シーツ・

 

「ったくよー。」
大人たちの態度には腹がたってしょうがないし、アルもいないし、まだそれほど眠くはない。実につまらない夜だった。しかしアルは毎日オレが寝てしまうとこんなつまらない時間をずっと過ごしているのかと思うと、少し機会鎧の付け根が痛んだ。いつものように。
「ちぇ…」
少しだけ舌打ちをしたオレは、ごろんとベッドの上に寝転がった。小さな窓から部屋に入ってくる風は生暖かく、ぞわりとする感覚を残してオレの肌を撫でていた。宿の天井を見上げると、月の光でぼんやり見える古い染みと埃以外には何も見えなかった。寝転がっていると、急に眠気が襲ってきた。旅の疲れが少し出たんだろうか。アルは今、何をしてるんだろうか。そんな事を思いつつ、オレの意識は急速に月夜に呑まれていった。

   

 ふと気がつくと、オレは真っ白なシーツの海の中にいた。そして、視線を下ろしていくと、そこには真っ白な肌を惜しげもなくオレの前にさらすアルフォンスがいた。な、な、なんだこりゃあー!思わず赤面して叫びそうになるが、それよりももっと、アルの方が真っ赤になっていた。
「に、兄さん・・・」
そう呟いたアルは、手元のシーツを手繰り寄せ、一糸纏わぬその身を隠そうと必死になった。
「いやだ、兄さん、恥ずかしい・・・」
その声は甘く、とろけるようで、その視線はオレだけに向けられていて、オレはもう頭の中がパニック状態なのにも関わらず、アルのくるまっているシーツを冷静にアルからはがし、そしてその下に横たわる滑らかな肢体を空気にさらけ出した。
「いいから、アル・・・」
そのオレの声は、少し低めで、そして少しだけ掠れていて欲情にまみれていたけれど、それでもどこか心地よく響いた。
「兄さん・・・」
少しだけ、アルの視線がやわらかくなり、そして上目遣いにオレを見た。その目は潤んでいて、いかにも扇情的だった。うわ、やべ、オレなんかかっこよくね?アルにこんな表情させてよ!くぅー!やっぱオレ様最高!そう思った瞬間だった、アルがその白い手をオレに伸ばして、そしてオレの唇に触れた。

続く。