シーツ・

 

「わあぁぁぁぁーーー!!」
思わず叫んで、はっと目を開けてみると、そこには誰もいない天井が見えた。真っ白なシーツも、白いアルの身体も何もなかった。何て事だ!夢だったのかよ!!どうりでうまくいきすぎだと思ったんだ。しかもアル、鎧じゃなかったし。・・・うわ、やべ。真っ白ではなく、闇色に染まったシーツを持ち上げてみると、そこには案の定というかお決まりの生理現象が。後始末どうしろって言うんだ。・・・ていうか、アルは?そこまで考えて、オレはやっと現実に戻ってきた。そうだった、アルは今夜いないんだった。そして思わず特大のため息をついてしまった。
「はぁー。」
しかし、何だ、アルが一晩いないだけで、こんな・・・。オレは思いっきり項垂れた。オレ気を抜きすぎなのか?そんなにアルがいないと欲求不満丸出しになるのか?それともアルがいる時は夢ですらもアルに聞かれているかと緊張してるのか?あーもーダメだ!頭ン中ぐるぐるしすぎだ!誰か助けてくれー!
 

 そう思いつつ、頭を抱えているところに、いいタイミングというか悪いタイミングでアルが帰ってきた。上機嫌でお土産なんか持ってた。アルは、オレが起きていることに少しびっくりしながらも、にっこり笑って(笑ったようにオレには見えた)言った。
「ほら、兄さん。これ、街を見回ってたら街の人にもらったんだ。兄さん好きでしょう?これ。」
そうしてアルが差し出したのは、美味しそうな柑橘類だった。ほわっといい香がアルの鎧の手の平から匂い立ち、オレは思わず前かがみになった。おい、やめてくれ・・・今、お前の声はやばいって・・・!しかもそんなに甘えたような声出すな!ひびくから!ベッドに座り、膝を抱えてうつむいているオレの姿をいじけているのだと勘違いしたアルは、ふふっと小さく笑って続けた。
「兄さんに昨晩は寂しい思いさせちゃったから。これで機嫌直して、ね?」
なんか誤解を招くような言い方だしよ・・・。
「兄さん?」
さらにアルは甘い声を出してオレを呼んだ。まるで夢の中のように。お願い、やーめーてーくーれー!
「どうしたの?兄さん、具合でも悪い?どうしようーどうしようー」
頭を抱えて苦悩するオレに、アルは見るからに狼狽して、おろおろしていた。その声の甘いこと甘いこと・・・。ごめんよアル、兄ちゃんが悪かった。お前の声、ダメなんだよオレ・・・。その声、ホント弱いんだよ・・・。勘弁してくれー!
「兄さん?にいさーーん!」
そうしてオレは、ずっとそういい続けるアルフォンスに背を向け、寝転がって耳を塞いだ。これ以上は、もうどうしようもなくて、結局オレは朝までどうにもできない苦しさにのた打ち回る事しかできなかった。
 

 そして問題のその噂はと言うと、子供の夜遊びをいさめるために、この街の大人たちが流した話だと言う事が分かった。一件落着のはずだったが、オレはどこか釈然としない思いを抱えて、中央に戻る事となったのだった。

おわり