月と太陽
反転した世界に輝く月は
消え去るために
形を変えてゆく
ボクのことを見つめる太陽は
もう
ここにはない
兄さんと共に在るだけでよかった
ただそれだけでよかった
それだけで世界は美しかった
明るい光に満ち溢れていた
兄さんの綺麗な髪と目と同じ色の光に
いつもそばにいられるだけでよかったのに
愛されたいと願ってしまった
その瞳に
ボクだけが映ればいいと思ってしまった
その唇で
ボクを浚ってほしいと思ってしまった
世界は反転した
美しさも表情を変えた
昼と夜が逆転した
ボクにはもう月しか見えなくなった
何一つ
永遠に変わらないものが
なくなってしまった
あってはならない感情が
太陽をボクから奪った
光に消される
青白い月と
ひっそりと輝くのを許された夜の月だけが残った
それでもボクは求めてしまう
あの太陽の光と同じ
あの黄金の瞳を
兄さんが望むのなら
この魂など
いつ差し出してもいい
兄さんが望むのなら
いくらでも
幸せな振りができる
世界中を敵に回しても
ボクが兄さんの盾になる
それで月が欠けて
なくなってしまっても
ただ
そこに残ってしまったボクの想いだけが
兄さんの胸にしまい込まれるのならば
たとえそれが許されない感情でも
ボクは月を眺める
魂だけの旅人
この世の夜だけを彷徨う
不鮮明なこの景色の向こうには
決して近づくことのできない
太陽の光が溢れる美しい世界
何か
確かなものをボクにください
それが形をともなっていなくてもいい
たった一欠けらの鏡の破片に映った光でもいい
それでも
できることなら
僕を愛してください
兄さんのその腕で
ボクを抱きしめてください
兄さんの
その胸に
ボクを抱いてください
光をなくした世界に輝く月は
消え去るために
形を変えてゆく
ボクのことを包み込む太陽は
もう
どこにもない
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