恋は盲目1  <克哉×御堂>

 

「久し振りに何かを使うのもいいかもしれないな。」
仕事のない土曜の夜。二人はマンションのリビングで思い思いの事をしながらくつろいでいた。無言でも、心地よく過ぎてゆく時間。そんな気持ちの良い雰囲気に割り込んだ克哉の一言はあまりにも自然で、最初、御堂は克哉が何を言っているのか、本気で理解ができなかった。だから克哉があの凶暴な光を目に燈して
「道具が懐かしいだろう?」
と言った時も、反応できずにいた。それを面白そうに見やると、克哉は言葉を続けた。
「最近何も使ってなかったからな。お前がもうそろそろ飽きる頃じゃないかと思って、これを出先の某社の知り合いから譲ってもらった。」
そう言うと、克哉は鞄から取り出したものを右手の指先にひっかけてくるくるとキーホルダーを弄ぶ要領で回した。
「・・・・・・!!!」
それが何かと分かった瞬間御堂は、今度はあまりのショックで言葉を失った。どこかで絶対見た事のあるようなそれは、明らかに淫猥な目的を持って創造された物体だった。数珠状に繋がったゴムかシリコンで出来たそれは、不揃いな球体が何個も並んでいて、言われずともどこに入れて使うものか、御堂に的確に想像させてしまっていた。せっかくカクテルに添えてあるオリーブが平気で食べられるまでに心理的恐怖と羞恥が薄まってきたばかりのところに、今度はそれ。最近のノーマルなやり方に油断していたとは言え、御堂は犯罪スレスレと言うか、既に足を突っ込んでいたような事までされていた自分と克哉の過去がフラッシュバックし、そして克哉が真正の鬼畜である事を思い出した。
「冗談・・・だろう・・・?」
座っていたソファーから腰を浮かせ、半ば逃げ出す体勢になって御堂が口に出した言葉はどこか掠れていた。それは御堂の恐怖から出たものだったが、克哉にはそれが喩えようもなく魅惑的な響きに聞こえた。そう、まるでそれに飢えているような、焦がれているような。
「俺がお前に冗談を言うような人間に見えるか?」
「・・・っ!」
じりじりと克哉から距離を取ろうとしていたのに、大股で歩み寄られて肩をがっしりと掴まれてしまっては、もう御堂には逃げ場所はなかった。

 

「使い方は、分かっているんだろう、御堂?お前が望む通り、入れてやるよ。」
嵐のようなキスと、巧妙すぎる愛撫、そしてほのかに香る克哉お気に入りの潤滑剤に、御堂の身体はもう力が入らなくなっていた。克哉のその言葉に、はっと気がついた時はもう、御堂はベッドの上に仰向けにされてその部分を克哉の眼前にさらけ出していた。
「はぁっ・・・う・・・」
ぐいっと何かが一つ押し込まれる感覚があり、御堂は思わず息を飲み込んだ。ローションのおかげで痛みはない。ただ、一つでは足りない快感が中途半端に御堂の理性を刺激して、御堂は拒絶の言葉をぼろぼろと零すのだった。
「嫌・・・だ・・・ん・・・あぅ・・・」
しかしもう御堂の後ろは克哉に長い時間をかけて慣らされており、今では自らひくついて次をねだっているようだった。
「こんなにぐちゃくちゃにして。嫌な訳がないだろう?足りないと言え。正直にしていたら、あんたの望むものを気が遠くなるまで与えてやるよ。」
「誰・・・が・・・!」
思わず力の入らない身体のうち、瞳だけに険を込めて御堂が克哉を睨み付けた。しかし目が合っても、克哉はただ嬉しそうに笑うだけだった。
「ほら、もう一つ。」
「やめろ・・・やめっ!あ!」
ぷちゅっと微かな音がして、球体がもう一つ御堂の中にするりと入り込んでいった。次々と、今度はそれほど克哉が力を入れずとも、連なったそれらは御堂に入り込んでいった。それを飲み込ませていない方の克哉のもう片方の手は、絶えずゆっくりと御堂の太腿を羽根のような柔らかい緩急で撫で、ざわざわとする得体の知れないくすぐったさと紙一重の快感を御堂に与え続けていた。
「やめろ・・・!そんなに入れたら、な・・・中で擦れて・・・!」
もう半分ほど飲み込んだところで御堂が逃げ出そうとした。だが、もがけばもがくほどに、中がかき回され、逃げるつもりが余計に乱れる原因を作るだけだった。快感を如実に示す自らのそれに手を伸ばそうとすれば克哉に阻まれ、体内の違和感と不連続な快感に、気が狂いそうになって御堂は懇願した。
「抜け・・・抜いてくれ・・・!」
「こんなにお前の身体は喜んでいるのにか?」
御堂の前はもうはちきれそうに膨れ上がっていた。反り返って自分の腹についてしまいそうな先端からは、透明な液が盛り上がって一滴したたり落ちていった。そんな小さな刺激にも、びくんと身体を痙攣させた御堂に、克哉はふっと笑って道具をかき混ぜた。
「相変わらず敏感だな。自分の先走りにも反応するなんてな。」
ぐちゃっと音がしてさらに道具が数粒入り込み、御堂が叫び声を上げた。
「あああっ!はぁ・・・あ・・ぅ・・・」
一気に絶頂に駆け上がりかけた御堂の中心がふるふると揺れているのを見て、克哉はそこでしばらく動きを止めた。ここでイかせてしまっては面白くない。克哉は御堂の先端を、痛みを感じるほどに掴み上げてその出口を完全に塞いだ。

 

「恋は盲目2」に続く。