シーツ・1

 

「じゃあ兄さん、行ってくるね。」
「おう、あとは任せて行ってこい。」
「うーん、ちゃんと歯みがくんだよ。」
「へいへい…って、お前それが兄貴に対する言葉かよ!」
「あー、それからお腹冷やさないようにね。」
「って聞いてないし!」
「じゃ、そう言うことで。」
「こんのヤロォ…」
「じゃあね、なるべく早く帰ってくるから。いい子にしててね、兄さん。」
「…だぁぁぁーーー!!ばっかやろー!さっさと行けー!」
そう言ってアルは去っていった。無駄に可愛らしく、一つだけ鎧の投げキッスをして。
 

その夜は、アルが一人で出かけていた。今オレたちがいるこの街は、とある噂が最近ささやかれている場所だった。その街は夜に子供が攫われ、不思議な力で不気味な姿に変えられるというのだ。その調査を大佐に任されたオレたちは、少し錬金術クサイにおいがするこの事件を探りに、この街に来たのだった。ここまで来るのに案外手間取り、到着した頃にはすっかり夜になっていたのだった。夜だけどまあいい、さあ調査本番と気合を入れたオレたちだったのだが…

「こら!何を子供が夜中にほっつきあるいとるんだね!」
「ん?」
「え?あー、兄さん!」
「ほらほら、君はまだ小さいんだから、ちゃんとお家にいないと攫われるんだぞ。」
「ぬぁんだとぅー!」
そう言われて振り向いたオレは、バカにでかい図体の警官に首根っこを掴まれてしまっていた。
「誰が豆粒ドチビかーーー!!!」
「に…兄さん〜」

足は宙に浮いている。いくら暴れようとも放してくれそうになかった。そしてそのままオレはその警官に掴まれたまま、宙をブラブラ揺れながら今夜の宿までたどり着いたのだった。アルはその後ろからちょこまかとでかい鎧姿で付いてきていた。アルの肩が時々震えているのは、決して笑っているのではないとオレは自分に言い聞かせていた。そして、宿でも散々な目にあった。オレは宿のオヤジにも完璧に子供扱いされ(しかもそのオヤジも無駄にでかかった)、部屋に閉じ込められてしまい、アルしか夜中に出歩けないと言い渡され、そして今に至ったのだった。

  続く。