外出
「外出がしたい。」
「は?あなたはバカですか?松田ですか?」
「馬鹿とは心外だな。僕は竜崎が認めたほどの頭脳の持ち主だと自他共に認めていると思っていたが。」
「人の頭脳と行動の論理性には感情と精神が複雑に絡み合うことにより、より良い頭脳の持ち主がより良い行動を起こすなどという比例関係にあるとは立証しえない事象ですが。また良いという基準すら人それぞれに曖昧であり・・・」
「・・・うるさいな。ただ、少し空気を吸いたいだけだ。」
「それだけですか?」
「そうだ。」
「では、好きなだけ窓を開けてください。屋上に行くのでも構いませんよ。付き合ってあげます。」
「そう言う事じゃない。人のいる外の空気もたまには吸いたくなるだろう、竜崎。」
「・・・そうでもありません。実際私は、このような部屋で人生の大半を過ごしてきましたが、特にそういった事を渇望することはありませんし、ここは今までで一番と言って良いほど広くて開放的で、それに他人との接触もある。あなたもいる。私にとってここは、あなたの言う『外』と言ってもよいほど、心地よい空間なんです。」
「・・・竜崎、お前・・・」
月の負け。
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