裂くなり、好きにすればいい。ちなみに僕はそんな事しなくてもいい服を選んでいる。」
「そんな器用な服があってたまるかとは思いますが、まあ月くんの言うことももっともです。では・・・」
「おい!ここで脱ぐのか!?全部脱ぐのかっ!?」
「ええ。着替えろと言われたので。何か違っていますか?」
「人前だぞ!」
「しかしここには月くんと私しかいません。そもそも24時間一緒と決めた時から、これくらいの事は覚悟していたはずです。」
「いや、覚悟と我慢の境目があるだろう!」
「我慢・・・はて、何がなにやら。」
「もう、いい!竜崎はそっちで着替えるんだ!」
「ついたての向こうですか?日本人らしい発想ですね。なるほど、視覚刺激をなくすことにより・・・」
「うるさい!さっさと着替えるんだ!」
「全く、うるさいのはあなたです。」
 

月の負け。