metanet.com 十万ヒット御礼 俺×オレ小説

 このような辺境の趣味丸出しよろずサイトに、皆様足繁く?通って頂き大変ありがとうございました。少しばかりではありますが、日ごろの感謝を伝えようとアンケートを取った結果、現在絶好調更新中の「鬼畜眼鏡」より「克哉×克哉」のリクエストを多数頂きましたので、この小説を、いつも見に来て頂いている皆様に捧げようと思います。気に入った!お持ち帰りだぜこのやろー!と思われた方は、ご自分のサイトでもブログでもお好きな所に持って帰って展示して下さって一向に構いません。ただしこんなエロですので(笑)metanet.com:ものとかおら作(R18)との表記をして頂きますようお願い申し上げます。できれば展示後で構いませんのでご連絡いただけましたら喜んでご挨拶に伺わせて頂きます。それでは、どうぞ妄想の果実をご堪能あれ。

 

サービス残業 1 <克哉×克哉>

 

 金曜深夜のキクチマーケティング、営業8課のオフィス。ここにはもう、佐伯克哉以外の誰も残っていなかった。いや、8課以前に、もう他の部署もほぼ無人であろうという時間帯。ふと、つっぷしていた自分のデスクから顔を上げた克哉は、向かいのビル灯りと非常口の光しか入ってこない暗いオフィスを見回して、時計を見て驚愕した。
「え!?もう1時55分!?」
どう考えても、健全な営業職の販売員にしたら笑えるくらいおかしい時間だ。終電なんてとっくの昔に終わっている。最近そんなに疲れていたんだろうかと、克哉は首をかしげて今日の行動を思い返してみた。
 

 そう言えば今日の午後は煩雑な書類と根気の要るデータ分析が山のようになっていた。最近仕事は忙しいもののそれなりに順調で、プライベートも何だかんだと言いつつ落ち着いてきたところだった。だから、克哉は最近使ってもいなかった眼鏡の事などすっかり忘れてしまっていたのだが、なぜかそんな今日に限って、机の引き出しに懐かしいそれが入っていた。
「あれ・・・?」
この眼鏡に関しては少しどころではなく色んな目に合わされてきて、今日も薄ら寒い思いを覚えたが、どう言う訳か手が勝手に動いていた。と言うよりも、頭の片隅で声がした。
『おい、これを使えば午後のめんどうなだけの作業がはかどるぞ。』
克哉は強制的に何も考えられない自分の思考に多少の違和感を覚えながらも、
「そうだなぁ・・・めんどくさいから早く終わらせて早く帰ろう。」
そう呟いて眼鏡をかけてしまったのだった。

 

 そこからの記憶がない。そして、また机の上にあの果実。どこかで見たような、どこかで経験したような、妙な既視感。しかし克哉にはそれが危険である事は本能で分かるのに、どうしてだか記憶に靄がかかったように、具体的に何がどう危ないのか理解ができなくなっていた。いや、強制的にその果実が克哉の思考を捻じ曲げていた。
「お腹もすいたし・・・」
ふと果実に手を伸ばすと、濃厚な酸性の香が鼻の奥を突いて、条件反射のようにじわっと口の中が潤った。
「美味しそう・・・」
はっと気がついた時にはその種だらけだが瑞々しい果実を口に入れてしまっていた。

 

 果実の一つを噛み潰し、酸っぱいその果汁が口中に広がった瞬間、ぱちんと何かが弾ける様に、克哉の記憶のベールを割った。
「うわっ!オレ、今これ食べた!?マズい・・・!マズいって・・・!!」
『何がマズいんだ?』
「ひぇっ・・・!」
急に真後ろから聞こえた低く這うような声に、克哉は思わず大げさに後ろを振り返ってしまっていた。
「ああぁ・・・やっぱり<俺>か・・・」
真後ろに自分と全く同じ姿なのに、全く違う雰囲気と空気をまとわらせた男が立っていた。身体的にも同じであるはずなのに、態度が大きいからか、ふんぞり返っているからか、身長すらそちらの男の方が高いように見えた。そこにいたのは予想に違わぬ自分自身。眼鏡をかけた佐伯克哉だった。
『やっぱりとは失礼な奴だな。俺はわざわざ今日の日のために、出てきてやったんだぞ。』
「・・・失礼なのはお前だろう。もういいよ、オレはもう帰るよ・・・」
パソコンの電源も落ちているみたいだし、鞄も帰る用意がしてある。眼鏡をかけていない方の克哉は、通勤鞄を小脇に抱えて、そそくさとその場から逃げ出そうとした。
『どこへ行く気だ。』
がしっとその腕をつかまれて動けなくなった克哉は、眼鏡の自分を見て一瞬うろたえ、そしてすぐにキッと目の前にいる男を睨んで立ち去ろうとした。
「・・・どこって・・・帰るんだよ。て言うか帰らせてくれ!」
『もう終電なんてとっくに終わってるだろう。いいじゃないか、ここで泊まれば。』
「お前と一緒に夜なんか過ごせるか!何されるか分かったもんじゃない。」
『ほお、だんだん良く分かってきたようだな。』
「!・・・やっぱりそういうつもりだったのか。」
『いや・・・今日は、サービス残業だ。』
「何を言ってるんだ<俺>。今日はもう仕事残ってないはずだろ?出てこなくていいよ。」
『いいや、あるな。俺たちにしかできない事が。』
そう自身満々に言われてしまうと、何か仕事があったような気がしてきた。何だっただろうと首を傾げた克哉を見て、眼鏡をかけた克哉はニヤリと笑って克哉の腕を引いた。
『とりあえず、資料室へ行くんだ。』
「え・・・?資料室・・・?」
こうして、訳が分からないまま克哉は自分自身に引っ張られ、キクチの社ビル地下にある資料室へ連れて行かれてしまった。

 

 誰ともすれ違う事なく、二人の克哉は地下資料室に降り立った。
『ほら、入れ。』
そう言われ、自分の力とは思えない腕力でその多少ホコリ臭い部屋に放り込まれたと思った次の瞬間、パチンと音がして蛍光灯の光が一斉についた。
「っ・・・」
今まで真っ暗な廊下にいたからか目が眩み、克哉は手を目の前にあててふらっと資料室の本棚にもたれかかった。するとその瞬間、カチャンと小さな音がした。その音に何か嫌な予感を覚えた克哉が声をあげようとしてまだ光に慣れない目を懸命に開けようとすると、目の前に自分のものであるはずの見慣れた瞳があった。
「んんっ!」
鏡で見る事しかできないはずの自分の瞳。しかしそこに映るのもまた自分。目の眩むような倒錯感に襲われた克哉は目を見開いた瞬間、唇をぴったりと塞がれ、克哉は思わずくぐもった声を出した。
『いい声、出すじゃないか。資料室の鍵を閉めただけだ。』
「ぷはっ!何すんだ!こんな所で、何を!」
思わずそんな声をあげた自分に腹をたてながら、克哉は自分の身体を自分から引き剥がしながら抗議した。
『何って、サービス残業だと言っただろう。』
「どこが!何がサービス残業だ!訳が分からないよ!」
『お前は分からないだろうけどな、どうやらお祝いらしいぞ。』
「は?何の。」
克哉の当然と言えば当然の疑問に、眼鏡をかけた克哉はニヤリと笑った。
『そんな事、お前は知らなくていい。ただ、俺と読者を楽しませればそれでいいそうだ。』
「ホント、お前が何言ってるかさっぱり分からないんだけど・・・て言うか何でここなんだよ・・・。」
すると眼鏡の方の克哉も少し困ったように眉をひそめ、引き剥がされた手をもう一度克哉の腰に回して、しつこい抵抗をかわしながら言葉を続けた。
『何だか知らんが、こういうシチュエーションが萌えるんだそうだ。』
「は?・・・も・・・?」
『気にするな。』
「気にするよ!!何なんだよ一体!」
そう克哉が叫んだ瞬間、身体を摺り寄せてきた自分が耳元で低く甘い声で囁いた。
『お前は自分の快楽に従えばいいんだ。』
自分のものとは思えないその声と、ぞわっと背筋を這う覚えのある感覚に、克哉は思わずよろけて棚から一冊ファイルを床に落としてしまった。
「あ・・・」
それを拾おうとして、克哉の抵抗が等閑になった瞬間、身体がぐいっと前に引き寄せられ、ぺろりと唇を舐められた感触があったと認識する前に口腔に舌が入り込んできた。
「うぅ、ん、む・・・!」
いつやられても、同じように巧すぎる眼鏡をかけて自分自身の愛撫に、克哉は半ば腹を立てながら、徐々に抵抗する力を奪わせていくキスに飲み込まれていった。
「ふ・・・んぅ・・・」
長すぎるキスに頭の酸素が奪われ、一緒に思考も奪われていった。
『そうだ、それでいい。』
脳内に、麻薬のように染み込む自分のものではないような低い声。平衡感覚のなくなるぐらっとする眩暈の後、克哉は眼鏡をかけた自分から与えられる快感に、今宵も酔いしれる事となった。

 

続く。