Sweet
Million Candies とうとうこの日がやってきた。ここまでくるのに色々と紆余曲折あったが、オレたちはついにここまで来た。そう思うと何か熱いものが胸のうちからこみ上げてくるようだ。数年かけて見直した人体錬成の理論は完璧だ。母さんの時とは比べ物にならないくらい細かく、それでいてたった一つの目的を損なわないように大筋も通してある。肉体を錬成し、そこにアルの魂を定着させるのだから修正箇所も多々あった。一番気を使ったのは、アルの魂を少しでも損なわないようにすることだ。絶対にあってはならないことだが、万が一肉体の練成が上手くいかなかった時のための応急処置策も十分に練った。アルの魂の定着のさせ方は、もうオレのカラダが知っている。鎧の時も何度も経験済みだ。ただ、つなげる相手が作り出す肉体ということで、多少のコツが必要なことは研究の成果で分かっている。それを応用すれば、最悪アルの魂だけでも救うことができる。科学者は失敗を恐れてはならないが、それでも考えうる限りの影響を考えて、ウラのウラまで手を回しておくことを忘れてはならない。よし、完璧だ。 とうとうこの日がやってきた。今まで色々大変だったけど、ボクたちはついにここまで来た。そう思うと、感覚もないのに、なんだか目の奥がじんとしてくるような気がする。何年もかけて積み上げてきた理論は全て根拠のあるものだ。母さんの時よりも十分な検討もできてる。ボクたちの目的はお互いの肉体を取り戻すこと。ボクはもうずっと、この瞬間を待ち望んでいた。兄さんが寝てる夜の間もずっと。兄さんの失った手足を取り戻すことを、ずっと思ってきた。そしてボクは、自分のことも考えていた。もう一度肉体を取り戻して、そうして兄さんに触れてみたい。ただそれだけの願いだけど、それを理論に仕上げるのは別問題だったから。ボクの心は兄さんと二人で元に戻れるようにとどんどんボクを急かすのに、頭の中では二人分の肉体のことを冷静に考えなければならなかったから。兄さんは、ボクを元に戻すことばかり考えていたみたいに見える。時々ぽろっとこぼした言葉は、どう聞いてもボクさえ戻ればいいと言っているようにしか聞こえなかった。でも、ボクはそれでは嫌だった。兄さんも、一緒に元に戻るんだ、そう思い続けてきた。だから分かる。今度の錬成は成功する。 「いくぞ、アル。」 「うん。」 つづく |